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FXにおいて自動売買を活用するなら、過去相場での検証=バックテストと、その分析は欠かせない工程。しかしながら、MT4が出力するバックテストレポートは視認性が悪く、理解しづらいといわれています。
そのため、多くのトレーダーは外部ツールに頼るが、代表的な「QuantAnalyzer」は英語仕様で、初心者にはややハードルが高い…。この課題を一気に解消しうる存在として登場したのが、完全日本語対応のバックテスト分析ツール「岩ライザーFX」です。今回はその開発者・いわちゃん氏に、開発の経緯やこだわり、そして今後の展望までじっくりとお話を伺いました。
聞き手:鹿内武蔵/本文:北原拓実
(FX雑誌『外国為替』vol.3より改変/インタビュー日:2023年2月27日)
いわちゃん氏プロフィール

当初はバイナリーオプションをしていたが数年後にFXの研究を始める。しかし、裁量トレードで期待どおりの成績とならず、自動売買での運用に移行して現在に至る。プログラムは全て独学。日本人向けのEA分析ツールがなく使い勝手が悪いことから、日本語で使えるツール開発を思い立ち、岩ライザーを公開。初心者でも使いやすいツールの開発を心がけている。
完全日本語化されたEA分析ツールの開発者に迫る
─「岩ライザーFX」以外にも多くのツールを手がけているいわちゃんさんですが、まずはこれまでの経歴を教えてください。
もともとはバイナリーオプションを約2年間取引していましたが、プラットフォーム変更やスプレッドの問題などがあり、Armadaさんたちと一緒にFXへ転向しました。FXを始めた当初は裁量取引で挑戦しましたが、結果が振るわず、自動売買に切り替えました。
─現在はEAによる運用のみとのことですが、プログラミングスキルはどのように習得されたのですか?
すべて独学で学びました。バイナリー時代はMQLを使っていましたが、分析アプリの開発を志すようになってからはJavaScriptを勉強し、今は主にそっちでアプリやツールを制作しています。開発歴はおよそ2年で、まだまだ経験を積んでいる最中ですね。EA開発に関しては、ゼロからロジックを構築しているわけではなく、主にコードの修正や改善を担当しています。
─FXツールを作ろうと決めたきっかけを教えてください。
バイナリー用の専用アプリを開発していた経験から、そのFX版を作ろうという流れになりました。FX界隈には多くのツールがあるものの、EAの分析に特化した日本語アプリが存在していませんでした。そこに需要を感じ、自分でも挑戦できる分野だと考え「岩ライザーFX」の開発に踏み切りました。構造はバイナリー用と似ている部分もありますが、岩ライザーFXのほうが機能は圧倒的に上です。
─開発前はQuantAnalyzerやMT4でバックテストをされていたと思いますが、使いづらさを感じた点は?
英語が苦手なこともあり、初期の頃は何が書かれているのか理解できず、操作も大変でした。サポートに問い合わせをしても英語でのやり取りが必要で、返信が来ないこともありました。EA開発者にとっては不便なことこの上なく、初心者にとってはなおさら敷居が高かったと思います。だからこそ、誰でも直感的に使える日本語ツールを目指しました。
最近は質の高いEAも増えていますが、一方で怪しいEAも少なくありませんよね。分析力を持つユーザーが増えることで、FX界隈のリテラシー向上にもつながると信じています。
─MT4やQuantAnalyzerでのバックテスト結果をどう見ていいのかわからないという声も多いです。
そうなんですよ。何を基準に良し悪しを判断すればいいのか、どの数値が重要なのかが掴みにくいと感じていました。MT4のバックテストレポートがわかりづらいため、QuantAnalyzerに乗り換えても英語という壁があります。私も最初はそうでしたので、その状況を改善すべく、誰もが使いやすい日本語ツールを目指しました。
─QuantAnalyzerの有料機能にはどのようなものがありますか?
単利と複利の結果を一つのHTMLデータだけで比較できる点や、モンテカルロシミュレーション機能、複数EAのポートフォリオ統合といった機能があります。でも、有料機能もどこからどこまでが有料なのかが分かりづらいんですよね(笑)。価格が200〜500ドルと高額なのに、ほとんどの人が使い方で迷ってしまうのは、よろしくないと思っています。
─絶対に必要なのでしょうけど、そんな感じだと使いたくなくなりますね。EAの運用において、バックテストの結果を分析できないというのはめちゃくちゃリスクがあることですし。
リスクをどれだけ把握できるかが重要です。稼働中には必ずDD(ドローダウン)の場面が訪れますが、その際に運用を続けるか止めるかの判断が求められます。QuantAnalyzerではスコアが多すぎて要点が見えにくく、リスクの可視化が困難です。岩ライザーFXでは、DDに関するパラメーターを細かく表示することで、その不便さを解消しています。
─FXはリスク管理が重要だと言われますが、実際には「いくら儲かるか」の方に目が向きがちです。そんな方達に向けてDDの重要性を教えてもらえますか。
たとえば運用資金が100万円で、10万円のDDを経験した場合、その資金が元に戻るまでに要する時間を把握しておくだけでも、EAを回し続けられる「握力」が強まります。裁量でもEAでも、含み損中に保有を続けるには握力が必要なので、それだけでも理解しておくとよいでしょう。
─MT4のテスターリポートでは最大DDや相対DDは表示されるので、想定される損失額がわかります。でも、DDが発生する頻度や回復時間は分かりません。
DDのリカバリーが1年かかるのか、5年かかるのかは大きな違いです。同じEAを5年動かすのは現実的ではありませんから、回復に必要な時間の把握は極めて重要です。
バックテストに特化した独自機能が満載
─続きまして、ここからは岩ライザーFXについてお伺いします。開発にはどれほどの期間を要しましたか?
開発が始まったのは2022年5月で、Armadaさんから「そろそろ作りましょう」と声をかけられたのがきっかけです。構想を練りつつ、6月からコーディングを始め、完成までにおよそ9〜10か月かかりました。早い人なら半年くらいで完成できたかもしれませんが、学びながらの制作だったのと、より良い形に仕上げていった結果、この期間が必要になりました。
─QuantAnalyzerにはない、岩ライザーFXだけの独自機能を教えてください。
一つ目は「証拠金リセット」機能です。指定した期間ごとに初期証拠金の状態に戻すことで、現実的な運用シミュレーションが可能になります。たとえば10万円の証拠金で始め、1か月ごとにリセットする設定にすれば、毎月10万円から再スタートする形でテストが進行します。
この機能があることで、時間の経過とともにポジションサイズが肥大化して非現実的な結果になることを防げます。EAによっては最初は1,000通貨単位のエントリーだったのに10年後に100万通貨単位で取引しているようなケースもありますが、実際にそんなロットで運用するのは現実的ではありません。証拠金リセットを使えば、後半も現実に即した分析が可能です。
そもそも資産家でも100万通貨単位での運用はほぼしないですし、200万通貨や500万通貨でずっと運用して、最終的な利益額が数億円や数十億円、最大DDが数千万円になるバックテストデータはリアリティが全くありません。フォワードにできるだけ近づけるために、証拠金リセット機能をつけています。
─つまり、定期的に利益を抜いて資金を整理する運用の再現ですね。
その通りです。複利運用においても、実際の資金管理を反映したシミュレーションができる点が大きな利点ですね。これは岩ライザーFXにしかない機能かなと。
さらに「積み立て検証」機能も用意しています。たとえば、毎月1万円ずつ追加で入金しながら運用した場合を想定して、バックテストを実施することができます。証拠金リセット機能と組み合わせることで、より実践的な積み立て運用のバックテストデータが得られるため、現実味のある分析が可能になります」
─DDの分析にも特化しているとのことですが?
はい。岩ライザーFXでは、ユーザーが任意に設定したドローダウンの値に基づき、どのくらいの頻度でそのDDが発生するのか、また復帰に何日かかったのかをグラフ上で視覚的に確認できるようになっています。
QuantAnalyzerは最大DDしか表示されないため、複数回にわたるリスクを把握しづらいですが、岩ライザーFXでは細かくチェックできるのが強みです。
─スリッページの影響も再現できるとのことですが、詳しく教えてください。
「不利なポジション」という設定を通じて、約定価格に対してスリッページが発生するシナリオを再現できます。設定したポイント分だけ不利な方向に価格が動いた場合の結果が確認でき、バックテストの結果をフォワードにより近づけることが可能です。
また「指定日注文」機能では、特定の期間だけを取引したり、逆に特定の期間を除外して取引できる設定が可能です。たとえば年末年始は取引しない、あるいは夏時間・冬時間のみ分析したいといった要望にも応えられます。
─一番の利点は?
何よりもすべての機能が日本語で使えることです(笑)。色々と説明させてもらいましたが、そこが一番大事かなと思います。
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勝率だけでなく、損益分岐率に注目しよう
─初めてEAを導入する人は、どこから見れば良いでしょうか?
まずは難しいことを考えず、バックテストを一度回してみることですね。初期設定のままでも構いませんので、結果のデータを実際に見てみることが第一歩です。そこからDDや資金管理などの設定を調整しながらバックテストを繰り返すとより良くなると思います。
─ポートフォリオを組んでみたくなりますが、それは後回しでも?
そうですね。最初は一つのEAに集中することをおすすめします。複数のEAを組み合わせると、分析が複雑になって過剰最適化に陥りやすくなります。まずはさまざまな設定でバックテストを繰り返し、そこから必要ない要素をそぎ落としていくのが良いと思います。
─バックテストの結果にはいろいろなパラメーターがありますが、どの辺りを見ればいいのでしょうか。
私見になりますが、最初に確認すべきは取引回数です。サンプル数が少なすぎると統計的な信頼性が低くなり、結果がブレやすくなります。EAのタイプにもよりますが、理想は10年間で2000回以上の取引。年間200回、12か月平均だとだいたい2日に1回の取引ですね。
次に注目すべきはDD、そして平均獲得pipsです。特に平均獲得pipsが低すぎるロジック、たとえば0.5pips程度しか取れないスキャルピングEAは、スリッページの影響に耐えきれないケースが多いです。そういった観点からも、取引回数・DD・平均獲得pipsは必ずチェックしておきたいですね。
─最大連勝や最大連敗のような項目はどう捉えるべきでしょう? 多くのトレーダーが気にしているところかと思いますが。
個人的には、連勝・連敗よりもDDに注目すべきだと思っています。連敗数そのものより、それによってどの程度の損失が出たのかを見るべきです。勝率に目が行きがちですが、それよりも損益分岐率との関係を見る方がロジックの健全性を判断できます」
─損益分岐率とは?
損益分岐率は、リスクリワードを評価する指標の一つで、計算式は「平均損失 ÷(平均利益+平均損失)×100」です。数値が低ければリスクリワードが良好であることを意味します。
例えば勝率が80%あっても、損益分岐率が75%だった場合、そこまで優れたEAとは言えません。逆に、損益分岐率と勝率に大きな差があるロジックこそ注目すべきです。
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今後も進化を続ける岩ライザーFXの展望
─将来的なバージョンアップや新機能の追加予定は考えていますか?
まず早急に対応したいのが、MT4のようにバックテスト結果をHTML形式で出力できる機能です。また、取引回数が10万回を超えたバックテストになると重くてアプリが落ちてしまうので、そこも改善していきたいです。EAを100個同時に10年間のバックテストをしてみたという事例もあるので、複数個回しても耐えられるような設計に作り替えていく予定です。
─ライセンス体系の見直しも?
現状では1ライセンスにつき1台のPCしか使えませんが、今後は追加料金を支払うことで複数台でも使えるような仕組みを導入したいと考えています。
あとはEA初心者にも使ってほしいので、有料版よりも機能は落とした無料版も用意したいですね。お金はかかりますが、EAを使うならさまざまな機能がある岩ライザーFXでバックテストをしてほしいです。
─FX以外の商品も考えられていますか?
株式のアプリも作りたいと思っています。ただ、株式はいろいろな証券会社があるので難易度は高いと思いますが、実現に向けて検討しています。
─現段階でも便利な機能が多い岩ライザーFXですが、これからどんどん使いやすくなっていきそうですね。最後に、読者へのメッセージをお願いします。
EAを回すにはリスク管理が何よりも重要です。どれだけ利益が出るかよりも、どれだけのリスクがあり、どれだけ耐える必要があるのかを理解すること。そのためにも岩ライザーFXでしっかりとバックテストをしてほしいです。
また、「自分でEAを作ってみたい」「プログラミングに挑戦したい」と思っている方もいらっしゃるかと思いますが、まずは最初から素晴らしいものを完成させようとは思わずに、とりあえず動き出して一つEAを作ってみることをおすすめします。私はプログラミングの知識ゼロから、ネット検索を頼りにコードを書きはじめました。勉強してから作るよりも、作りながら学ぶ方が、技術が身につくスピードは速いと思うんです。
私自身、プログラマー出身ではありません。学校の授業でC言語を少し触ったくらいで、本格的にプログラムを学んでおらず、授業の課題を友達のプログラムをコピーして提出していました(笑)。そんな私でも岩ライザーFXを作れます。どんなことでも勉強すれば結果は出ますし、特にプログラミングは勉強すればするだけコードに反映されるので、ぜひEAやツール作りにチャレンジしてみてください。
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