■事業概要
(d) 国際輸送
澁澤倉庫<9304>は、通関・輸出入海貨業務、国際輸送、海上輸送、航空輸送など輸出入フォワーディングサービスや、海外現地法人による総合物流事業を行っている。また、顧客に代わってこうした輸出入手続きを行うBPO(Business Process Outsourcing)サービスも提供している。通関・輸出入海貨業務では、AEO(Authorized Economic Operator)認定通関業者として専門知識を持つスタッフや通関士を全国の主要な港と空港に配置し、日用品・アパレル・化学品・食料品・機械類など多岐にわたる貨物の通関を行っている。国際輸送サービスでは、中国・香港・ベトナム・フィリピンをはじめ、世界各地にある海外現地法人や提携代理店と連携してグローバルネットワークを構築、陸・海・空の最適な輸送モードを組み合わせた国際輸送サービスを提供している。三国間輸送や非居住者在庫など多様なニーズにも対応しており、様々な企業に対し、効率的で最適なDoor to Doorサービスを提供している。海上輸送では、NVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier)※として、コンテナ貨物・混載貨物の海上輸送サービスや複合一貫輸送サービスなどを提供している。自動車部品や化学品などベース貨物を豊富に確保しているため、コスト競争力とスケジュールの多様性が同社の強みとなっている。航空輸送では、IATA(国際航空運送協会)の公認代理店として、精密機器から自動車部品、化学品原材料、食品・イベント輸送に至るまで、幅広いサービスを提供している。
※ 船舶や航空機を持たない貨物利用運送事業者。
海外事業は同社にとって成長分野で、現在、中国、香港、ベトナム、フィリピンに現地法人を置いている。中国では自社車両や自社倉庫を保有し、上海と広州を中心に自動車など機械部品や家電品、化学品、日用品などの貨物を取り扱い、輸出入フォワーディング、流通加工、陸上・海上輸送などの総合物流サービスを提供している。広州では、香港やベトナムと華南を陸路で結ぶクロスボーダー輸送サービスも手掛けている。香港では、輸出入フォワーディングや国内需要に対応した倉庫、陸上運送サービスに加え、レストランや個人宅向けにコールドチェーン物流による日本食材の宅配事業も展開している。ベトナムでは、ホーチミンとハノイの2拠点で輸出入フォワーディング、陸上運送、保税倉庫管理といったサービスを提供している。自動車部品をはじめとするベース貨物の大口取扱数量を強みとした海上運賃のコスト競争力や、急なニーズにも対応できる輸送能力に定評がある。持分法適用関連会社では、内航船による海上輸送のほか、ベトナム全域をカバーする物流ネットワークによる総合物流サービスを行っている。フィリピンのマニラでは、オペレーション対応力と輸送スケジュール提案力を強みに、日系企業向け輸出入フォワーディングサービスのほか、日本製の食品やワインの輸入一貫サービスを提供している。最近では2025年に、バンコクに駐在員事務所を開設した。
(e) その他の物流
その他の物流として、文書保管・トランクルームサービスや引越し・家財保管サービスを提供している。文書保管・トランクルームサービスでは、都市部近隣の強固なセキュリティの施設において顧客のオフィス文書などを保管するほか、集配専用車による輸送サービスや機密文書の廃棄処理などのサービスを提供している。引越し・家財保管サービスでは、オフィスの移転作業から社員の引越し、リフォーム・建替え・海外赴任に伴う家財保管まで対応している。国土交通省の「優良トランクルーム」、全日本トラック協会の「引越優良事業者」、EMS国内規格である「エコステージ2」といった認定・認証も受けている。
(f) 情報システム
大量かつ複雑な物流を効率的に運用するうえで、高度な情報システムは大きな差別化要因となる。同社は、日付管理や在庫の一元管理などを商品特性ごとに最適化した倉庫管理システム(WMS)、NVOCC・海貨・航空貨物・通関業務の各システムを統合した輸出入荷捌き・航空貨物システム、効率的な車両運行のため全国の配車情報を一括管理する陸運配車システム、飲料専用のWMSという4つの高度な総合物流システムによって、陸・海・空ワンストップの総合物流サービスを実現している。さらに、GPS機能を活かした貨物トレースシステムなど最新機能と連携するなど、顧客の高度化する要求に対して常に最適な輸送モードや貨物管理を提供している。
(2) 不動産事業
同社のもう一つの柱である不動産事業は、長年の倉庫業によって培われた「好立地な保有資産」という強力な基盤の上に成り立っている。周辺の宅地化や都市化に伴い、物流施設から不動産としての価値が高まった物件を、オフィスビルや高付加価値な物流施設などへと再開発し、全社の強固な安定収益源として機能させている。代表的な賃貸オフィスビルには、東京の「澁澤シティプレイス(茅場町)」や「澁澤シティプレイス永代」、関西の「ドーミー三宮」などがある。
現在は、不動産事業を成長の原動力と位置づけ、不動産ポートフォリオの拡充を中核戦略としている。既存物件へのバリューアップ投資による収益性向上を図るほか、不動産専業事業者と連携した再開発事業を展開。さらに、本業のノウハウを活かした「物流不動産」の展開など、物流と不動産を融合させた新たな価値創造に注力している。また、周辺事業としてグループ会社の「澁澤ファシリティーズ(株)」が専門性の高いビル工事・管理マネジメントサービスを提供している。施設の診断や補強、更新時の各種工事(建設・設備・内装など)をワンストップで請け負うことで、利用者へ安全・快適な環境を提供し、物件価値の長期的な維持・向上に貢献している。
専門性やDX、業域拡大などに強み
3. 同社の強み
物流事業では、専門性の追求やDX、業域の拡大などを強みとしており、強みを背景に競争力の強化や収益機会の多様化、事業の拡大などを推進している。専門性の追求では、飲料や日用品などの消費財物流をはじめ、アパレルやコスメなどの多品種小ロット貨物の効率化運営モデル、さらには医療機器や危険品などの取り扱いノウハウを持つ。加えて、東名阪や千葉地区のドミナント展開により、顧客の多様なニーズに応える高い利便性を提供している。DXでは、自動搬送機や無人搬送フォークリフトなどの先進設備を導入し、マンパワーとオートメーション(自動化技術)を組み合わせたハイブリッドオペレーションモデルを構築することで、繁閑の業務量の波動に柔軟に対応し、高効率な現場運営を実現している。また、車両・配車データをデジタル化しており、車両の運行効率を高めて収益性の向上につなげている。業域の拡大では、顧客のニーズに基づき、環境対応型フォークリフトの販売や、商流機能を内包した日本食材の輸出サービス、外国人ドライバーや作業者の活用支援など、物流周辺の事業を積極的に拡大している。近年、環境負荷低減の観点から改めて注目されているモーダルシフトも同社の強みであり、フェリー輸送を事業の柱とする日正運輸(株)と鉄道輸送を柱とする大宮通運(株)の子会社2社が、顧客のモーダルシフトへの要請に機動的に対応できる体制を構築している。こうした様々な強みを活かし伸ばすことで、顧客や商材に適した柔軟で機動的な総合物流サービスをトータルで提供している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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