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日本円を貯め続ける「ゆでガエル」の末路〜私が2012年に全資産をドルへ移した理由=鈴木傾城

円を持ち続けることが「安全」だという感覚は、いまも多くの日本人に根強い。

銀行口座に円が積み上がっていれば、リスクがないと感じる。しかし物価が上がっていく中では円の価値は失っていく。100円で買えたものは150円になり、1,000円で買えたものは1,500円になっていたりするのだ。

円は、本当に安全なのか?日本円を銀行口座に預けていれば額は変わらない。だからリスクがないと感じる人は多い。これが錯覚なのだ。額が減らないことと、価値が減らないことはまったく別の話である。

円という通貨そのものが、静かに、確実に価値を失い続けている。

インフレがその最たる証拠だ。2022年以降、日本の消費者物価指数は急上昇し、2023年には40年ぶりの水準となる3%台の上昇を記録した。2024年以降もコアインフレは日銀の目標である2%を上回る水準で推移している。

食料品、光熱費、日用品……。生活のあらゆる場面で値上がりが続いている。同じ金額で買えるものが減っている。預金金利がほぼゼロのまま物価だけが上がれば、円の実質的な購買力は毎年減っていく。

これを「安全資産」と呼ぶのは、もはや無理がある。

円安もすでに不可逆に近い動きを見せている。2012年に1ドル75円台だった為替レートは、2024年には一時160円台を突破した。12年間で円の対ドル価値はほぼ半減した計算になる。

米ドル/円 月足(SBI証券提供)

米ドル/円 月足(SBI証券提供)

輸入物価の上昇を通じて国内の物価をさらに押し上げ、海外資産を持たない人間の実質的な購買力を直撃している。円安が進んだ背景には、日米の金利差という要因もあるが、より根本的には日本経済の成長力に対する市場の評価がかかわっている。

成長しない国の通貨は売られる。これは感情ではなく、資本の論理だ。

日本という国の凋落を直視する

しかし、それでもほとんどの人は円からキャピタルフライトしようとは思わないだろう。株式であれば価格が毎日動き、損益がリアルタイムで可視化される。だから怖いと感じる。一方で円預金は数字が動かないため、リスクが視界に入らない。

だが、実際には「インフレ」と「円安」という力が同時にかかわり、円の実質価値を削り続けている。持っている貯金の数字は変わっていなくても、損失はすでに発生している。

将来はもっとひどくなるかもしれない。少子高齢化も改善されないからだ。

人口動態は、経済の未来をほぼ決定する。これは冷徹な事実だ。人口が増えれば経済は拡大するが、減れば縮小する。日本はすでに後者の道を歩んでいる。日本の総人口は1億2,304万人となり、5年間で約309万人減少して過去最大の減少幅を記録したと報道されたばかりだ。

労働力は増えているのだが、これは高齢者や女性が「食べていけなくなったから」働き始めたことに起因する。だが、高齢者はずっと働けるわけではない。遅かれ早かれ限界がくる労働力増加なのだ。

現在の労働力増加は、いわば「先食い」に近い。下落は不可逆だ。そのときはGDPの成長余力が失われ、消費者の数が減り、納税者の数が減り、社会保障を支える現役世代の数が減るだろう。

一方で高齢者の数はしばらく増え続け、年金・医療・介護にかかるコストは膨らみ続ける。2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、社会保障費の急増が避けられない局面に入った。

産業競争力の低下も深刻だ。かつて世界を席巻した日本の電機メーカーは、韓国・台湾・中国勢に市場を奪われた。自動車産業はEVシフトへの対応で後れを取り、スマートフォン市場では日本メーカーの存在感はほぼ消えた。

Next: まさに「ゆでガエル」状態。貯金は長期的な資産破壊と化す

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