■業績動向
(2) 「マイグル」関連
2026年6月期における「マイグル」事業では、従来の鉄道会社や商業施設向けの販促・回遊促進用途に加え、エンターテインメント領域での活用が大きく進展した。特に、LINEヤフーのプラットフォームを活用した大型IP案件やファンマーケティング領域での実績が増加しており、ギックス<9219>が掲げるパートナー協業モデルの具体的な成果が表れ始めている。
その代表例として、Netflixシリーズ『グラスハート』のプロモーション施策に「マイグル」が採用された。同施策ではLINE公式アカウントを活用したデジタルスタンプラリーを展開し、作品の世界観を楽しみながらユーザーの参加を促進する仕組みを提供した。従来のスタンプラリーは観光地や商業施設での利用が中心であったが、動画配信サービスの大型コンテンツとの連携を実現したことで、エンターテインメント分野における活用領域の拡大を示す事例となった。
また、吉本興業ホールディングス(株)の傘下である(株)FANYが運営するファンプラットフォーム「FANY」においては、LINEミニアプリと「マイグル」を組み合わせた『吉本新喜劇座員総選挙2025』が実施された。同施策ではファンによる投票や参加型コンテンツを通じて継続的な接点を創出した結果、LINE公式アカウントの友だち数が約5万人増加したほか、ブロック率も約16%改善するなど高い成果を上げた。単なるキャンペーンツールとしてではなく、ファンコミュニティの活性化や顧客接点の強化に寄与できることを示した事例として注目される。
こうした成果を受け、「FANY」では「マイグル」の本格導入が決定された。2026年2月には『オールマンゲキ翔総選挙』が開始されており、「マイグル」の投票機能を活用したファン参加型イベントが継続的に展開されている。これまでの単発キャンペーンから継続的なサービス利用へと発展したことは、同社が目指すストック型収益モデル構築の観点からも意義が大きい。
商業・ポイントサービス分野では、東急カード(株)と共同で「TOKYU POINTデジタルサービススタンプラリー」を実施した。同施策は東急<9005>グループの複数施設を横断する回遊促進施策として展開され、「マイグル」を通じて利用者の行動変容を促す取り組みである。2026年6月に公表された成果によると、キャンペーン期間中のアクティブ会員数は前年同時期比で約30%増加し、決済金額も20%台前半の伸長を記録した。「マイグル」が販促ツールにとどまらず、顧客ロイヤルティ向上や利用頻度増加に寄与することを示す事例として評価できる。
さらに同社は2026年3月、CRMに特化した新サービス「ロイヤルティ・マイグル」の提供を開始した。同サービスは、従来の「マイグル」で培ったゲーミフィケーションの仕組みを発展させたサービスであり、企業と顧客との継続的な関係構築を支援することを目的としている。具体的には、購買頻度や利用頻度が低いライトユーザーに対し、データに基づき設計されたゲーミフィケーションによるアプローチを行うことで、ユーザーとサービスとの接点を継続的に創出・拡張し、ロイヤル顧客化を促進する仕組みである。
また、利用者の行動履歴や参加状況などのデータを蓄積・分析し、その結果をAIによる自動改善サイクルへ反映することで、一人ひとりに最適化されたミッションやインセンティブなどを提供できる点も特徴である。これにより、顧客との接点を一過性のキャンペーンで終わらせるのではなく、継続的なコミュニケーションを通じて利用頻度や購買金額の向上を図ることが可能となる。同サービスは、従来のキャンペーン支援中心だった「マイグル」を、企業のCRMやロイヤルティマーケティングを支援する継続型サービスへ発展させる取り組みとして位置付けられており、同社が推進するストック型収益モデルの強化にも寄与するものと言える。
(3) M&A・業務提携・その他
2026年6月期は、事業基盤の強化に向けたM&Aや知的財産の取得、地域連携なども進展した。その中でも大きなトピックスが、2025年10月に実施したメイズの完全子会社化である。メイズはシステム開発やデータ基盤構築を主力事業としており、企業向けの業務システム開発やエンジニア派遣などを手掛けている。同社はこれまで、データ分析やAI活用を軸としたコンサルティングに強みを有していた一方、システム実装フェーズについては外部パートナーとの協業に依存するケースも少なくなかった。今回の子会社化により、クライアント企業の課題発見や戦略立案、データ分析といった上流工程に加え、データ基盤構築やアプリケーション開発、システム運用といった下流工程までグループ内で対応できる体制が整った。企業におけるAI活用がPoCから本格導入フェーズへ移行するなか、実際に業務へ組み込むためのシステム開発能力の重要性は高まっており、今回のM&Aは同社の提供価値拡大と収益基盤強化につながる戦略的な投資と位置付けられる。
また、同社はAI技術の社会実装に関する成果として、トヨタモビリティパーツ(株)と共同開発した「AI整備見積りシステム」の共同特許取得を発表した。同システムは、自動車整備工場における見積り業務の効率化と精度向上を目的として開発されたものである。従来、自動車の修理や整備における見積り作成は、担当者の経験や知識に依存する部分が大きく、作業時間や見積り品質にばらつきが生じる課題があった。同システムでは、車両情報や整備履歴・修理内容などのデータをAIが分析することで、見積り作成業務の効率化と標準化を実現している。今回の特許取得は、同社が保有するデータ分析やAI技術が実際の業務現場において具体的な価値を生み出していることを示す事例であり、今後のAIソリューション展開における知的財産面での競争優位性向上にも寄与するものと考えられる。
さらに2026年6月には、(株)富山エアポートと包括連携協定を締結した。同協定は、地方におけるAI・データ関連人材の育成や雇用創出に加え、富山空港のデータを活用した運営高度化や、空港を実証実験の場として活用した新たなサービスや事業モデルの創出を目指すものである。近年、地方においてもデジタル技術やAIを活用した地域課題解決への期待が高まっている一方、専門人材の不足や実証環境の確保が課題となっている。同社はこれまで培ってきたデータ活用やAI活用の知見を生かし、空港という地域インフラを舞台に新たなユースケースの創出に取り組む。こうした活動は、地域貢献にとどまらず、将来的な新規事業創出やAIサービスの実証フィールド確保にもつながる可能性を有している。
3. 財務状況
2026年6月期末の資産合計は、前期末比607百万円増の2,718百万円となった。流動資産は同242百万円増の2,115百万円となり、主な内訳は、売掛金及び契約資産が52百万円減少した一方で、現金及び預金が302百万円増加した。固定資産は同365百万円増の603百万円となり、主な内訳は、のれんが276百万円、顧客関連資産が49百万円増加した。
負債合計は、前期末比736百万円増の1,031百万円となった。流動負債は同324百万円増の574百万円となり、主な内訳は、その他流動負債が165百万円、1年内返済予定の長期借入金が106百万円増加した。固定負債は同412百万円増の456百万円となり、主な内訳は、長期借入金が336百万円増加した。
純資産合計は同129百万円減の1,687百万円となった。主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純損失35百万円を計上したほか、剰余金の配当を116百万円実施した。自己資本比率は59.8%と財務健全性は依然として一定の水準を保っているものの、M&Aに伴う借入の活用により、従来の無借金経営から一定の財務レバレッジを伴う経営へ移行している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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