■IACEトラベル<343A>の業績動向
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比11.9%増の3,015百万円、営業利益が同24.2%増の754百万円、経常利益が同28.6%増の755百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同34.2%増の529百万円となり、売上高、各利益ともに過去最高を更新した。主力のBTMサービスがクラウド出張手配システム「Smart BTM」の利用企業拡大を背景に大きく伸長したことに加え、官庁・公務サービス及び米軍サービスも堅調に推移し、全体の業績を押し上げた。また、売上総利益は同15.2%増の2,327百万円と売上高を上回る伸びとなった一方、販管費は同11.4%増に抑制されたことから、営業利益率は前期の22.5%から25.0%へ2.5ポイント上昇し、高い収益性を維持した。
利益率改善の最大の要因は、主力のBTMサービスの拡大に伴い、「Smart BTM」の導入が想定以上のペースで進展し、手配業務やバックオフィス業務の標準化・自動化が進んだことにある。これにより、取扱件数の増加に対して人員を大幅に増やすことなく対応できる体制を構築したほか、退職者の発生に対する補充も抑制できるなど、生産性が大きく向上した。一方で、システム投資や人材育成などの成長投資は継続しながらも、費用対効果を重視した投資管理を徹底したことで販管費の伸びを適切にコントロールできたことも、高収益につながった。さらに、調達力の強化による売上総利益率改善も利益率向上に寄与している。
2. サービス別業績動向
サービス別では、主力のBTMサービスの売上高が前期比20.3%増の1,549百万円となり、全社売上の伸長をけん引した。「Smart BTM」の利用企業が順調に増加したことに加え、手配件数及び単価がともに上昇したことが増収要因となった。官庁・公務サービスは国内出張及び団体案件の受注増加により同23.8%増の333百万円、米軍サービスも国内パッケージツアー及び団体案件の受注増加を背景に同16.3%増の197百万円と堅調に推移した。また、その他サービスも保険、Wi-Fi、レンタカー等のサプライヤーコミッション増加により同29.7%増の146百万円となった。一方、個人サービスは海外パッケージツアーの受注減少により同8.3%減の403百万円、海外サービスはメキシコ子会社における法人出張の受注減少により同7.0%減の385百万円となった。
BTMサービスの好調は、新規顧客の獲得だけではなく、既存顧客における利用拡大が大きく寄与した。中堅・中小企業を中心に「Smart BTM」の導入企業が順調に増加したことに加え、従来は他社サービスと併用していた既存顧客が同社サービスの利用比率を高めたことで手配件数が増加した。また、航空券に加えてホテル、Wi-Fi、レンタカーなど周辺商材の利用が浸透したことで、1件当たりの売上単価も上昇した。同社では今後もハイヤーや旅行保険など取扱商材を拡充し、クロスセルによる単価向上を図る方針である。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期末の資産合計は前期末比883百万円増の5,774百万円となった。流動資産は現金及び預金が338百万円増加したことなどから同893百万円増の5,446百万円となった一方、固定資産は328百万円とほぼ横ばいで推移した。負債合計は、有利子負債1,000百万円を全額返済したことを主因として同551百万円減の1,484百万円となった。一方、純資産合計は新規上場に伴う資本金及び資本剰余金の増加に加え、親会社株主に帰属する当期純利益529百万円を計上したことにより同1,435百万円増の4,290百万円となった。この結果、自己資本比率は前期末の58.4%から74.3%へ15.9ポイント上昇し、極めて高い財務健全性を実現した。今後も財務の健全性を維持しながら、システム開発やAI活用、人材育成など将来の成長に向けた投資を優先する方針であり、強固な財務基盤を成長投資の源泉として活用していく考えである。
経営指標では、営業利益率が前期の22.5%から25.0%へ2.5ポイント改善したほか、自己資本比率は74.3%まで上昇した。一方、ROEは14.8%と前期並みの高い水準を維持しており、利益成長と自己資本の積み上がりがバランスよく進展したことを示している。また、現金及び預金の回転期間は6.08ヶ月となり、十分な手元流動性を確保している。
同社は自己資本比率のさらなる引き上げを目的とするのではなく、現在の強固な財務基盤を維持しながら、営業利益率の向上と生産性改善によって資本効率を高めることを重視している。また、AIやRPAを活用したバックオフィス業務の自動化を継続することで、人件費の伸びを抑えながら利益率を高める方針であり、中長期的には成長投資と株主還元を両立させながら企業価値向上を図る考えである。
■今後の見通し
2027年3月期は、取扱高・売上高・利益ともに大幅増を見込む
● 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の業績見通しは、売上高で前期比11.9%増の3,375百万円、営業利益で同19.3%増の900百万円、経常利益で同19.2%増の900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同13.3%増の600百万円を見込んでいる。取扱高は同12.5%増の30,000百万円を計画しており、営業利益率は前期の25.0%から26.7%へ上昇する見通しである。「Smart BTM」の利用企業数の拡大に加え、取扱高の増加を背景として、主力のBTMサービスの拡大を軸に引き続き増収増益を見込んでいる。エンタープライズ企業においてインハウス系から同社へ切り替える動きについても、今後さらに進むと想定される。また、売上総利益率は77.0%と高い水準を維持しながら、販管費の増加を抑制することで営業利益率26.7%の達成を見込んでいる。併せて、1株当たり配当を38円へ増配するとともに、株主優待制度を新設し、株主還元の充実も図る方針である。
同社は利益率の改善余地はなお大きいと見ている。その背景には、「Smart BTM」の導入拡大によって手配業務やバックオフィス業務の自動化・標準化が一段と進み、取扱件数の増加に対して人件費が比例して増加しない収益構造の構築が進んでいることがある。今後もRPAやAIの活用を進めることで生産性向上を図り、高収益体質をさらに強化する考えである。売上成長については、中堅・中小企業向けの「Smart BTM」導入拡大に加え、大企業向け営業体制を強化することでエンタープライズ市場の開拓を加速する方針である。また、ホテル、Wi-Fi、レンタカーに加え、ハイヤーや保険など周辺商材を順次拡充し、既存顧客における利用単価の向上を図る。さらに、KPIとして契約企業数ではなくMAU(平均月間利用企業社数)や手配件数を重視しており、実際の利用頻度を高めることで持続的な成長につなげる戦略である。
なお、同社のBTMサービス利用企業のなかで中東向け出張案件はわずかに2~30件に過ぎない。こうしたことから中東情勢などの直接的影響は極めて限定的と認識している。一方で、原油価格上昇に伴う燃油サーチャージの上昇などは注視しているものの、企業の出張コスト削減ニーズが高まる局面では、同社の低コストかつ高効率なBTMサービスの競争優位性が高まり、新規顧客獲得の追い風になる可能性があると見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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