金貨の値上がり幅
コインは金と違って年号や状態などによって値付けが違いますが、そこまで解説をするとそれだけで1記事分くらいになってしまいます。なので、ここでは平均的な年号で、かつ平均的な状態のコインという前提で、大づかみな金額を紹介させていただきます。
<ナポレオン100フラン金貨>
・20年前の価格:約40,000円
・現在:300,000円前後
・20年前比:約7.5倍
確かにメイプルリーフ金貨に比べると「20年前比」は約6.5倍から約7.5倍に上がっていますが、その差はさほど大きくはありません。
これは「ナポレオン100フラン」が、今でも地金に近いコインとしてみられており、逆に言えば希少性がほとんど認められていないことを示しています。
(※ただし上記でも申しましたように、これはあくまで一般的な年号でかつ並程度の状態の100フランです。たとえばグレードがMS64以上の高状態のコインや1865年や1868年銘などは、1枚100万円を超えてきますので、その点はお断りしておきます。)
さて、次は皆さんお好きな「雲上の女神」、オーストリアで1908年に発行された「100コロナ金貨」です。
この金貨は今でこそ100万円を超える値が付きますが、僕がこの事務所を作ったころは、世界でもっとも安く手に入る金貨でした。
<オーストリア1908年フランツ・ヨーゼフ100コロナ金貨>
・20年前の価格:約40,000円
・現在:800,000円前後
・20年前比:約20倍
最後にもう1枚、イギリスで1935年に発行された「ジョージ6世の5ポンド金貨」です。
この金貨も上記2銘柄と同様、つい最近まで地金型金貨とみられていたものです。
<イギリス1937年、ジョージ6世5ポンド金貨>
・20年前の価格:約48,000円(地金価格は38,000円なので希少価値は10,000円です)
・現在:800,000円前後
・20年前比:約17倍
上記3枚に共通するのは、この間の地金価格の上昇率である約6.5倍を上回って値を上げている点です。
つまりこの20年間、押しなべて、金貨は金価格の上昇率を上回ってきたといえるでしょう。それはなぜでしょうか?
なぜ金貨は金より値上がりした?
アンティーク・コインの価格構造をみますと、「地金価格 + 希少価値」に分解することができます。
つまり、すべてのコインは、まず金や銀といった金属としての価値がベースにあり、それに希少価値が加わって相場ができあがっているといえるでしょう。
では、さきほどの「ジョージ6世の5ポンド金貨」を例にとりますと、どのように分解できるのでしょうか。
前述の通り「金貨の価格=地金価格 + 希少価値」です。
まず、地金価格はどうでしょう。このコインの重量は39.94グラム、金品位91.7%ですから、「地金としての価格は約25.3万円」と計算できます(※約6,900円 × 39.94グラム × 91.7 ≒ 252,700円)。
では、もう1つの要素である希少価値はどう計算できるでしょうか。地金価値が25.3万円ならば、希少価値は54.7万円です(※希少価値=80万円 – 25.3万円 = 54.7万円)。
以上を踏まえ、あらためて直近20年の「ジョージ6世の5ポンド金貨」の価格変動を分解しますと、以下のように整理できます。
地金価格の上昇(メイプルリーフ事例より)
・35,000円 → 227,000円(約6.5倍)
希少価値の上昇
・10,000円 → 547,000円(54.7倍)
確かに地金価格も6.5倍ほどに値上がりしてしますが、希少価値の上昇のほうが圧倒的に大きいことがわかります。
つまり、過去20年間の値動きを見る限り、その値上がりの大半は希少価値の上昇で説明することができるといえるでしょう。
金と金貨、どっちが儲かりますか?
そこで再び冒頭のご質問、「金と金貨、どっちが儲かりますか」です。
もちろん銘柄や状態などによって程度の差はありますが、少なくとも過去20年をみる限り、金そのものの値上がりよりも、金貨が持つ希少価値の上昇のほうがよほど大きかったことがわかります。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2020年7月17日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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