■会社概要
2. 事業内容
(2) 「行動変容サービス」(Beacon Bank AD)
「行動変容サービス」は、まず生活者行動ビッグデータのAI解析により小売事業者や消費財メーカーに対し、来店可能性が高い消費者群と商圏を発見する。そして、消費者群へSNS(Instagram、X、LINE、Facebookなど)や動画共有サイト・コネクティッドTV等で情報発信することにより行動変容を促す広告配信サービスを提供している。最大の特徴は、広告配信の効果を測定することで、次の意思決定の質を向上し顧客企業のROI(費用対効果)を高めることができる点だ。店頭に設置しているビーコン等を活用することによって、来店数、来棚数、購買数などの単位で効果を計測できる。顧客はその測定結果に基づきPDCAサイクルを回すことによって、より効果の高い広告配信施策を打つことが可能になる。主な用途としては、流通店舗・イベントのデジタル集客、メーカーなどの販促プロモーション、オンラインイベント・ECへの集客である。unerry<5034>が提供する「分析・可視化サービス」でターゲットを抽出・把握したうえで、「行動変容サービス」によって効果的なプロモーションを行うといった利用方法が主である。同サービスの収益は、デジタルチラシの配信として毎月受領する配信料のほか、新規出店や特売セールなどのイベント、商品のシーズンインに応じて情報配信需要が高まるスポット収入から構成される。
(3) 「One to Oneサービス」(Beacon Bank 1 to 1)
「One to Oneサービス」は、小売事業者や商業施設運営事業者等に向けてオリジナルアプリの開発や統合マーケティング基盤(CDP:カスタマー・データ・プラットフォーム)を構築・提供し、消費者にパーソナル体験を届けるシステムソリューション全般を支援している。「分析・可視化サービス」でターゲットや課題を抽出・把握し、「行動変容サービス」で効果的なプロモーション活動を実践したあと、顧客エンゲージメントをさらに高めて維持したい場合には「One to Oneサービス」が導入される。同社の保有する生活者行動ビッグデータをはじめとした各種データソースに顧客が保有するデータ等を集約し、リアル行動、リアル購買、ネット行動、ネット購買のデータを統合・分析し、AIで意味付けする。それにより消費者を深く理解し、個々のターゲットが必要とする情報や興味関心のある情報を最適なタイミング、最適な媒体(インターネット上の広告表示、アプリを通じたプッシュ配信、デジタルサイネージなど)を通じて提供することが可能になる。同サービスの収益は、システム・アプリ等の構築対価と構築後の運用・保守への対価からなっている(月額数10万~1,500万円)。
同社サービスの導入企業の業種は、食品、ドラッグストア、ホームセンター、外食から家電メーカー、自動車、金融、不動産、商社、広告、国・自治体、公共交通、メディアなど多岐にわたる。各業界のトップクラスの企業で導入実績がある点も特徴的だ。食品においては三菱食品やカルビー<2229>、自動車ではビー・エム・ダブリュー(株)、金融においては東京海上日動火災保険(株)や宮崎銀行<8393>、ほかにも三菱地所<8802>、三菱商事<8058>、電通グループ<4324>、(株)NTTデータグループ、(株)TBSテレビ、環境省などの企業・省庁での導入実績を有する。業界トップクラスの企業が導入する理由は、同社のサービスがマーケティング施策の高度化や顧客企業の業績向上に貢献するためであると弊社では考えている。実際、カルビーではテレビCM・TVer広告接触者の新規顧客における来店者購買率が非接触者比で約5倍となったほか、ビー・エム・ダブリューではテレビCM、DOOH、デジタル広告を横断した来店効果計測を実施している。ほかにも、三菱地所が利用者の平均購買頻度を10%上昇させることに成功したほか、東京海上日動火災保険はeゴルファー保険広告反応率が1.4倍、ファミリーレストランを展開するジョイフル<9942>は顧客の来店頻度が3.5倍に増えた。
3. 同社の特徴と強み
同社の強みは、ビッグデータの量・質、高度なAI分析、事業提携による事業拡大とクロスセル、リカーリングによる安定した収益基盤に大別できる。
(1) 屋外・屋内の人流がわかる生活者行動ビッグデータ
同社は220万ヶ所以上にあるビーコン、150以上のアプリが登録された「Beacon Bank」を運営し(グループアプリ数は300以上)、屋外・屋内双方のデータを蓄積・分析している。年間数兆件に上る膨大なログを蓄積し、網羅性のあるデータを保有することにより、詳細な分析の下、ターゲットに関する精緻な理解と確度の高い推定を行うことが可能である。「Beacon Bank」の最大の特徴は同社が日本・米国・中国で特許を取得した技術※1に基づくものであり、模倣困難性が高いことである。「Beacon Bank」にはネットワーク効果※2も働いており、位置情報を取得する150以上のアプリが既に登録されている点は競争優位を持続させる大きな要因になっている。また、人流データの蓄積にあたり、プライバシーに配慮している点も特徴だ。欧州のGDPR(一般データ保護規則)に代表されるようにグローバルレベルでプライバシーへの関心が高まっており、同社事業にとって追い風と言える。
※1 スマートフォンアプリがキャッチできるビーコンの数を限定しないこと。
※2 ビーコンとアプリの登録数がプラスの相互作用を発揮すること。登録しているビーコンが多ければより多くのアプリが登録されるようになり、その逆も然りと言える。
(2) AI×豊富なノウハウによるカスタマーサクセス力
生活者行動データを意味付ける独自開発のAI群とデータを活用したデジタルマーケティングの豊富なノウハウにより、顧客のROIと売上高を向上させるカスタマーサクセス力を実現している。蓄積したデータをAIで分析する際には、160以上の場所カテゴリの訪問傾向をプロファイリングする「プロファイリングAI(行動DNA)」、徒歩・自動車・電車などの移動手段や日常・非日常を推定する「移動手段・状況推定AI」を活用する。さらに、ビルインや地下店舗を含む日本全国254万POI(地図上の特定のポイントのこと)の来店・来店計測を行う「POI来訪計測AI(+混雑推定)」、次にどの店舗を訪問する可能性があるかを推定してレコメンドする「リアルレコメンドAI」、来店可能性の高い人を自動的にターゲティングする「来店可能性予測AI」を運用している。夜間の滞在場所を居住地、昼間を勤務地とし、出社率推移なども特定できる「居住地・勤務地AI」により、データを顧客にとって価値ある情報に変換している。また、社内でデジタルマーケティングに関する最適な事例を共有する仕組みの構築も促進している。小売・メーカーでDXやデジタルマーケティングの経験を持つメンバーを採用することによって顧客が直面する課題を的確に把握し、AI分析により顧客の業績向上に貢献している。スマートシティ事業向けには、地方自治体や官公庁、建築業者への営業経験を持つメンバーを採用し、顧客に寄り添った提案を実現している。そのほか、業界ごとの成功事例や好評なサービスの提案を型化し、社員の提案力・問題解決力を高める取り組みも実践している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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