■今後の見通し
3. 長期ビジョン「E・J-Vision2030」の位置付け
E・Jホールディングス<2153>は、環境負荷軽減やレジリエントな社会づくり、地域課題解決と活性化に貢献する「未来型社会インフラ創造グループ」を目指した長期ビジョン「E・J-Vision2030」を2021年に策定した。その後の物価や賃金の上昇、AIの普及といった計画策定時からの市場環境の変化を踏まえて同社は長期ビジョンの位置付けをアップデートした。
「E・J-Vision2030」をゴールではなく、2032年5月期以降にさらなる成長を目指すための通過点と位置付け、既存事業の拡充を進めながら、新たなソリューションへの取り組みを加速する。成長を実現するための価値創造モデルについては、6つの資本を基盤としてそれぞれ設定した戦略的KPIの達成に取り組む。当初設定した2031年5月期業績目標(売上高500億円、営業利益60億円、親会社株主に帰属する当期純利益40億円、ROE10%以上)については、3期前倒しでの達成が見込まれることから、2027年7月に発表する第7次中期経営計画において改めて目標を設定する。
6つの資本と戦略的KPIについて見ると、価値創造の源泉となる「人的資本」については、社会課題解決型人材並びにプロジェクトマネージャーの育成・拡充に取り組む。KPIとしては、技術者数を年間60人ペースで増員し、技術士の資格取得者数を同30人以上のペースで拡充していく。
また、成長を実現していくために必要なサービス品質の維持向上、再現性を高めるための「知的資本」については、計画・設計力や運用ノウハウの標準化を進める。KPIとしては、高付加価値業務となる技術提案型業務の受注高比率40%以上(2026年5月期30.5%)、重点6分野の受注高比率67%以上(同63.1%)を目指す。「製造資本」については社会インフラを機能させ続けるための仕組みや運用基盤の構築に取り組み、KPIとして生産稼働率75~80%(同70~75%)※、売上成長率で年率5%以上の成長を目指す。
※ 有給休暇を含めた稼働率。
競争優位性の源泉となる行政・地域との信頼関係構築によって蓄積される「社会・関係資本」については、地域進行度(案件密度)の指標として都道府県及び市町村からの受注高比率50%以上(同47.8%)、地域共創事業で年間5件以上(同4件)を目指す。地域共創事業では住民サービスの向上や業務効率化の推進を目的とした技術連携協定を愛媛県の大洲市(2024年10月締結)、高知県の宿毛市(2025年11月)、越知町(同年12月)、香川県土庄町(2026年5月)と締結している。
企業存続の前提となる「自然資本」(環境価値)については脱炭素・レジリエンスに取り組んでおり、KPIとしてCO2削減量を2021年度比42%減とするほか、環境関連の事業規模50億円以上(2026年5月期38億円)を目指す。
これら取り組みの成果となる「財務資本」については、積極的な成長投資と長期的な株主還元を両立し、企業価値を高めるため強固な財務基盤を形成する。KPIとしては、ROICで10%以上(同7.1%)、フリー・キャッシュ・フローについては安定的な増大を目指す。
資本効率の向上と価値創造モデルの高度化によりPBR1.0倍以上を目指す
4. PBR向上に向けた対応方針
同社は、過去5年間にわたりPBRが0.7~0.9倍と1.0倍割れで推移している状況を重大な経営課題と捉えており、PBR1.0倍以上の回復に向けて資本効率及び価値創造構造の高度化を重視した経営へ転換する方針を打ち出した。具体的には、ROE10%以上の達成に加え、PERの向上に向けてROIC10%以上、売上成長率5%以上といったKPIを達成すべく、投下資本回転率の向上や事業ポートフォリオの最適化、成長投資と株主還元の適切なバランス(資本政策)を推進する。さらに、非財務資本の可視化を目的としたIR・SR活動を強化し、市場における成長期待の醸成を図る。
(1) ROE向上施策
a) 収益性の向上
収益性の向上施策として、重点6分野や技術提案型業務の受注を拡大していくことに加え、生産性の向上に取り組むことで、利益率を現状比1〜2ポイント引き上げることを目指す。
生産性の向上に向けてはDX推進による間接部門の効率化と、生産性改善による原価低減を推進する。間接部門の効率化では、BPOの効率的活用やAI、RPAツールの活用による省人化を図る。また、グループ会社における共通機能を集約化するため、バックオフィス機能に特化した新会社の設立も検討していく。一方、原価低減施策としては、業務プロセスの改善・刷新や、ICTやAIの活用、前提となる情報基盤の整備による生産性向上を進めていく。
b) 投下資本回転率の向上
投下資本回転率については、2026年5月期の1.0倍から1.2倍以上への引き上げを目指す。具体的施策としては、プロセスの標準化・デジタル化や、サプライチェーンの効率化による生産リードタイムの短縮化に加え、固定資産や金融資産等の見直しを通じた資産構成の最適化を図る。
固定資産については、保有不動産や設備の売却、セール&リースバックの検討を進めるほか、老朽化設備の廃棄及び省エネ設備への更新、グループ会社の拠点統廃合などを検討する。たとえば、自社保有不動産を多く抱えているエイト日本技術開発において、職場環境の向上(好立地への移転)を目的に自社不動産を売却しテナント物件に移転するといった案が挙げられる。金融資産については、政策保有株式の段階的な売却を進めるほか、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の導入によるグループ資金の最適化並びに有利子負債の縮減を進める。
(2) PER向上施策
a) 資本効率向上
PER向上に向けては、資本効率の改善に取り組む。KPIとなるROICは、2026年5月期の7.1%から10%以上への引き上げを目指す。そのため、投資規律(ROIC-WACCスプレッド目標:4%以上)を導入し、投資・撤退の意思決定プロセスの標準化と余剰資本の配分方針を明確化する。また、事業会社ごとにROICの目標を設定し、経営管理プロセスにROICを組み込み、定期的なモニタリングによって改善アクションを実行する。資本配分方針については、積極的な成長投資と長期安定的な株主還元(DOE3.0%以上)を両立させながら、健全な財務基盤を維持していく。
b) 成長性
成長性に関するKPIとして、売上成長率5%以上を掲げている。コア・コンピタンスとなる「環境、防災・保全、行政支援」のさらなる強化による重点6分野の事業規模拡大に加えて、新事業・新市場への参入や新たなソリューションの提供に向けたM&A・アライアンス戦略を進めていくことで、5%以上の売上成長を目指す。
c) 成長期待の醸成
PERの向上に向けては国内外の幅広い投資家に対する同社の成長期待の醸成が重要となる。このため、投資家との面談回数の増加と積極的な対話を通じて得られた知見を社内に浸透させ、PBR改善施策に反映するほか、財務・非財務情報の統合開示によって、投資家との建設的対話の深化を図る。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
いま読まれてます
記事提供: 
元記事を読む