日銀が長期金利の変動幅を最大1%まで容認するというニュースが入ってきました。今後の株式市場に大きな影響を及ぼすものと思われます。景気後退は起こるのでしょうか。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
金利の「これまで」と「これから」
これまでは金融緩和策として金利を低く抑えて、住宅ローンや融資を受けやすくし、経済を潤そうとしてきました。
元々は長期国債金利は0.25%までだったものが昨年秋ごろに0.5%まで引き上げ、そして今回上限を1%まで引き上げるということです。
日本の金利が上がると何が起こるかというと、1つは円高です。
今はドルの金利が高くて円の金利が低いので、ドルで運用した方がよいということでドルが買われて円が売られ、「円安」となっていました。
円の金利が上がるということになると、逆の動きが起こり、円高に傾くことになります。
日本企業は輸出や製造業が多いので円安で利益を出しやすく、それによってこれまでは利益が嵩上げされて日経平均も大きく上がってきましたが、円高になると業績が悪化する可能性があります。
さらに言うと、外国人投資家から見ると円安で日本株が安く買えていたものが円高になるということで今のうちに利益確定しようという動きが出ると想定されます。
したがって、株価に関してはマイナスの側面が大きいということになります。
また、実態経済に対しては貸出金利の上昇が起きます。
そうなると住宅ローンを組んで家を買ったり融資を受けて事業を行うことに消極的になり、景気が冷え込む恐れがあります。
このようにマイナス面がある中でなぜ金利の上昇を容認したかというと、イールドカーブ・コントロールに問題があったからです。
金利0.5%に張り付かせるために日銀は0.5%のところで買いオペを行い、国債の価格を上げて金利を抑え込んできました。
しかし、市場金利としては0.5%に向かっているので次から次へと買わなければならなくなり、国債の半分を日銀が持っているという不健全な状態となってしまいました。
今は景気が悪くないので、今のうちに金利を上げておいて景気が悪くなった時に引き下げてカンフル剤とする余地を残すという考え方もあります。
他の国の中央銀行とはまだ差がありますが、日銀も少し利上げに舵を切ったという見方もできます。
しかし、日本はなお金融緩和政策を続けていますし、短期金利に関しては‐0.1%とマイナス金利を維持しています。
今後、景気が良くなったりインフレが行き過ぎるようなことがあると利上げの可能性も残ります。
インフレが少しは収まったもののなお強いということで、FRBとECB、いずれも0.25%の利上げを行いました。
一方で景気もそこまで悪くないということで強気の姿勢が見えます。
金利が上がることは株式市場にとってはマイナス面が大きいのですが、それ以上に実体経済が強いと見られています。