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ネパール通貨の圧迫材料【フィスコ・コラム】

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未曽有の土石流災害に見舞われたネパール。先行きの経済情勢が懸念されるものの、現時点で通貨ルピーの下げは限定的です。ただ、固定相場制のため外部環境に翻弄されがちで、今年3月に就任したばかりのシャハ首相による政策運営が注目されます。

8月26日に中国との国境付近で発生した大規模な土石流で、1000人超が犠牲になったとみられます。被害の全容は把握しにくい状況ではあるものの、インフラの破壊で同国経済への影響は必至。ネパールルピーは過去最安値を更新中ですが、1ドル=152ネパールルピー台から150ネパールルピー台に持ち直すなど、8月は安値圏ながら下げ渋る値動きが目立ちます。

ネパールルピーの大きな特徴は、隣国インドの通貨に連動する固定相場制を採用していること。交換比率は1インドルピー=1.6ネパールルピーで、対ドル相場も基本的にはインドルピーの値動きに連動します。このため、今回のような国内の大災害が発生しても、ネパール固有の材料だけで通貨が急落する事態は回避できます。半面、原油高やドル高などインドを取り巻く外部環境の影響を受けやすいという特徴があります。

そのインドルピーは軟調。中東情勢の不透明感による原油高で貿易収支は悪化しており、インド準備銀行(中銀)が為替介入で凌ぐ状況です。一方、米国では物価上昇への警戒から金利の先高観が根強く、米長期金利の上昇局面ではドル買いに振れやすい地合いが続きます。原油高によるインドルピー売りと米金利を意識したドル買いが重なれば、ネパールルピーにも対ドルで下落圧力が波及します。

さらに、ネパールには復興という重い課題が加わります。経済活動に欠かせないインフラの再建を急ぐ一方、財政悪化を抑える必要も。国内で調達できない建設資材や燃料の輸入が膨らめば、貿易収支の悪化を通じて外貨流出は不可避。政府には国際機関などから低利の復興資金に加え、海外からの送金や観光収入など外貨の流入を確保し、外貨準備は潤沢でもできるだけ減らさない政策運営が求められます。

3月の総選挙を経て発足した新政権を率いる36歳のシャハ氏は、人気ラッパーでカトマンズ市長という異色の経歴の持ち主。民間の活力を引き出し、成長率を現在の3-4%から7%台に引き上げる政策を掲げていました。改革を進めながら巨額の復興費用をどう確保し、財政と通貨への負担を抑えるか。発足から半年足らずで迎えた大きな試練への対応が、ネパール経済の先行きを左右しそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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