■ヤマノホールディングス<7571>の株主還元策
1. 配当方針
安定的かつ継続した株式配当を基本としつつも、それを最優先とするものではなく、成長投資とのバランスを意識しながら実行する姿勢が明確である点に特徴がある。
実際の配当実績を見ると、2023年3月期は1.5円の配当を実施した一方、2024年3月期は業績低迷を受けて無配とし、2025年3月期には1.0円へと復配している。2026年3月期については1.5円の配当を実施しており、業績回復に応じて段階的に株主還元を再開・拡充する姿勢がうかがえる。配当性向は年度ごとに振れが大きいものの、これは同社が形式的な配当政策よりも、実態としての収益力や投資余力を重視していることの表れと言える。
2. 時価総額100億円水準を視野に入れたエクイティストーリー
同社は現在、時価総額100億円の達成を重要な経営目標の1つとして位置付けている。その実現に向けたエクイティストーリーの中核を成すのが、「EBITDAの持続的成長」「事業承継型M&Aの継続実行」「事業ポートフォリオの進化」「株主基盤の拡大」の4つである。
第1の柱は、EBITDAを軸とした利益成長である。同社は売上高や営業利益以上にEBITDAを重要な経営指標として位置付けている。2026年3月期の補正後EBITDAは486百万円となり、2027年3月期は528百万円を計画している。経営陣は、一過性要因やM&A関連費用を除いた実力ベースでの収益力向上を重視しており、継続的なキャッシュ創出力の拡大こそが企業価値向上の源泉であるとの考えを示している。
第2の柱は、事業承継型M&Aによる成長である。同社は年間約300件の案件情報を精査しながら、厳選した案件のみを実行する方針を採っている。近年は教育、リユース、フォトなどのニューバリューセグメントを中心にM&Aを進めており、収益性の高い事業を継続的に取り込むことで利益成長を実現してきた。さらに、案件パイプラインには営業利益率15%を超える高収益案件も含まれており、今後はより大型の案件獲得も視野に入れている。事業承継市場の拡大を追い風として、M&Aが今後も成長ドライバーとして機能する可能性は高いと弊社では考えている。
第3の柱は、事業ポートフォリオの進化である。同社はコアバリューセグメントを安定収益基盤、ニューバリューセグメントを成長エンジンと位置付けている。和装・美容・ライフプラスからなるコアバリューセグメントは安定的なキャッシュ創出を担う一方、教育、リユース、フォトからなるニューバリューセグメントは高い成長性を担う。ニューバリューセグメントの売上構成比は着実に上昇しており、事業構成そのものが成長型へと変化しつつある。中長期的には売上構成比を50%程度に引き上げる方針である。また、コアバリューセグメントにおいてもインバウンド需要を取り込む和装レンタルやEC、業務委託型美容サロンなど新たな成長機会の開拓を進めており、既存事業についても進化が続いている。
第4の柱は、株主基盤の拡大である。同社は個人投資家との対話を重視しており、対面型説明会などを継続的に実施している。その結果、個人株主数は5千人台から7,600人規模まで増加している。同社は今後さらに1万人から2万人規模への拡大を目指しており、長期保有志向の個人投資家を増やすことで流動性向上と市場認知度向上を図る方針である。個人株主基盤の拡大は、機関投資家からの評価向上にもつながると同社は考えている。
このように同社のエクイティストーリーは、単なる売上成長ではなく、EBITDAの拡大を伴う利益成長、事業承継型M&Aによる事業基盤の強化、成長領域へのポートフォリオ転換、そして株主基盤の拡大を通じた市場評価の向上によって構成されている。中期経営計画「Tsunageru2027」の着実な実行により、時価総額100億円の達成に向けた基盤は着実に整備されつつあると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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