2026年5月13日に発表された、日本空港ビルデング株式会社2026年3月期決算および中期経営計画説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
目次
田中一仁氏(以下、田中):日本空港ビルデング株式会社代表取締役社長の田中一仁です。みなさまには、日頃より弊社事業の運営にご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございます。
本日は、弊社の2026年3月期決算説明会において、神宮寺から前期決算の総括と今期の業績予想についてご説明した後、私から新しい中期経営計画についてご説明します。
1.2026年3月期 連結決算総括(1)旅客数実績

神宮寺勇氏:取締役専務執行役員の神宮寺です。前期の状況についてご説明します。羽田空港の旅客数は好調に推移し、国内線は前期比で3パーセント増加、国際線は7パーセント増加しました。
中国の渡航自粛要請の影響が懸念されましたが、羽田空港では軽微でした。訪日外国人旅客数が過去最高を更新する中、羽田空港全体の旅客数も9,100万人となり、過去最高を更新しました。
1.2026年3月期 連結決算総括(2)連結業績

2026年3月期の連結業績については、資料の赤枠に記載のとおりです。売上高は2,898億円、営業利益は450億円、経常利益は437億円、当期純利益は291億円となりました。
売上高は旅客数の増加に加え、インフレ対応を進めたこともあり、コロナ禍前を超えて過去最高を更新しました。ターミナル拡大などで費用は増加しましたが、中東情勢の影響はまだ出ておらず、営業利益と経常利益は3年連続で最高益を更新しました。
このような状況を踏まえ、期末は予想から5円増配し、1株当たり50円、年間配当は95円としました。
1.2026年3月期 連結決算総括(3)セグメント別業績

スライドは、セグメント別の数値を示しています。
施設管理運営業は、各種価格の改定効果により費用増加を上回り、増収増益となりました。物品販売業は円安の影響もあり、下期の免税売上が前期を上回りましたが、上期の減益を覆すには至らず、通期では増収減益となりました。
1.2026年3月期 連結決算総括(4)2025年度の主な取り組み

主な取り組みとして、施設面では第1ターミナルサテライト建設工事に加え、第2ターミナルサテライト延伸工事に着手したほか、空調や搬送機の更新を進めています。商業面では、第3ターミナルのブティック店舗の改装や第1ターミナルのフードコートのリニューアルを行いました。
2.2027年3月期 連結業績予想(1)旅客数予想

今期の予想についてご説明します。羽田空港の旅客数について、国内線は堅調なレジャー需要を反映し、昨年度と同水準を見込んでいます。
国際線については、中国の影響があるものの、増便や座席数の増加により、前期から若干の増加を予想しています。なお、中東情勢の影響は織り込んでおらず、今後のリスク要因と考えています。
2.2027年3月期 連結業績予想(2)連結業績予想

今期の業績については、スライド表の赤枠に記載のとおり、売上高は2,967億円、営業利益は456億円、経常利益は458億円、当期純利益は242億円を見込んでいます。引き続き、インフレ対応を進めることで増収増益を目指します。
当期純利益は、一部の連結子会社で税金費用が増加するため減益を見込んでいますが、配当金は、前期と同額の1株当たり95円を予定しています。今後、中東情勢に伴う物資の高騰や供給不足の影響が発生した場合は、費用削減などで対応します。
2.2027年3月期 連結業績予想(3)セグメント別業績予想

セグメント別の業績予想を示しています。施設管理運営業では、ターミナル拡大に伴う費用増加を吸収するため、家賃や施設利用料などを見直し、増収増益を図ります。
物品販売業では、市中免税店など一部店舗の閉鎖や改装により減収減益を見込んでいますが、引き続き魅力向上に努めます。各事業の取り組み内容については、この後の中期経営計画パートでご説明します。
目次

田中:先日公表した中期経営計画について、前中計の総括、長期ビジョン、新中期経営計画の概要の順に、資料に沿ってご説明します。
中期経営計画(2022-2025年度)のガイドライン達成状況

前回の中期経営計画の総括です。新型コロナウイルス感染症の流行による経験を踏まえ、オペレーションを継続的に見直しました。また、想定を上回る物価高騰など外部環境の変化にも対応し、インバウンド需要の急激な回復を着実に取り込んできました。
その結果、当期純利益やROAといった主要な指標を前倒しで達成し、自己資本比率は目標の40パーセントを超えて、強固な財務基盤を再構築しました。
人にも環境にもやさしい先進的空港へ-施策の振り返り(トピックス)

施設面では、人にも環境にもやさしい先進的な空港の実現に向け、第2ターミナルビルサテライトと本館を接続し旅客動線を最適化しました。また、日本の免税店初出店となるトップブランドの誘致や、赤外線センサを用いた人流分析の導入など、お客さま本位のターミナル運営を進めてきました。
羽田空港の国際線発着枠が上限に近づくなか、新たな事業展開による収益基盤の拡大は道半ばであると認識しています。羽田空港や航空業界のさらなる課題解決に向けて、当社が既存領域で取り組むだけでは限界が見えてきているところです。
背景

長期ビジョンについてご説明します。今回の中期経営計画策定にあたっては、より長期的な事業環境の変化と、その中で当社が果たすべき役割について検討を行いました。
羽田空港は拡張の余地が限られているものの、安定した航空需要が存在し、多くの事業者がそれぞれの個別最適を追求しています。インバウンド需要は引き続き増加が見込まれますが、日本全体では人口減少が続いており、今後、国内需要の減少や労働力不足などの問題が深刻化することが予想されます。
羽田空港は高い需要に支えられ、安定しているように見えますが、国内線ネットワークの先細りは、日本の航空産業、さらには日本経済にとって決して望ましいことではありません。結果的に、羽田空港や当社も大きな問題に直面する可能性があります。
そのため、羽田空港での共創と全体最適を通じて、日本全体の航空成長を支える企業へと進化することが、当社の進むべき道だと考えています。
羽田空港の目指すべき姿

羽田空港が目指す将来像を「日本の航空旅客数最大化に貢献する空港」と位置づけました。これは、戦後の民間資本による当社設立という原点に立ち返り、日本全体に貢献するという強い意志を込めたものです。
訪日観光は成長のドライバーであり、国際線と国内線の接続機能を最大化することで、旺盛なインバウンド需要を全国に行き渡らせることが可能です。また、交流人口の増加は経済成長や相互理解に不可欠であり、航空インフラ維持のための基盤として最も重要です。
これからは、量的成長が当然ではない時代だからこそ、高い壁に正面から挑む姿勢を示し、関係者の賛同を得て総力を結集し、日本の航空運送インフラの発展に貢献していきます。
目指すべき姿を実現する取組方向性・当社グループの新たな長期ビジョン

当社が目指すべき姿を実現するための取り組みの方向性と、新たな長期ビジョンを示しています。
取り組みの方向性として、「首都圏空港の最大活用」「アジアの経済成長の取込」「国内移動需要の創造」の3点を掲げています。羽田と成田が連携し、世界最大規模の発着枠をフル活用しながら、アジアの外需を取り込み、国内線ネットワークを通じて日本全体に需要を還流させる構想です。
その実現に向け、当社の役割をこれまでの需要享受型のターミナル事業者から、需要創造型の空港の要(Anchor Role)へと再定義しました。
新たな長期ビジョン【需要創造型の空港の要(Anchor Role)】における成長モデル

当社が要の役割を果たし、共創と全体最適に取り組むことで、日本の航空旅客数の最大化に貢献し、すべてのステークホルダーへの提供価値を最大化していきます。
旅客には安心で快適な空港体験を提供し、地域やパートナーには持続的成長を、従業員には挑戦を通じた成長を提供します。
また、環境への配慮と企業価値向上の両立を目指します。需要創造型企業として、高品質なサービスを通じて顧客理解を深め、新たな顧客接点を作り出し、その成果を全国へ共有したいと考えています。
ビジョン実現に向けた長期戦略

ハードとソフトの両輪により、長期戦略についてご説明します。
ハード面では、国内線と国際線のさらなる機能融合を目指します。第2ターミナルビル国際線施設の増築や第1ターミナルビルの国際化の検討を進めます。
両ターミナルを接続してスムーズな乗り継ぎ環境を整備することで、運営効率を改善し、発着処理能力の向上に寄与するとともに、量的拡大の蓋然性を高めていきます。
ソフト面では、関係事業者との全体最適を実現する運営基盤を構築するとともに、デジタルを起点にビジネスモデルを変革します。そこで得られた知見を全国へ共有することで、日本全体での人流創出と物理的制約を超えた当社の新たな成長軸の確立に努めていきます。
戦略ロードマップ

長期戦略を推進するためのロードマップを示しています。今年からの5年間を、ビジョン実現に向けた企業変革期と位置づけています。
将来の大規模投資に備え、キャッシュ・フロー創出力を強化し、日本全体の航空需要創造に能動的に貢献する企業へと変革を遂げることで、持続的な成長を実現するシナリオを描いています。
中期経営計画(2026-2030年度)サマリ

新しい中期経営計画についてご説明します。スライドでは、長期ビジョン実現に向けた経営課題、その課題を克服するための経営戦略、そして目標数値をステークホルダーと関連付けてサマリーとして示しています。
経営戦略策定のプロセス

本中期経営計画では、2030年に目指す姿を「羽田空港の要」と定義しています。ステークホルダーを起点にマテリアリティを再編し、キャッシュ・フロー創出力と関係者牽引力を強化していきます。
羽田空港の要(Anchor Role)に向け、マテリアリティを再編

スライドでは、5つのマテリアリティごとに、羽田空港の要として実現したい目標を示しています。
安心・快適で先進的な空港づくりでは、首都圏空港としての運営を最適化し、さらなる価値向上を図ります。
地域社会への貢献では、日本全体で豊かさを追求し、共に潤うことを目指します。
環境に配慮した事業運営では、社会インフラとして環境負荷の低減を図ります。
公正でレジリエントな事業活動では、透明性の高いガバナンスを構築し、リスクに迅速かつ柔軟に対応することを目指します。
人財強化、人的資本経営の推進では、従業員が誇りを持ち、共に成長を遂げる組織への進化を目指します。
マテリアリティへの対応を戦略の前提に据え、一連の取組により企業価値を向上

スライドでは、マテリアリティを戦略の前提とすることが、持続的な企業価値の向上につながるロジックを示しています。
環境・公正・人財を事業基盤の前提とすることで、企業としての存立基盤をより確固たるものにし、株主・投資家のみなさまからの信頼向上と資本コストの低減を図ります。
安心・快適および地域社会への貢献を事業構造の前提とし、キャッシュ・フロー創出力と関係者牽引力の強化を経営戦略の方向性として示すことで、期待成長率の向上へとつなげていきます。
基幹事業での収入に加え、新たな事業領域を開拓することで、フリー・キャッシュ・フローの増加を目指す統合的なフレームワークとなっています。
経営戦略

経営戦略についてご説明します。キャッシュ・フロー創出力と関係者牽引力の強化を取り組みの方向性として掲げ、効率、付加価値、共創の3つの中核戦略により実現していきます。
キャッシュ・フロー創出力では、羽田空港の安定した航空需要に質の向上を加え、収益ポテンシャルを一層強化するため、効率と付加価値を追求します。効率においては、資本収益性に基づき、経営資源を最適に配分します。
付加価値については、さまざまなサービスを提供して顧客接点を増やすことで、ターミナル事業の価値密度を向上させ、旅客の滞在時間をより豊かなものにしていきます。
関係者牽引力では、ステークホルダーとの連携を通じて、単独では成し得ない価値を創出する共創を追求します。
これらの戦略を支えるのが人的資本経営であり、自ら未来を切り拓く人財が各ステークホルダーとの連携をリードし、空港全体の事業価値を最大化していきます。
「選択と集中」資本コスト経営

効率を上げる戦略として、資本コスト経営を推進し、経営資源を成長分野に重点的に投下します。投資採算規律の明確化、不採算事業の整理、グループ機能の再編、非事業用資産の圧縮を進めることで、新たな価値創造を促進していきます。
先日、公表しました市中免税店からの撤退については、その代替として、ECサイトでの免税品予約販売の利便性向上に努めるとともに、バーチャルブティックを拡充するなど、資産効率の最適化を推進していきます。
ターミナル事業の価値密度向上

付加価値を高める戦略では、旅客の通過動線や滞在時間、多様なニーズを柔軟に捉え、ターミナルの収益力を強化します。
施設の増改修を進め、第2ターミナルでは国内線と国際線を一体化した商業機能の再配置により乗継需要を取り込むほか、CRMの強化、ECサービスの拡充、免税自販機の導入による待ち時間の短縮、自動走行モビリティによる回遊性の向上、デジタルサイネージの拡充などを行います。
これらにより、滞在空間の魅力を向上させ、顧客一人ひとりの満足度と消費単価の向上を目指します。
旅客が空港で楽しく豊かな時間を過ごせるよう、サービスを高度化し、適切な料金体系を構築することで、羽田空港の稼ぐ力を多角的に引き上げます。
サービスレベルのさらなる向上により、旅客1人当たりおよび施設1平方メートル当たりの収益力を15パーセント増加させることを目標としています。
TAM(Total Airport Management)

「共創を追求する」という戦略では、3つのトピックを紹介します。1つ目は、Total Airport Management (TAM)です。
これまで個別企業ごとに点在していた空港内のデータを統合・可視化し、精緻な予測に基づく対応や連携を可能にするプラットフォームを構築していきます。
これにより生み出された時間、スペース、人員の余裕を関係者全員で分かち合い、定時運航率の向上、施設運用の最適化、旅客の待ち時間の短縮など、空港全体の価値向上と収益性強化を実現する全体最適の取り組みを目指します。
ここで培ったシステムやナレッジを、将来的には全国の空港に提供できるよう進化させていきたいと考えています。
空港GX(グリーン・トランスフォーメーション)

共創の2つ目は、グリーン・トランスフォーメーションです。世界の航空会社から選ばれ続ける空港の必須要件として、脱炭素化を推進します。自社の排出削減にとどまらず、ターミナル外へも貢献範囲を広げ、ステークホルダーと共に空港GXを実現していきます。
具体的には、水素利活用システムの導入推進、サービス車両や特殊車両のEV化、SAFの供給体制構築などに取り組み、航空業界全体の脱炭素を牽引していきます。
CO2排出量を2030年までに46パーセント削減する目標を掲げ、環境負荷の低減をリスク回避に留めず、新たな事業機会へと昇華させることで、持続可能な航空インフラを構築し、社会的価値と経済的価値の両立を図っていきます。
地域社会との価値共創

共創の3つ目は、地域社会との価値共創です。羽田周辺地域や日本各地との連携を深め、事業範囲を拡張していきます。地方空港での免税店運営受託の拡大やタックスリファンドなどのシステム基盤の提供を通じ、羽田で培ったノウハウを全国へ還元していきます。
機内食の生産体制強化や近隣物件の再編による航空産業インフラの強化など、羽田空港ターミナル外での価値創造に取り組みます。
具体的には、ターミナル外での収益規模を30パーセント増加させることを目標に掲げ、他空港や地域への人流創出、日本全体の移動活性化を図り、地域と共に持続的な成長を目指します。
人的資本経営の強化

これらの経営戦略を実行し、企業変革を成し遂げる源泉として、人財への投資を増やし、自ら未来を切り拓く人財を育成することで、人的資本経営を強化していきます。
専門人財の採用やコア人財の育成を加速し、従業員エンゲージメントを重要指標として位置付け、現在より5ポイント引き上げた82ポイントを目標水準とします。
従業員がビジョンへの共感を深め、意欲的に業務に取り組むことで、人的生産性が向上し、個人と組織の成長が連動することを狙いとしています。
空港運営の知識と経験を有し、全体最適を考え、柔軟な発想で自ら需要を創造できる人財集団へと進化することが、良質な顧客サービスと財務リターンをもたらす好循環の基盤になると考えています。
業績成長目標

業績目標は、売上高3,400億円、営業利益550億円としています。質的成長を重ねることで、売上高の伸び率以上に営業利益を拡大させる方針です。全セグメントで増収増益を目指し、収益力強化を起点にして、ROEとEPSの目標水準を着実に達成していきます。
ROEとEPSについては、一部の連結子会社の繰越欠損金解消に伴う税金費用の増加を見込んだ目標水準としています。
キャピタル・アロケーション -成長投資と株主還元の両立-

資金配分方針についてご説明します。将来の大規模投資に備え、この5年間で1,000億円規模の成長投資を実行し、キャッシュ・フロー創出力を強化していきます。
一方で、株主還元の強化も経営の重要課題であり、安定配当に自己株式取得を加えた総還元性向50パーセント以上を目標としました。
また、信用格付け「A+」を維持し、財務規律を守りつつ、事業活動によるキャッシュ創出と負債調達を組み合わせることで、資本コストの低減を追求していきます。
持続的な成長と利益還元を高いレベルで両立させるため、維持・更新など必要な投資を遂行していきます。
ガイドライン

すべてのステークホルダーへの貢献を可視化するガイドラインをスライドに再掲しています。
株主にはROE、EPS、総還元性向、旅客にはSKYTRAX評価、地球環境にはCO2排出量、地域社会には羽田空港ターミナル外収益、従業員には従業員エンゲージメント指数といった指標を、財務指標と非財務指標をバランスよく多角的に設定しました。
このガイドラインの達成を通じて、日本の航空旅客数最大化という高い目標に向けて着実に歩みを進めていきます。
先行き不透明な状況が続き、時代が大きく変わりつつある中で、当社は自らの役割を再定義し、企業変革に取り組んでいきます。
従業員一人ひとりがこの長期ビジョンを自分事として捉え、知恵を出し合い、自らの仕事に反映させることで、当社の組織文化を変革し、事業モデルの進化を実現していけると信じています。
我々経営陣の役割は、時代の変化を的確に捉え、組織の進むべき方向を指し示し、従業員が持てる能力を十分に発揮し、成長できる環境を整備することだと考えています。
ガバナンスの強化に関しては、この1年間、私自身が先頭に立ち、専門家の助言を得ながら、健全な組織体制の整備と企業風土の改革に努め、関係各所にも定期的にご報告し、おおむねご理解いただけていると考えています。
今後もガバナンスの改善を続け、より良い会社を目指して努力を重ねていきます。みなさまにはご理解とご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。ご説明は以上です。
