■業績動向
1. 2026年6月期業績概要
グリッド<5582>の2026年6月期業績は、売上高3,119百万円(前期比51.2%増)、営業利益459百万円(同7.3%増)、経常利益466百万円(同8.9%増)、当期純利益345百万円(同15.7%増)となり、営業利益ベースで6期連続増収増益を達成した。売上高、各段階利益とも期初計画を上回って着地した。期初計画は売上高3,100百万円、営業利益450百万円、経常利益440百万円、当期純利益280百万円で、計画比はそれぞれ0.6%増、2.1%増、6.0%増、23.2%増である。
大幅増収の主因は、既存顧客との取引拡大や新領域での案件獲得によりAI事業が堅調に推移したことに加え、蓄電所開発の本格化を背景にインフラアセット事業が急成長したためである。
売上総利益は1,875百万円(前期比23.8%増)となった。一方、インフラアセット事業の拡大に伴う外注費の増加などにより、売上総利益率は60.1%と前期から13.3ポイント低下した。販管費は、人員増強や本社移転の影響で1,415百万円(同30.2%増)へ増加したが、増収効果により販管費率は7.3ポイント低下した。
営業利益率は前期の20.8%から14.7%へ低下したが、これは事業構成の変化と成長投資による影響が大きい。一方で、増収効果や生産性向上によって費用増加の一部を吸収し、営業利益は増益を確保した。利益率は低下したものの、将来の成長に向けた事業基盤の強化が進んだ1年と評価できる。
2. 事業セグメント別の業績動向
(1)AI事業
AI事業の売上高は2,362百万円(前期比17.9%増)、セグメント利益は848百万円(同12.5%増)となり、2ケタ増収増益を達成した。ドメイン別では、電力が1,407百万円(同22.0%増)、都市・交通が402百万円(同86.6%増)と大きく伸長した。一方、製造・運輸は、配船計画開発案件が完了して保守フェーズへ移行したため、477百万円(同15.4%減)となった。また、ストック型売上比率は27.1%となり、前期から1.6ポイント上昇した。開発案件の積み上げに加え、導入後の運用・サポート収益が拡大し、収益構造の安定性も高まっている。
顧客基盤では、取引先数が前期と同数の39社となった。新規顧客数は10社と前期を下回ったものの、3期連続で10社以上を維持した。顧客リピート率は75%、売上リピート率は89%となり、既存顧客との取引拡大が継続している。さらに、追加開発や適用領域の拡大により、顧客平均売上は60.5百万円と前期から9.2百万円増加した。新規顧客の獲得に加え、アップセルやクロスセルが増収に寄与した。
セグメント利益率は35.9%と前期から1.7ポイント低下した。事業拡大を見据えたプリセールス人材の増員など先行投資が主因である。一方、生産性は改善している。AI事業エンジニア1人当たり売上高は29.0百万円から30.1百万円へ上昇したほか、AI事業従業員1人当たり売上高も24.9百万円から26.0百万円へ伸長した。人員拡大と生産性向上を両立している点は注目される。
(2)インフラアセット事業
インフラアセット事業の売上高は756百万円、セグメント利益は100百万円となった。インフラアセット事業が2025年6月期第4四半期から本格始動し、2026年6月期第4四半期には系統用蓄電所の開発工事が順調に進捗したことに加え、電力系統接続申請支援業務も寄与したことで、売上高は前期比12.7倍、セグメント利益は同2.6倍と大幅に拡大した。開発支援やコンサルティングを中心とした事業から、自社が開発主体となるデベロップ・アンド・セル型の事業モデルへ移行したことによる。
四半期ベースでは、2026年6月期第4四半期には総額1,671百万円の複数案件を受注した。この結果、期末受注残高は1,101百万円となっており、2027年6月期以降の売上に寄与する見通しである。同事業は案件進捗や売却時期によって業績変動が生じやすいものの、足元では受注案件の積み上がりが順調に進んでおり、今後の成長に向けた基盤形成が進展している。
3. 財務状況と経営指標
2026年6月期末の総資産は前期末比717百万円増の5,135百万円となった。現金及び預金と売掛金が減少した一方、契約資産が664百万円増加した。固定資産は、本社移転に伴う建物附属設備や敷金・保証金の増加により、272百万円増の527百万円となった。
負債合計は契約負債や買掛金の増加により843百万円となり、純資産は当期純利益の計上を主因に4,291百万円へ増加した。
財務指標では、自己資本比率83.5%、流動比率546.5%と高水準を維持しており、財務の健全性は引き続き高い。一方、営業利益率は14.7%と前期から低下したものの、これはインフラアセット事業の売上構成比上昇による収益構造の変化が主因である。これに対し、ROEは前期の7.9%から8.4%へ改善しており、資本効率は向上している。
4. キャッシュ・フローの状況
2026年6月末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比348百万円減少の2,849百万円となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは28百万円の支出となった。税引前当期純利益466百万円、契約負債の増加173百万円などがプラス要因となった一方、売掛金及び契約資産の増加548百万円が主なマイナス要因となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、本社移転に伴う有形固定資産の取得や敷金・保証金の差し入れなどにより、320百万円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは0百万円(表示単位未満)の収入であった。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは349百万円のマイナスとなった。AI事業における開発案件の大型化に伴う契約資産の増加と本社移転関連投資が主な要因である。もっとも、十分な手元流動性と高い自己資本比率を維持しており、財務基盤に大きな懸念は見当たらない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)
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