fbpx

株価下落「JR東日本」は大丈夫か?長期投資家が注目すべきリスクと好材料、直近の下げをどう判断すべきか=栫井駿介

JR東日本<9020>を分析します。先日、年初来安値を更新するなど株価が下がっています。JR東日本の株価が下がっている理由と抱えるリスク、そして成長性について考えてみたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

なぜ下がった?

東日本旅客鉄道<9020> 日足(SBI証券提供)

東日本旅客鉄道<9020> 日足(SBI証券提供)

JR東日本の株価ですが、2~4月は順調に上がってきましたが、5月くらいから失速し、直近では大きく下がって年初来安値を更新してしまいました。

株価が下がる時というのは一般的には業績が悪いことが多いのですが、JR東日本に関しては必ずしも業績が悪い状況ではありません。

2024年3月期は前年と比較すると売上高では13.5%増、利益は3.5倍くらいに伸びています。

コロナ禍では、人々が自宅に籠ったり出勤しなかったりして業績が厳しかったことは確かです。
しかし、今では当たり前に出かけるようになって業績が回復してきました。

決算上は特に悪いところは見当たりません。

株価に与える影響が大きいのは今期の予想の方ですが、そちらも増収増益となっていて、問題があるようには見えません。

増収増益の予想の中でなぜ株価が下がったのでしょうか。

<コロナ前を超えず>

1つ言うなれば、“物足りなかった”という部分はあるかと思います。

コロナ前の2019年3月期には実は過去最高の売上・利益を記録していて、(経済面で考えると)コロナが終了した今期の予想が注目されていましたが、コロナ前の数字には達しておらず、このあたりが物足りなさを感じさせているのではないかと思います。

コロナ前の水準まで戻ることを期待されていましたが、そこまでは戻らないということがはっきりしたというところです。

決算発表が4月末ごろにあり、その直後には株価は下がりませんでしたが、その後はズルズルと下がっていきました。

<金利上昇の懸念>

しかし、それだけでは6月に入ってからの大きな下落の説明にはなりません。

直近の下落に関しては、6月14日の日銀の政策決定会合で金利が引き上げられる可能性があり、JR東日本もそれなりに借金を抱えている会社なので利払いの負担が大きくなることが考えられ、決定会合の前にポジションを落としておこうと考える投資家もいたのではないかと思います。

年初来安値を更新している銘柄を見てみると、NTTやJR東海、大和ハウス、ANAなどとなっていて、借金が多い会社の株価が似た動きとなっているようです。

ただし、金利の上昇がファンダメンタルズに影響を与えるは少ないと考えています。

JR東日本は確かに多く借金をしていますし、コロナ禍で借り入れも増やしましたが、その大部分は長期の固定金利の債券となっていて、しかもコロナ禍の安い金利で借りられているので、目先の日銀の金利が上がったとしても利払い自体はほとんど増えないと思います。

JR東日本の有利子負債は、コロナ前は約3.1兆円だった借金が今は約4.8兆円に増えていますが、利息は1.93%から1.47%に下がっていて、しかも平均年限が12.65年となっていて、平均的に見れば12年はこのくらいの金利という手堅い財務状況です。

<リスク0ではない>

JR東日本が売られている理由としては、金利の上昇や業績が悪いということではなく、目先の業績がこれ以上大きく上がりそうにないという点に対する投資家の「飽き」のような部分であり、あくまでサイクルの一部なのではないかと思います。

国内の経済も悪くはないですが案外奮わないというところなので、このあたりのマクロ環境もネガティブな影響を与えているかもしれません。

もっとも、JR東日本にリスクが無くなったわけではなく、借金があることは確かですし、金利が上がると多少は影響があります。

また、台風や地震など自然災害のリスクもあります。

Next: 「運輸」だけじゃない?JR東日本は今後も成長するか

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー