■True Data<4416>の中期成長戦略
● 新中期経営計画
同社は2026年2月に新中期経営計画を発表した。自社の定義を、従来の「データ分析会社」から「意思決定支援会社」に発展させ、「リテールデータ×AIインサイト」に基づく意思決定基盤(=経営のOS)を顧客企業に提供することで消費財・小売業全体の価値創造をステークホルダーとともに加速することを目指す。
(1) 前中期経営計画の成果と今後の方針
前中期経営計画(2024年3月期〜2026年3月期)では、「手札の拡張」として、楽天グループ<4755>や(株)Hakuhodo DY ONE、SMN<6185>、(株)MBKデジタルとのデジタル広告連携が進み、「販促AI」や「新規出店予測AI」等のAIソリューションの開発・提供も進んだ。一方、従来の「イーグルアイ」等のマーケティングSaaSプロダクトを中心とした事業ポートフォリオから、多くの大手顧客企業案件を対応する中で顧客の個別ニーズへの対応により「カスタマイズ性」が高まり、成長の「型」が多角化するという課題に直面した。こうした課題に対応しつつ、さらなる企業価値向上のため、新中期経営計画(2027年3月期〜2029年3月期)では、優先順位ある「事業戦略推進」と対応した「組織構造改革」を同時に進める「発展的な構造転換期」とする方針を掲げた。
(2) 新中期経営計画の概要
新中期経営計画では「パートナー連携×パターン化」を徹底した事業戦略を志向する。パターンとはサービス提供の「型」のことで、同様な課題を抱える業界内の他企業に、いわば業界特化型サービスとして、大手顧客の課題解決の中で得られた知見や技術を汎用化したパッケージソリューションを戦略パートナーとの協業により拡販する。この事業戦略推進に向け、役割と成果を可視化するため、「パターンを作る組織」と「パターンを横展開する組織」からなる社内カンパニー制を敷く。前者では大手顧客のニーズ対応開発を促進して収益を確保しながらパッケージソリューションを開発する。そこから得た知見や技術を汎用化し、AIソリューションを開発する。後者では、あらゆる消費財を扱う卸商社との協業パートナー網を活用し、中堅・中小企業にも顧客層を広げ、基幹プロダクトの量的拡大を目指す。さらに企業の意思決定を支援するAIインサイトを軸に基幹プロダクトへの追加機能を実装し、アップセル・クロスセルを通じて顧客単価向上を図る。2026年3月期時点のイーグルアイ顧客企業数は180社であるが、同社は潜在市場規模を13,000社と見積もっている。取引基盤について、伊藤忠商事では10,000社の食品メーカーを、アルフレッサ ヘルスケア(株)では680社のヘルスケアメーカーを、あらたでは1,100社の化粧品・日用品等メーカーを有しており、この3社を中心にパートナー協業を深耕し、顧客規模を飛躍的に拡大させる。また、「パートナー連携×パターン化」を効果的に推進するため、社内カンパニー制への移行では執行役員から部門長クラスへの権限・責任の委譲を進めるほか、有償ストックオプション・エンゲージメントストックといった、基本給・業績賞与に次ぐ「第3の報酬」の新設による株主との利害共通化促進を検討している。
新中期経営計画では、購買起点の評価指標の標準化及びAIインサイト導出に係るコア・プロセスの実装基盤(=OS)を、内製で抱える「コア・バリュー」と位置付ける。少人数組織でスケーラビリティを最大化すべく、周辺の機能領域では外部パートナーを積極活用する戦略だ。この、内製OSと外製機能を掛け合わせたモデルを推進するにあたり、同社はデータパイプラインの標準化による開発効率の向上と、ID-POSデータを安全に流通させるための強固なデータガバナンス・セキュリティ体制の構築を両立させており、これが競合に対する強力な参入障壁(技術的優位性)となる。コア・バリュー領域では、OSである、分析設計やデータ集計等の購買起点の評価指標の標準化や、AIを活用したデータ分析から得られる実用的な情報等の意思決定を支援するAIインサイトの開発を進める。機能領域では、顧客獲得や広告運用、AIソリューションの開発・実装、システム運用等について外部パートナーを積極活用し、協創する。また、コア・バリューの補強に向けて、リテールメディア領域のOSポジションの確立に注力する。ECプラットフォーム、店舗、アプリ、広告媒体、顧客企業の自社EC等、業態やチャネルを問わず活用できる横断的な評価指標を実装する。なお、同社はリテールメディア領域のポテンシャルとして、リテールメディア広告市場が2028年には2025年比で約1.9倍の1兆1千億円規模に拡大し、そのうち同社ターゲットのリテールメディアネットワーク(広告配信)市場は2028年には2025年比で約1.5倍の2,760億円規模に成長すると予想としている。同社がサービス提供可能な市場規模(SAM)については、2028年には2025年比約1.9倍の約360億円に成長すると試算しており、同社の売上高規模を踏まえると拡大余地は非常に大きいと言える。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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