ハンガリーが先の議会選で政権交代を果たし、ブルガリアを追う形でユーロ導入に踏み出しました。一方で、同じ東欧地域のチェコやポーランドなど経済的に安定した国々は独自通貨を維持しており、今後ユーロの質を考えると好材料にはなりにくい状況です。
ハンガリーでは4月の議会選挙で、親欧州連合(EU)路線を掲げる中道右派の新興勢力「ティサ(尊重と自由)」が圧勝し、マジャル氏が首相に就任。16年続いたオルバン前政権は、ロシア寄りとも受け取られる外交姿勢やEUとの対立姿勢が目立ち、凍結されたEU資金の問題も重荷となっていました。新政権は加盟各国との関係修復に乗り出し、経済の立て直しと海外マネーの呼び戻しを優先課題に据えています。
背景には、中東紛争に伴うエネルギー価格の高騰があります。輸入エネルギーへの依存度が高いハンガリーでは、インフレ圧力と財政悪化が同時進行し、通貨フォリントも不安定な動きが続きました。新政権はEUとの歩調を合わせながら、最終的にユーロ導入を目指す方針を打ち出しています。市場では「欧州回帰」の象徴として受け止められており、国債市場や為替市場にも一定の安心感をもたらしたようです。
もっとも、ユーロ導入への道のりは平坦ではありません。米格付け会社S&Pは、低インフレや財政健全化、長期金利の安定といった加盟条件を現時点では満たしていないと指摘。ただ、条件が整えば信用力を改善できる可能性が高いとの見方も示しました。実際、クロアチアやバルト三国では、ユーロ導入後に格付け向上や資金流入が進んでいます。
東欧諸国では、ブルガリアが今年1月に21番目の導入国として仲間入りしましたが、チェコやポーランドは現時点で自国通貨を維持する姿勢を変えていません。両国とも製造業が強く、独自通貨による為替調整が輸出競争力の維持につながるためです。特に、ポーランドは経済規模が東欧最大級で、自国通貨ズロチの市場の信認も比較的高く、急いでユーロへ移行する必要性が薄いとの見方が優勢です。
現在の東欧では、経済的に不安定な国ほどユーロを必要とし、逆に比較的安定した国ほど独自通貨を維持するスタンスです。ユーロ圏は加盟国が増えれば市場規模が拡大する一方で、加盟国間の経済格差も抱え込むことになります。トランプ政権の不確実な政策運営によるドルの信認低下でユーロ選好地合いが広がるなか、東方拡大がユーロ自体の質的向上に資するか、当面は見極める展開となりそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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