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大蔵省証券局と三重野日銀の大罪 平成バブル崩壊の真相(前編) – 山崎和邦 わが追憶の投機家たち

失われた20年を生み出した三重野日銀の大罪~平成バブル崩壊

平成バブル崩壊は、昭和40年不況(山一・大井証券が非常手段の日銀特融で救済された)をはるかに超える規模のものだった。日経平均株価は1989(平成元)年大納会終値の38,915円87銭から、1992(平成4)年春の2万円割れまで崩落していく。

1990(平成2)年の正月明けから始まった3ヶ月で25%の暴落と、その夏からの第2次の40%暴落、これほどの下げ相場は一生のうちに何度もない。

この大暴落の最中に(1990年8月)、日銀総裁の三重野康は第5次公定歩合の引き上げという暴挙に出た。

株式バブルは十分に冷え切り、不動産バブルも総量規制を経て商業土地価格が何分の一にもなるような後退局面で、それでも三重野日銀は引き締めの手を緩めなかった。

その十数年後のリーマンショックでは、世界中の中央銀行が大量且つ迅速に資金を供給したが、それ以上の事態でも三重野は逆に締めあげて経済を破壊した。この夏、大手銀行の株価は一斉に大暴落を始めた。

これすべてが「20年デフレへの警鐘」だった。三重野康は無教養なマスメディアにおだてられ、「バブル退治の月光仮面」「平成の鬼平」と言われて図に乗り、「自分こそ通貨の番人だ」とテレビで自慢し、そうして「失われた20年」を生みだした。

三重野は、経済の衰退が大国衰退の淵源になるという、古代ローマ、中世スペイン帝国、中国王朝、近世の大英帝国等の例に倣い、日本国を衰退に導いた。

大分県出身で日銀生えぬきの総裁にロクな奴はいない、というジンクスがある。「嵐に向かって窓を開けた」と言われた昭和恐慌の井上準之助、加虐趣味としか言えない無理を強いた一万田尚登がそれである。三重野康が日銀総裁に就任した時、我々はそのジンクスを思い出し「まさか三度目もそうだった」とならないだろうな、と半身で構えたものであるが、そのまさかは現実のものとなった。

死者を鞭打つなかれ等と見識ありげなことは言いっこなしにしよう。生きても死んでも、日銀総裁として大失敗を犯した者は永久に「歴史」という法廷の被告席に座らせられるのだ。三重野の罪、万死に値する。天、ヒト、共に許さざる大悪行であった。

そうして、バブルが異常だったのと同じくらい、バブル崩壊過程の世相もまた異常だった。次のような見解がまかり通った。

曰く、「株が暴落するのはいい気味だ」「俺は株もゴルフ会員権も持ってない。もっと下がれ下がれ」「三重野さんは欲ボケした連中に鉄槌を食わした正義の味方だ」等々。株と地価の暴落は、世間に拍手喝采をもって迎えられたのである。

その世相に便乗する気か、単なる本気か、名ある学者や評論家がヘンテコな“理論”をテレビ、新聞、経済誌で打つのが流行った。彼らも商売だから、分かっていて便乗してカネにするなら良しとするが、どうも本気だったらしい。

彼らのその後の言動を見ていても、いまだに正気に服してないから当時は本気であったと推測できる。実は本心は嫉妬から生じていたのだ。嫉妬が正義の仮面をつけて主張される、この種の「嫉妬から出た一見正義」が最も始末が悪い。

一見正義だから反対する世論が弱い。そして一見正義の道を辿って行くうちに、皆で地獄へ行ってしまうのだ。

※『ユーフォリアの中の醒めた目、株価暴落を見通した人たち 平成バブル崩壊の真相(後編)』に続く

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山崎和邦(やまざきかずくに)

山崎和邦

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

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