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キオクシア株、今からでも買いか?急騰の理由と今後の上値余地を徹底分析=桜田順司

第二に、長期契約による収益の平準化です。サムスンやSKハイニックスは3〜5年の長期契約への転換を進めており、これは「サイクルの呪い」を打破する試みと位置づけられます。HBMの需要、ウェハー供給の逼迫、そして長期契約が、今後数四半期にわたって利益が堅調に推移するという見通しを裏付けており、数年にわたるAIインフラ構築の中で高い資本利益率が維持されるのであれば、純資産に対するプレミアムは妥当だと考えられます。キオクシア自身も、2026年の生産分がすでに完売しており、価格交渉力が極めて強い状態にあります。利益の振れ幅が小さくなれば、市場は当然より高いPERを許容します。

第三に、ピア(同業他社)のリレーティングという「外圧」です。同じメモリー陣営のバリュエーションが切り上がれば、キオクシアも連動して見直されやすくなります。SKハイニックスは米国でのADR上場を2026年内に計画しており、上場後はバリュエーションが米国同業他社と同水準になると予想されています。野村はAIメモリー需要の幾何級数的な伸びを理由に、サムスンとSKハイニックスの目標株価を引き上げました。実際、サンディスクは年初来で411%急騰しながら、ウォール街の予想PERは9倍にとどまっており、「上昇しながら割安になる」という現象が起きています。メモリーセクター全体のマルチプル見直しが進めば、キオクシアにもその恩恵が及ぶ余地があります。

<「二段ロケット」のインパクト試算>

強気シナリオの妙味は、この2つの要因が掛け算で効く点にあります。仮にEPSが市場予想どおり拡大し、かつメモリー株のPERが現在の20倍前後から、収益の安定性が評価されてロジック半導体寄りの水準へ一段切り上がるとすれば、株価の上昇余地はEPS成長率を大きく上回ります。

これは単なる業績相場ではなく、「キオクシアは市況株ではなく、AIインフラの構造的成長株である」という市場認識の転換を前提とした見立てです。市場ではキオクシアの純利益が約5倍規模(約2.5兆円)に拡大する予想も出ており、これによりPERの再評価が進み、株価のさらなる上昇余地が意識されています。

<留意すべきリスク|ディスカウントには相応の理由がある>

ただし、この強気シナリオには明確な反証リスクが存在することも併記しておく必要があります。

最大の論点は、「メモリー株の低PERは市場の非効率ではなく、合理的な織り込みかもしれない」という点です。受注生産モデルや長期契約への移行が始まったとはいえ、その実効性が一巡のサイクルを経て証明されるまで、市場が安易にディスカウントを解消するとは限りません。HBMの需要が想定どおり伸びなければ、市場は「やはりメモリーは市況株だった」と評価を元に戻す可能性があります。

加えて、エヌビディアのサプライチェーンにおけるシェアが浸食されればバリュエーションに圧力がかかるという競争環境の変化や、AIサーバー需要の鈍化、中東情勢悪化に伴うコスト増、為替変動といったリスクも残ります。現在の株価は「AIへの過剰期待」であり、実力値まで30〜40%の調整が入ると予測する見方もあります。

プロが注視するリスク|上昇を止める要因とは

実際にキオクシア株への投資を検討する場合、上昇要因と同じくらい、上昇を止めうるリスク要因を把握しておくことが重要です。

<半導体サイクルの循環性とメモリ専業リスク>

最も本質的なリスクは、前述の半導体サイクルの循環性です。

NANDを含む半導体メモリは、需要拡大→価格上昇→各社の増産→供給過剰→価格下落、というサイクルを繰り返してきた歴史があります。現在は需要拡大と価格上昇の局面にありますが、このサイクルそのものがなくなったわけではありません。

そしてキオクシアは事業がメモリの単一セグメントで構成された「専業メーカー」です。これは価格上昇局面では恩恵を最大限享受できる強みである一方、市況が悪化した際にはそれを吸収する他事業を持たない、という弱みにもなります。総合電機メーカーのように事業分散による緩衝材を持たないため、業績と株価が市況の振れに対して敏感に反応しやすい構造である点は、常に意識しておくべきリスクです。なお、会社側も決算説明会で「半導体メモリはシクリカルな産業であり、地政学リスクや為替変動、米中貿易摩擦の影響にも注意が必要」と明確に注記しています。

Next: 見逃せない投資リスクも……キオクシアは買い?売り?

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