2026年3月15日にログミーFinance主催で行われた、第129回 個人投資家向けIRセミナーの第1部・明和産業株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。
第129回個人投資家向けIRセミナー
吉田毅氏(以下、吉田):明和産業株式会社、代表取締役社長の吉田です。本日はご多忙の中、当社IRセミナーをご視聴いただき、誠にありがとうございます。
当社は本年4月より新たな経営・執行体制へと移行します。そのため、本日のIR説明会は私、吉田と、次期社長に就任予定の久保秋実の2名で登壇します。久保秋は来る4月1日付で「専務執行役員 最高執行責任者(COO)」に就任し、6月下旬の定時株主総会での承認を経て、正式に「代表取締役社長」に就任予定です。
久保秋実氏(以下、久保秋):投資家のみなさま、本日は誠にありがとうございます。4月よりCOOに、そして6月より代表取締役社長に就任予定の久保秋です。
ただいま吉田からお伝えしたとおり、2月19日に新体制への移行を発表しました。日頃よりご支援いただいているみなさまに、本日このように直接ご説明できる機会をいただき、大変うれしく思います。
本日のセミナーの最後に、次年度から始まる中期経営計画をどのように進化させていくのか、私自身の言葉でしっかりとお伝えします。本日はどうぞよろしくお願いします。
目次
吉田:あらためまして、本日はお忙しい中、当社のIRセミナーをご視聴いただき、誠にありがとうございます。
当社グループはいわゆるBtoBの会社ですので、あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、本日は当社グループの特徴や強みをはじめ、事業戦略、業績、株主還元などについてご説明します。
2026年2月19日公表:株式の売り出しについて

吉田:はじめに、2月19日に公表した当社の株式売り出しおよび自己株式取得についてご説明します。当社は、株主である三菱商事、三菱ケミカル、AGCの3社が保有する株式売却の意向を受け、株式の売り出しを公表しました。
本売り出しにより、投資家のみなさまの当社株式への投資機会を増やすとともに、株式の流動性を向上させていきます。
なお、今回の売り出しにより、当社は三菱商事の持分法適用会社から外れる見込みです。しかし、三菱商事を含め、売却する株主3社とは引き続き良好な関係を維持していきます。
2026年2月19日公表:自己株式の取得及び消却について

吉田:株式の売り出しと併せて、「自己株式取得及び自己株式消却に係る事項の決定に関するお知らせ」を公表しました。
これは、取得株式の総数340万株、または取得価額の総額25億円を上限として、3月10日から10月30日までの期間にわたり自己株式を取得するものです。なお、取得した株式は11月末に消却する予定です。
今回の自己株式取得は、株式の売り出しによる当社株式の市場における需給バランスへの影響を緩和するとともに、発行済株式の8パーセント強を買い戻して消却することで、1株当たりの価値を引き上げ、投資家のみなさまが保有する当社株式の価値を向上させることを目指しています。
明和産業とは?

吉田:ここからは当社についてご説明します。はじめに、当社について3つのポイントに分けてご説明します。
1点目は、当社は旧三菱商事にルーツに持つ、今年で創業79年を迎える歴史のある商社である点です。
2点目は、設立当初から中国ビジネスに強みを持っている点です。1962年には中国政府から「友好商社」に指定され、現在は売上高の約3分の1が中国との取引となっています。
3点目は、長年の中国取引で構築したビジネスネットワークを活かし、東南アジアやインドに向けて進出を進めている点です。
取扱製品:競争力の高い、化学品・樹脂、部品など様々な商材

吉田:当社の事業概要についてご説明します。
第一事業は、レアアースやレアメタルなどの希少資源、環境商材、金属製品を取り扱う資源・環境ビジネスです。プラスチック製品などを燃えにくくする材料を取り扱う難燃剤、そして断熱・防水・内装分野を手がける機能建材で構成されています。
第二事業は、主に石油製品や潤滑油を取り扱っています。第三事業は、主に化学品を取り扱うセグメントです。高機能素材、機能化学品、合成樹脂、無機薬品で構成されています。
電池・自動車事業は、持分法適用会社が担う部分が多いため、売上高の割合は低くなっています。しかし、自動車の電動化の流れを取り込み、自動車本体に使用される部品だけでなく、リチウム電池などに使用される原材料などを取り扱っているため、大きな成長が見込まれるセグメントです。
なお、2026年4月に事業推進におけるシナジー強化を目的として、電池材料事業を第一事業に、自動車事業を第三事業に移管します。
特徴・強み:日本商社のノウハウ × 中国・アジアのネットワーク

吉田:当社の特徴と強みについてご説明します。当社の特徴・強みは3点あります。
1点目は、今年で79年となる歴史の中で培った商社としてのビジネス・ノウハウと、強固なサプライヤーとの関係性です。設立当初から海外市場の開拓を進め、事業ポートフォリオを常に入れ替えることで、安定的な収益と実績を積み上げてきました。
2点目は、コスト競争力と成長市場への事業展開に有利な中国で、いち早くビジネスネットワークを確立した点です。
中国政府より「友好商社」として指定されるなど、日本の商社の中で有数の確固とした事業基盤を確立しています。最近は、日本国内や東南アジアへの進出など、事業展開の多様化を図っています。
3点目は、ニッチな分野で環境に優しい製品に精通している点です。日本だけでなく、中国やアジアにおいて、ニッチな分野における環境技術に優れた日本製品・サービスを取り扱い、環境や安心・安全な社会作りに貢献しています。
特徴① 専門商社として、機動的に製品・事業ポートフォリオを見直し、成長機会を追求

吉田:1点目の特徴について、もう少しご説明します。当社は機動的に製品および事業のポートフォリオを見直しながら、成長の機会を追求しています。化学品を中心に、事業環境の変化や製品寿命を見極め、次世代の製品や事業を絶えず探索し、さらに成長の芽を育成・発展させてきました。
また、ピークアウトした製品や事業の入替・撤退により、常に経営資源の循環を促進しています。
特徴① 長年の取引実績で培った主要メーカーの高品質な製品と当社の機能が販売先の安心感に

吉田:主要な取引先および当社の機能についてご説明します。当社は、主要なサプライヤーから高品質な製品を安定的に供給できる体制を確立しています。
また、当社では仕入先と販売先をつなぎ、商品を売買する、いわゆるトレーディングがビジネスの基盤ですが、単にモノを仕入れて販売するだけでなく、さまざまな機能やサービスを提供することで付加価値を高めています。
当社の強みは、お客さまに信頼と安心をお届けするための3つの機能にあります。1つ目は、国内外約2,600社との取引実績と、中国全土および東南アジアを網羅する強固な「ネットワーク」です。
2つ目は、日本や中国における当社グループの事業基盤を活用した機動的な「物流機能」です。3つ目は、製品に新たな付加価値を与え、お客さまの課題を解決する「加工機能」です。当社はこれら3つの機能を掛け合わせることで、お客さまが求める高品質な製品・サービスを提供しています。
特徴② 中国に根ざしたネットワーク:1962年に友好商社指定以後、人口大国で商機を発掘・発展

吉田:2点目の当社の特徴である、中国に根ざしたネットワークについてご説明します。当社は1996年に明和産業(上海)有限公司を設立し、現在では100名を超える中国現地スタッフと中国全土の拠点を活用した供給体制を確立しました。
当社の他の商社との違いは、ローカル化を積極的に進めている点です。多くの商社が中国に進出する日系企業とのビジネスを主軸とする中、当社では過去10年間で中国系企業とのビジネスが6割以上増加し、中国国内に根ざした商社として展開しています。
特徴③ ニッチな分野で環境や安心・安全に寄与し、サステナブルな社会に貢献する製品に精通

吉田:当社の特徴の3点目は、ニッチな分野で環境や安心・安全に寄与し、サステナブルな社会に貢献する製品に精通している点です。当社は、環境負荷低減や社会に貢献する製品を長年取り扱っています。
例えば、潤滑油ビジネスでは、地球温暖化係数を大幅に抑えた新冷媒に適した冷凍機油のマーケティングを通じて、環境負荷の低減に取り組んでいます。また、プラスチック製品などを燃えにくくする素材である難燃剤の開発およびマーケティングを通じて、火災などの災害から人命を守る安心・安全な社会作りに貢献しています。
今後は、アジアなどの成長市場においても、環境負荷の低い、社会に貢献できる製品を提供できる有利なポジションを構築していきたいと考えています。
kenmo氏(以下、kenmo):スライドに「三酸化アンチモン」とありますが、直近でもアンチモンの価格が大きく動いて話題となりました。御社ではどのような対応を取っていますか?
吉田:ご指摘のとおり、アンチモンの価格変動は非常に顕著です。当社の代表的な取扱商材の1つに、アンチモンを原料とする三酸化アンチモンがありますので、この対応についてご説明することで回答とします。
三酸化アンチモンは、2024年9月に実施された中国の輸出管理強化などを背景に、市場で一時的な供給懸念が生じたことで価格が高騰しました。これにより、市況および需給バランスに大きな変化が見られました。
当社はこの環境変化に対し、リスク管理とビジネス機会の創出の2つのバランスを見極め、機動的に対応することで収益化につなげています。ただし、経済合理性を反映しない地政学的なリスクは今後も継続すると考えています。
したがって、市場動向を注視しながら、特定の国に大きく依存しない「サプライチェーンの多様化」を継続して進めることで、今後もお客さまへの安定供給を確保していきたいと考えています。
現中期経営計画2025の総括:注力領域における事業の強化 × 新たな領域での事業開発

吉田:ここからは、当社の事業戦略についてご説明します。2023年4月から2026年3月を当該期間として実施している「中期経営計画2025」では、中国を中心とした海外ネットワークを活用し、注力領域での事業推進と新たな領域での事業開発の両輪に取り組んでいます。
既存事業では、注力領域であるモビリティ、環境、生活領域での取り組みを推進しています。これまで培ってきた中国ビジネスでの経験や知見、取引先とのパートナーシップを最大限に活用し、中国をはじめ、東南アジア、インド、日本を含む東アジアで各種の取り組みを加速しています。
また、新たな事業展開に向けて人材への投資や社内制度の充実を継続しており、社員一人ひとりが活躍できる環境の整備を進めています。
注力領域における事業:中古車載電池リユース事業化に向けてパートナーと会社設立

吉田:ここからは、当社の注力領域における事業について、事例をいくつかご紹介します。当社は2025年4月に、長年培ってきた中国ネットワークを活用し、注力領域であるモビリティと環境領域において新たに合弁会社を設立し、操業しています。
本事業では、トヨタ自動車および中国五鉱グループと共同で中古車載電池のリユース・リサイクル事業に取り組んでいます。EVが世界でいち早く普及している中国では、中古車載電池が先行して出てきます。中古車載電池はさまざまな種類があり、劣化度も異なります。
しかし、トヨタ自動車の技術力と、当社および中国五鉱グループが持つ中古電池の回収や製品のマーケティング力を活用することで、バリューチェーンを形成し、資源を無駄にしないサーキュラーエコノミーを実現していきます。
kenmo:合弁会社における現在の状況についてお聞かせください。
久保秋:こちらの質問については、電池事業を担当する久保秋が回答します。現在、合弁会社では、回収した中古車載電池を利用したコスト競争力の高い電力貯蔵システムを開発しています。
電力貯蔵システムであるESSは、導入する企業を「守り」と「攻め」の両面から支援しています。停電時などの緊急時にはバックアップ電源として事業を維持・継続し、平常時には電気料金の安い時間帯に蓄電することで収益性の向上に貢献しています。
現在、中国湖南省でプレマーケティングを実施しており、販売に向けた準備を着々と進めているところです。
注力領域における事業:プラスチックリサイクル事業で子会社化と業務提携を実施

吉田:日本国内における環境と生活領域のプラスチックリサイクル事業についてご紹介します。近年、プラスチック廃棄物に対する環境規制の強化などにより、再生資源の市場ニーズが急速に高まっています。
そこで当社は、2025年7月にプラスチック再生材を手がける株式会社タカロクを新たに買収し、子会社化しました。また、廃材の選別技術に優位性を持つ株式会社エコマックスとの業務提携を実現しました。
当社が持つプラスチックの調達および販売機能と掛け合わせることで、強固なサプライチェーンを構築し、循環型社会の実現と企業価値のさらなる向上を目指します。
注力領域における事業:インドで冷凍機油のサプライチェーンの確立を目的に現地法人を開設

吉田:インドにおける環境と生活領域の冷凍機油事業についてご紹介します。インドでは、人口増加や経済成長に伴い、家庭用エアコンの普及が見込まれており、日本や中国のコンプレッサーメーカーの多くが現在インドへ進出しています。
その中で、当社が中国で培った物流機能のノウハウや、環境配慮型の冷凍機油への供給期待を受け、2025年12月にインドに現地法人を設立しました。
当社は現地法人を通じて、現地での情報収集を強化し需要を発掘するとともに、お客さまとの関係構築により商権の維持・拡大を図ります。また、インド国内で新たな物流体制を構築し、安定供給の実現を目指していきます。
新たな領域における事業:中国でMLCC(積層セラミックコンデンサ)事業で地元資本の株式取得

吉田:ここからは、新たな領域における事業についてご紹介します。
当社の中国拠点である明和産業(上海)有限公司は、EV・自動運転車、高性能スマートフォン、IoT機器の普及に伴い、現在急速に需要が拡大している積層セラミックコンデンサ、いわゆるMLCCの業界において、主要な生産設備である積層機および切断機の製造・販売事業を手がけている天津志臻自動化設備有限公司の株式を2025年1月に新たに取得しました。
同社の積層機および切断機は、既存の設備と比較して、お客さまであるMLCCメーカーの生産効率を向上させると同時に、エネルギー消費が大きいMLCCの生産工程における環境負荷の低減にも貢献します。
また、明和産業(上海)有限公司は、海外向けの総販売代理店契約を同社と締結しました。現在、日本や韓国などのMLCCメーカーに対して同社製品の拡販に取り組んでおり、収益化に向けて着実に進捗しています。
新たな事業開発に向け人材への投資継続:事業を創出する人材投資とスタートアップとの共創

吉田:新たな事業開発に向けた人材投資について、具体的な施策の一部をご紹介します。「企業内起業家」の育成は、当社が新たな領域で事業開発を推進するにあたっての基盤の1つと考えています。
2022年度から企業内起業家育成プログラムを開始し、社内ベンチャー制度を通じた事業化を目指しています。また、若手社員を対象とした海外トレーニー制度を通じ、海外での事業拡大を担う人材の育成も積極的に進めています。
新たな領域における事業:国産コーヒー事業として月桂冠株式会社との協業を発表

吉田:企業内起業家育成プログラムから誕生した国産コーヒー事業についてご紹介します。当社は、気候変動の影響で、2050年までに世界のコーヒー栽培可能地が半減するといわれる「コーヒー2050年問題」を解決するため、国産コーヒー事業を推進しています。
特に注目していただきたい点は、月桂冠が100年以上にわたって酒造りを行ってきた酒蔵で受け継がれた、蔵つきの清酒酵母をコーヒーの発酵工程に応用した点です。これにより、従来のコーヒーにはない奥深い風味を実現しました。
なお、3月10日に開催された日本農芸化学会において、「清酒酵母発酵技術を用いた純国産コーヒーの製造」に関する研究成果を、月桂冠と共同で発表しました。本発表については、後日あらためて月桂冠と共同でプレスリリースを予定しています。
本日は、完成したばかりのパッケージをみなさまにお披露目します。今回販売する「吟彩(ぎんさい)」というコーヒーのパッケージです。
私どもが手がける「吟彩」コーヒーは、手間暇を惜しまず、最高の品質をお客さまにお届けしたいという強い想いを名前とパッケージに込めています。「吟彩」コーヒーの販売内容に関しては、4月頃の公表を予定しています。当社の新たな挑戦にぜひご期待ください。
参考:中国市場の昨今の状況を踏まえた事業展開

吉田:昨年の本セミナーでは、当社の中国関連ビジネスに関する貴重なご意見・ご質問を多数お寄せいただき、誠にありがとうございました。
昨今の中国の状況を踏まえると、投資家のみなさまが当社の中国関連ビジネスにご興味や一部ご懸念を持つのは当然のことと考えています。この点について真摯に受け止めたいと思います。
スライドに、当社の中国ビジネスの「現状」と「施策」についてまとめています。当社は長年の中国ビジネスでの経験や取り組みを通じて、中国市場におけるリスクとオポチュニティ(機会)を十分に認識していると自負しています。そして、当社の強みの活用、リスクへの対応、次なる成長への展開を着実に実行しています。
kenmo:今後、中国の輸出規制の影響を大きく受ける可能性が高いと思います。中国への依存度を下げて地域分散を図るのか、それとも中国市場をさらに深掘り(集中)していくのかについて、方針をお聞かせください。また、時間軸についても教えていただけますか?
吉田:中国を含めた地域戦略の方針と時間軸についてですが、当社の基本方針としては、中国が圧倒的な強みを持つ将来性のある分野においては積極的に関与してきます。一方で、輸出管理などのリスクに対しては調達ルートを分散するという2つのアプローチを進めていきます。
まず、事業の深掘り(集中)については、中国が戦略的に力を入れ、今後も世界をリードすると予想される領域、例えば電気自動車(EV)、AI、ロボットなどがまさにその筆頭です。
当社は、1950年代から築き上げてきた強固なビジネスネットワークを最大限に活用し、競争力のある商材の取り扱いに加え、さらなる事業展開を今後も積極的に進めていきたいと考えています。
また、このような戦略領域においては、中国企業が海外、特に東南アジアやインドへの進出を進めています。この流れに対して、当社のネットワークを活用し、これらの海外進出を支援することで、当社としても中長期的な収益拡大につなげていきたいと考えています。
一方、分散に関しては、先ほどお伝えした中国の輸出管理といった地政学的リスクへの対応として、特定の国への過度な依存を避けるため、調達ルートの分散やサプライチェーンの多様化を今後も継続的に進めていきます。これにより、お客さまへの安定供給体制を維持し、不安を与えることのないように努めていきます。
「中期経営計画2025」の進捗状況 定量目標達成に向けて、着実に進行中

吉田:ここからは、決算概要についてご説明します。はじめに、中期経営計画の定量目標に関する進捗状況です。「中期経営計画2025」では、スライドの表に記載のとおり、純利益、ROE、株主還元が当初の計画を上回る水準で推移しています。
kenmo:「中期経営計画2025」で掲げた利益目標に対し、改善額が大きく上振れています。この要因をどのように分析していますか?
吉田:私が社長だからというのも理由の1つかもしれません。それは冗談として、当社の利益が上振れしている要因について、2つご説明します。1つは商社ならではの点ですが、「外部環境の変化を収益化する対応力」です。もう1つは、非常にトラディショナルではありますが、「資本効率と基礎収益力の向上」です。
1点目の「外部環境の変化を収益化する対応力」は、いくつかの例があります。例えば、アンチモン市場においては、サプライチェーンの複線化や市況の変化をうまくマネタイズすることができ、利益の上振れにつながりました。
また、昨年度については、当社の持分法適用会社で、自動車部品を製造しているクミ化成が業績にプラスに寄与しました。
2点目の「資本効率と基礎収益力の向上」については、ROIC(投下資本利益率)の管理を社内のKPIとして導入し、PDCAを回すことで、不採算取引の見直し、在庫の圧縮、サイトの短縮といった効率化を進めています。
結果として、これまでの稼ぐ力が一段と向上し、今回の大幅な利益の上振れにつながったと考えています。
kenmo:変化への対応力と収益力、そして社長力ということですね。
吉田:最後の部分は軽めにしていただければと思います。
「中期経営計画2025」の業績推移(通期・3Q)

吉田:中期経営計画3ヶ年の売上高、営業利益、経常利益、当期純利益の推移です。2023年度、2024年度は、過去最高益を2期連続で達成しており、中期経営計画に掲げる定量目標は達成する見込みです。
2026年3月期第3四半期 決算サマリー:順調な進捗状況。3Q発表時に営業利益通期予想を上方修正。

吉田:直近の決算についてです。2026年3月期第3四半期の決算において、売上高および営業利益はともに増収増益で推移しています。営業利益は、売上高の増加に加え、利益率の高い商材が占める比率が増加した結果、2026年1月末に上方修正を発表しました。
株主還元:連結配当性向50% + 機動的な株主還元の方針に基づき、今期配当予想を年38円に

吉田:株主還元についてご説明します。当社は「中期経営計画2025」において、株主還元については連結配当性向50パーセントを基本とし、機動的な株主還元を行うこととしています。今年度の配当予想は、すでに開示済みの1株当たり38円です。
引き続き企業価値のさらなる向上を図り、株主・投資家のみなさまにとって魅力的な銘柄を目指して取り組んでいきます。
キャピタル・アロケーション

吉田:スライドに「中期経営計画2025」におけるキャピタル・アロケーションの見込みについてまとめています。
営業キャッシュフローの増加や資産の入替により、キャッシュインは当初計画を着実に上回る状況です。キャッシュアウトについては、成長投資や基盤投資を積極的に行った結果、2026年度末時点で総額35億円の投資を見込んでおり、当初の投資計画を達成する予定です。
株主還元については、当期純利益の増加による配当の増加に加え、機動的な株主還元策として自己株式の取得を実施したことで、当初計画を大きく上回る水準となる見込みです。
まとめ

吉田:本日お伝えしたいポイントを4点にまとめています。1点目は、当社は化学品を主体としたさまざまな事業を展開し、中国に事業基盤を確立している日本でも有数の商社であることです。
2点目は、常に時代のニーズを見極め、戦略の軸足を移しながら堅調に拡大・成長を続けてきたことです。
3点目は、「中期経営計画2025」で掲げている定量目標の達成に向け、稼ぐ力を着実に向上させるとともに、M&Aや事業開発を推進してきたことです。
4点目は、株主還元については配当性向50パーセントを基本とし、機動的な株主還元を実現していることです。
明和産業の転換点

久保秋:最後に、明和産業のこれからについて、私、久保秋がご説明します。当社は現在、株主構成において大きな変化を迎えるとともに、経営そのものも極めて重要な転換点を迎えています。
本日はこの場をお借りして、当社のこれまでの歩みと、これからの「更なる成長ステージ」についてお話しします。
過去を振り返ると、当社は1990年代後半に金融危機を経験し、2000年代以降は一貫して収益性と財務健全性を重視する経営へと舵を切りました。
事業の選択と集中を断行した結果、かつて0.1パーセントに沈んでいた経常利益率は2.9パーセントまで改善し、自己資本比率も40パーセント以上を安定的に維持するまでに至りました。ここまでが、当社が守りを固め、盤石な財務・収益基盤を磨き上げたフェーズです。
そして、2026年より、いよいよ当社は「更なる成長ステージ」へと突入します。これまでに築き上げた強固な財務基盤と稼ぐ力を最大限に活用し、「機動的かつ規模感のある成長を実現する経営」へ大きく転換していきます。
2026年度より始動する次期中期経営計画では、未来に向けて大きく3つの柱を掲げています。1つ目は、「事業ポートフォリオの変革」です。これまでの延長線上の経営ではなく、当社の次世代を担う成長分野に対し、経営資源を大胆に集中投下します。
一方で、資本効率などの基準に満たない事業については、縮小や撤退も含めた見直しを確実に行います。このメリハリのある資源配分により、環境変化に強い強靭な収益構造を構築し、非連続的な成長へ向けた強固な土台を固めていきます。
2つ目は「M&Aや事業投資の更なる推進」です。1つ目で固めた強固な土台の上に立ち、これからは既存事業の自律的な成長だけでなく、非連続的な成長を実現するため、M&Aや事業投資をさらに加速させます。
また、当社のサプライチェーンの多角化や環境負荷低減に向けた取り組みに資する投資を積極的に実行し、成長への強力な推進力としていきます。
最後に、3つ目は「人材への投資強化」です。これからの非連続的な成長を牽引し、当社の新たな歴史を作るのは、他でもない「人」です。
既存の枠にとらわれない多様なプロフェッショナル人材の獲得・育成に全力を注ぐとともに、社員一人ひとりが失敗を恐れず新たなビジネスに挑戦できる環境・風土作りを強力に推進し、当社の非連続な成長を力強く牽引していきます。
これらの3つの施策を強力に推進することで、市場の期待を超えるような成長を必ず実現していく覚悟です。株主並びに投資家のみなさまには、これからの新たな挑戦に向けて次なる飛躍を遂げる当社に、ぜひご期待いただきたく思います。
みなさまのご期待に力強くお応えし、さらなる企業価値の向上と魅力的な株主還元を果たすべく、当社グループの役員・従業員が一丸となって事業活動に邁進していきます。今後とも変わらぬご支援とご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願いします。
質疑応答:国際情勢の影響について
荒井沙織氏(以下、荒井):「現在の国際情勢は、御社の事業に影響はありますか?」というご質問です。
吉田:非常に旬なご質問ですが、ホルムズ海峡の封鎖など、現在の中東情勢は現時点でも流動的な部分が多く、当社としても十分な分析には至っていません。
しかし、現時点で入手可能な情報から考えても、短期的には当社事業への一定程度の影響は避けられないと想定しています。当社グループとしては、リスク管理に努めているところです。
日本は原油を中東に80パーセント以上、場合によっては90パーセント依存しています。原油やその誘導品をエネルギーもしくは原材料としている当社のビジネスパートナーは、数量、価格、物流といった部分で影響を受ける可能性が十分にあり、すでに一部の影響が顕在化していると認識しています。
当社では、潤滑油や石油製品を扱う第二事業部門、石油化学品を扱う第三事業部門が、影響を受けやすい業界やビジネスパートナーの対面となります。これまで当社が築いてきたお客さまやサプライヤーとの強固な関係性、ネットワーク、さらに当社の物流機能を最大限に活用しながら、ビジネスへの影響を最小限にすることを考えています。
なお、これは当社だけではありませんが、2020年代前半にはコロナ禍を経験し、非常に厳しい状況に直面しました。しかし、当時の経験を踏まえ、現金および現金化可能な流動資産を手元に十分に確保しており、当社の財務健全性は相応のレベルを維持できると考えています。
一方で、中東情勢が長期化する場合を想定すると、当社の事業基盤および成長戦略への影響は、相対的には限定的であると考えています。
当社の事業領域はエネルギー資源に直接影響を受ける川上ではなく、比較的川中や川下に位置しているため、商社としての需給調整機能を発揮しやすく、サプライチェーンの多様化や多角化を図りやすい状況にあります。これにより、一定程度の影響をカバーできると考えています。
また、今後新たな収益の柱として想定しているビジネスおよび事業投資候補については、これから久保秋が実現に向けて進めていく予定ですが、現時点では中東の地政学的なリスクに直接的な影響を受けるものはありません。
今回の中東リスクは、いわゆる化石燃料への依存度が高いビジネスや事業ほど、影響が大きくなると考えています。
当社はこれまでご説明したとおり、再生可能エネルギーとの相性に優れているEVやその駆動母体であるバッテリー、モーター関連の商材や事業、さらに循環型ビジネスなどを積極的に事業展開していく予定です。
このような状況下では、追い風という表現は適切でないかもしれませんが、プラスに働く可能性があると考えています。
その上で、株式市場全体が大きく変動している中で、足元の株価動向についても当社の見解をお伝えします。中東情勢の緊迫化により、当社の株価も下落しています。一方で、日経平均株価やTOPIXといった主要指標も相応に下落しており、非常にパラレルに動いています。
地政学的リスクなどのマクロ環境の不透明感を背景に、マーケット全体が地合いとしては弱めに推移していることが要因であり、当社固有の事業価値が毀損されることを懸念とした下落ではないと認識しています。
質疑応答:取扱製品の売上高比率変動の可能性について

荒井:「今後、取扱製品の売上高比率に変動の可能性はありますか?」というご質問です。
久保秋:結論としては、変動する可能性は大いにあります。当社では現在、次期中期経営計画の策定を進めており、その中で「事業ポートフォリオの変革」を重点テーマの1つとして位置づけています。そのため、今後の売上や利益の構成比率は、会社として戦略的に変化させていく方針です。
具体的には、メリハリの効いた資源配分を実行する考えです。まず、当社の次世代を担う事業や、今後重点的に成長させていく事業に対して、人員や資金などの経営資源を積極的に投資し、さらなる成長を図っていきます。
一方で、ただ規模を追うのではなく、ROICなどの資本効率をはじめとする当社が定める基準に満たない事業や商材については、期限を定めて効率改善を進めます。それが難しい場合は、事業の縮小や撤退も視野に入れ、見直しを実行していきます。
なお、具体的にどの事業を重点的に投資する事業や見直しを行う事業に区分するかといった詳細については、現在策定中の次期中期経営計画の中で整理し、みなさまにご説明する予定です。
このように、成長分野への投資と基準に満たない分野からの確実な撤退を両輪で進めることで、より収益性が高く、環境変化に強い強靭な事業ポートフォリオへと変革していきます。
質疑応答:株式売り出しの意図について

荒井:「株式の売り出しは、政策保有株式の解消という流れの一環でしょうか? それとも、御社として株主構成を変化させていく意図があるのでしょうか?」というご質問です。
吉田:今回の売り出しの背景については、あくまで株式を保有する株主3社からの意向によるものです。政策保有株の解消の一環であるかについては、当社としてはコメントする立場ではありません。
一方で、株主構成の変化は確実に起こると認識しています。ただし、当社が特定の構成に変化させようという意図を持っているわけではありません。
結果として、今回ご視聴いただいている多くの個人投資家のみなさまに、当社の株式を保有していただく機会が増えると予測しています。当社としては、市場における株式の流動性が高まることで、より幅広い投資家のみなさまに中長期的に当社をご支援・応援していただける良い機会になると前向きに捉えています。
引き続き、投資家のみなさまに向けたIR活動や企業価値の向上に一層努めていきますので、よろしくお願いします。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:四半期ごとの業績の季節性はあるのでしょうか。
回答:当社の業績の季節性に関しては、第一事業部門において、機能建材事業で下期偏重の取引がありますが、当社全体では、季節性による大きな影響はありません。
<質問2>
質問:直近の株式売出し(価格849円)に対し、25億円規模の自社株買いや高水準の配当(38円)など、強力な株主還元を打ち出されている一方で、足元の株価(3月13日終値:817円)は売出価格を下回る軟調な推移となっています。この株価水準に対する貴社経営陣の評価と、今後の市場対話の方針についてうかがいたいです。
回答:足元の株価が売出価格を下回って推移している要因は、マクロ環境の悪化に伴う全体相場の下落に加え、株式売出しに伴う一時的な需給要因が重なった結果であると分析しています。
当社としては、引き続き事業の収益力強化と適切な株主還元をはじめとする資本政策の両面から、資本効率(ROE)の向上に努めていきます。
企業価値の適正な評価を獲得するためには、市場との対話、すなわち「IR活動のより一層の強化」が不可欠であると認識しています。具体的には、現在策定を進めている次期中期経営計画において、事業ポートフォリオの変革や重点領域への投資の内容について、投資家のみなさまとの直接的な対話の機会を拡充し、情報発信の質と量の両面からIR活動を強化していく方針です。
引き続きROEの向上を図るとともに、IR活動の強化を通じた成長戦略の浸透を推進し、さらなる企業価値の向上を実現していきます。
<質問3>
質問:電池・自動車事業においてセグメント損失が発生しており、主要メーカー(本田技研工業等)のEV戦略見直しといった事業環境の変化も顕著です。これらを踏まえ、同事業をポートフォリオ上の「重点投資領域」として維持し改善を図るのか、あるいは事業の縮小・撤退を含めた再編を検討されているのか、現時点での経営判断をお聞かせください。
回答:自動車事業は「中期経営計画2025」において、注力領域である「モビリティ」に位置づけており、事業の収益性と効率性の向上を図る方針で進めています。昨年度は収益改善を図ることができましたが、今年度については損失が発生しており、当社が掲げた収益改善に関しては課題が残る結果となりました。こうした状況や事業環境の変化も踏まえ、同事業の今後の位置づけについては、次期中期経営計画の策定に向けて、事業ポートフォリオの抜本的な見直しを含めて慎重に検討を行っています。具体的な方針については、次期中期経営計画の公表時にあらためてご説明します。
<質問4>
質問:第3四半期末時点で153億7,300万円計上されている投資有価証券について、資本効率向上の観点から、今後の縮減計画や売却資金の使途(成長投資への振替や追加還元など)についての方針を教えてください。
回答:当社の政策保有株式については、取引関係の維持・強化による将来的な事業の発展と企業価値の向上を目的として保有していますが、資本効率の改善およびコーポレートガバナンスの強化の観点から、その保有のあり方については継続的に見直しを行っています。
具体的には、政策保有株式は総合的かつ中長期的な観点から毎年その保有意義を検証しており、合理性が認められない場合には、縮減していくことを基本方針としています。
なお、縮減によって得られた資金の使途については、将来の成長に向けた投資や株主還元に充当するなど、資本効率の向上に資する最適な資金配分を図っていきます。
今後も、株主構成の変化を踏まえつつ、資本効率の向上と企業価値の最大化を両立させるため、政策保有株式の見直しを着実に進め、透明性の高い情報開示に努めていきます。
<質問5>
質問:中期経営計画の開示は次回5月本決算時でしょうか。またPBR1倍を恒常的に割っていますが、中計の見直しと同時に株主還元について見直し(配当性向及びDOEの引き上げ)は検討しないのでしょうか。
回答:次期中期経営計画の開示時期については、現時点では具体的な日程は確定していませんが、2026年度の早いタイミングでの公表を予定しています。また、次期中期経営計画においては、株主還元方針のさらなる高度化を予定しています。これらを通じ、将来の成長に向けた投資機会と財務健全性のバランスを踏まえながら、総還元の最適化を図る方針です。こうした取り組みにより、手元資金を活用した資本効率の向上と、これまでにない非連続な成長の両立を実現し、企業価値の持続的な向上を目指していきます。具体的な数値目標や実行計画については、今後予定している次期中期経営計画の公表時にあらためて詳しくご説明します。
