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5年で株価10倍も。半導体向け「超純水」需要拡大で成長が見込める日本企業5社とは=田嶋智太郎

水処理を手掛けるオルガノの株価が5年で約10倍になった。半導体受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)の先端品工場の水処理を一手に手掛ける半導体関連株として注目を集める。半導体製造過程で必要不可欠な「超純水」に関わる企業を以下にあらためて挙げておく。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)

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※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2024年6月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:田嶋智太郎(たじま ともたろう)
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。

ますます需要拡大の「超純水」

水処理を手掛けるオルガノの株価が5年で約10倍になった。半導体受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)の先端品工場の水処理を一手に手掛ける半導体関連株として注目を集める。

高い技術力を武器に成長を続けるだけでなく、好不況が数年の周期で入れ替わる「シリコンサイクル」にのみ込まれにくい安定感も強みだ。業績のブレが小さいのは、水処理事業特有の事情がある。半導体の材料や装置は、シリコンサイクルで受注が大きく変動しがちだ。半面、一度半導体の工場が立ち上がると、稼働が大きく落ち込んでも、不純物除去に使う樹脂や薬品の性能を保つには水を流し続ける必要がありメンテナンスなどで安定して稼げる。

同業の3社で自己資本利益率(ROE)を比べると、オルガノの24年3月期は18.4%。栗田工業を上回るが、規模の小さい野村マイクロ・サイエンス(32.1%)に見劣りする。売上高営業利益率は、野村マイクロと同水準の約15%。工場を自社で持たない野村マイクロと同じ水準を確保するのは難しいものの、オルガノも効率化へ手を打つ。水処理システムの設計や運転管理への人工知能(AI)の活用だ。

3社は、それぞれ強みもあれば改善余地もあり、今後、各社ともにまだまだ大きな伸びしろがある。この3社をはじめ、半導体製造過程で必要不可欠な「超純水」に関わる企業を以下にあらためて挙げておく。

オルガノ<6368>

2024年末にも出荷が始まる予定のTSMCの熊本工場(熊本県菊陽町)。クリーンルームなど半導体製造を担う工場棟に接続する「CUP棟」では、電力や水が制御されている。ここで、地下水の純度を極限まで高めた「超純水」製造や排水処理を手掛けるのがオルガノである。

TSMCへの納入は2000年から。半導体の性能が上がると不純物濃度の基準も厳しくなった。最先端半導体の製造に求められる水質は、市販の分析機器の検出限界を超える。オルガノは自社開発した膜を使い、世界で初めて10ナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの微粒子の計測に成功した。

水処理システムの設計や運転管理への人工知能(AI)の活用だ。設備の設計や運転状況、顧客データなどを使って水処理プラントの計画や設計の一部自動化や、使用する薬品の注入量最適化につなげる。効率的な設計・運営を通して受注機会の広がりや、売り上げの伸びを見込める。

今期(25年3月期)の当期純利益については、前年度に円安の進行による為替差益や有価証券の売却益などが計上されていることなどから減益(前期比7.0%減)となる見通しを立てている。

オルガノ<6368> 日足(SBI証券提供)

オルガノ<6368> 日足(SBI証券提供)

株価は、今週19日に年初来高値を更新。上値は重くなりつつあるものの、下値は13週移動平均線にサポートされる格好で底堅い推移が続いている。

野村マイクロ・サイエンス<6254>

原水中の不純物を除去する前処理から超純水製造工程までを一貫して構築し、水資源を有効利用する排水・回収処理装置を提供する。

日米で半導体向け水処理装置の工事進捗、国内は製薬向けも順調。設置装置の増加につれて好採算の保守が伸びる。25年3月期は、売上高が前期比20.5%増の880億円、営業利益は同12.7%増の120億円、純利益は同8.4%増の86.5億円と過去最高を更新する見通し。

野村マイクロサイエンス<6254> 日足(SBI証券提供)

野村マイクロ・サイエンス<6254> 日足(SBI証券提供)

4月1日を効力発生非として1株を4株に分割。そこで6,370円の高値をつけ、以降は調整含みの展開が続く。昨年8月安値から今年4月高値までの上昇に対する38.2%押しの水準まで調整したところで下げ渋る動き。週足のMACDはゼロ水準近辺にまで低下してきており、反発のきっかけが待たれる。

Next: 「超純水」需要拡大は確実か。追い風にして成長が見込める企業は?

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