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だんじり“横倒し事故”動画に「消せ」と迫る“ガチ勢”が大量出現。さらなる安全対策を求める意見に「お命ポリコレ」と反論する声も

大阪府堺市で起こっただんじりの横倒し事故。その発生の瞬間を捉えた動画を巡ってSNS上でちょっとした騒動が勃発しているようだ。

事故が起こったのは16日のこと。報道によれば、だんじりを多人数で曳きながら勢いよく交差点を曲がる「やりまわし」をしていたところ、横倒しになったということで、だんじりの下敷きになった男性11人が怪我をし、そのうち6人が足の骨を折るなどの重傷だという。

多くのギャラリーが見守るなかでの出来事ということで、その瞬間を捉えた動画が事故発生から程なくしてSNS上に複数アップロードされたのだが、それらの投稿に対して「消してガチで」「テレビ局とかマスコミ来てるから消そうや」「町の人の為」などといった、投稿を削除するよう求めるリプが相当数寄せられる事態に。

そんな一種異様な状況に「なかったことにしようとしてますよね?」「「消せ消せ」とだんじりガチ勢が言ってるのが怖い」「よっぽど都合悪いのか」などといった反発の声も多くあがっているようなのだ。

地域には約40億円もの経済波及効果が

西日本で“だんじり”と呼ばれる祭礼の山車を勇壮に曳き回す「だんじり祭」。最も有名なのは、大阪府岸和田市において毎年9月に行われる「岸和田だんじり祭」だが、今回の事故があった大阪府堺市にくわえ兵庫県や奈良県など、関西の各地で行われているのだという。

従来は他の祭と同様に、地域の五穀豊穣や疫病退散を祈願して行われはじめたようだが、「やりまわし」に代表される迫力のある様が、多くのメディアで紹介されるようになったことで知名度が拡大し、近畿圏のみならず全国から観客が訪れるように。

過去に、岸和田だんじり祭における経済波及効果の推計が、地元団体により行われたことがあるのだが、それによれば岸和田市で約25億円、泉州地域全体では約40億円にまで及んだとのこと。もっともこれは10年ほど前の話で、さらにこの年は台風の影響で観客が例年より少なかったということで、近年ではさらなる大きな経済効果をもたらしているものとみられる。

ただ、その祭の勇壮さと引き換えに頻発する、今回のような横転などの事故も度々問題視されており、昨年は大阪府富田林市で祭の最中にだんじりが横転し、下敷きになった曳き手の50代男性が死亡したほか3人が怪我をする事故が。さらに2019年には、兵庫県尼崎市でだんじり2基をぶつけあう「山合わせ」の最中に、横転しただんじりの下敷きとなった30代男性が死亡する事故もあった。

いっぽうでコロナ禍においては、2020年こそ開催を自粛した岸和田だんじり祭だったが、翌2021年は世間でまだイベントの自粛ムードが漂うなか、だんじりの曳き回しを復活させたことでも話題に。

「だんじりはイベントではなく神事。2年連続の自粛はありえない」というのが、運営団体の幹部による主張だったようだが“ノーマスク&密”な祭の模様がSNS上で拡散したことで、「なぜこの時期に?」といった批判的な意見が内外から寄せられる事態に。また、一部の町内ではだんじりの自粛を決めるところも出るなど、大いに物議を醸したことも記憶に新しいところだ。

行政側は過度の規制は行わない方針も…

このように、地元民の間においてもだんじり祭に対する“温度差”は少なからず存在し、さらはひとたび痛ましい死亡事故などが起これば、より安全に配慮した祭の形に変化させるべきとの意見や、あるいはもう止めてしまえといった声が内外からあがるといった状況のなか、発生してしまった今回の件。

多少の怪我人などが出ようとも、今までの祭のスタイルは変えたくないといった、いわゆる“だんじりガチ勢”と呼ばれるような向きが、事あるごとに湧きあがる批判の声に対して、非常にナイーブになっているのも分からなくはないところ。とはいえ彼らが、起こってしまった事故に向き合おうとせず、ただただ“無かったこと”にしようとする動きに出てしまったことで、さらなる批判や失望を招いてしまったという格好だ。

SNS上では、だんじりの危険性を訴える声やより安全なスタイルに変えていくべきではといった意見が、改めてあがっているところなのだが、ただなかにはそういった見方を「お命ポリコレ」と断じ、「生命至上主義へのアンチテーゼがだんじり祭なんですよ」などと開き直る意見も一部からはあがっており、議論は平行線といったところのようだ。

ちなみに今回のだんじり事故に関しては、あの元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏も出演番組内で言及

橋下氏は自身の府知事在任時に、だんじり祭についての議論があったとし、「通常の行政、警察の介入の仕方をやってしまうと祭りが成立しなくなるんです。ですから祭りを守っていくために地元の人たちに安全は絶対に守ってねということで、一般の介入の仕方をちょっと引いたようなところもあって、だからゆえに運行責任者の皆さんにはしっかりルールを守ってもらいたいですね」と語ったとのこと。

だんじりが地元民にとって本当に大切な祭であるからこそ、それを尊重するために行政側は過度の規制は行わず、あくまで運営団体側による自主的な安全への取り組みに委ねていたということだが、とはいえ毎年のように事故が起こり、あまつさえそれを隠蔽するかような動きに出るとなれば、そんな“温情”もいつまで続くものなのか……といったところである。

Next: 「だんじりの技術のなさがこの事故になったね」

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