中小型株シリーズの第4弾です。「激安株」というテーマで良い銘柄を探してみようと思います。結論から言うと、残念ながらそれほど期待が持てる銘柄を見つけることはできませんでした。というのも、今足元では割安株に追い風が吹いていて、特に東証がPBR1倍割れの企業に対してPBR1倍割れを解消するように要請があってからは、各企業が施策を発表したり、そもそも注目が集まっていたりして株価が上昇する流れが続いていました。
そのため、企業内容が良くて激安という銘柄はなかなか見つかりませんでした。とはいえ、その中でも何かヒントになりそうな銘柄を3つ紹介したいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
スクリーニング条件
今回もマネックス証券の銘柄スカウターを使ってスクリーニングをかけます。条件は以下に設定しました。
- 時価総額5,000億円以下
- PER8倍以下
- 予想利回り3%以上(安い銘柄は利回りが高くなる、キャッシュフローに余裕がある)
- 自己資本比率50%以上
52銘柄が該当し、スターツコーポレーション<8850>、あいホールディングス<3076>、新日本建設<1879>など、割安株に投資している方には馴染みの銘柄かと思います。
「オーナンバ」
1つ目に紹介するのはオーナンバ<5816>という配線システムメーカーです。
売上の大部分はワイヤーハーネス(配線設備)が占めていて、その中でも自動車用のワイヤーハーネスが多いようです。
一般的なメーカーだと思いますが、PER4.9倍とかなり低く、利回りは5.1%と高くなっています。
業績を見てみると、赤字にはなっていなくて、直近で営業利益は大きく伸びている状況です。
業績と合わせてすぐ見るべきものがキャッシュフローです。
フリーキャッシュフローがプラスで推移していることが望ましいです。フリーキャッシュフローがマイナスだと、仮に利益が出ていても実はカツカツで自転車操業の状態という場合があります。
キャッシュフローは比較的にはプラスで推移していますが、少し物足りないところではあります。
気になる点は、業績が一気に伸びていることです。
PERが4.9倍と非常に低いですが、このPERを算出する際に用いられる利益が一時的に高くなっているだけなのではないかとも考えられます。
なぜ利益が伸びたのか、決算短信を見てみましょう。
大きな要因は、製品価格の改定ということです。
よって、この利益の向上は一時的なものではなく、割と恒常的なものと考えられます。
継続が難しいような無理のある業績ではないようです。
ただし、コロナ禍の半導体不足で自動車が作れなかった頃からの反動増ということが考えられ、PER4.9倍を額面通りに受け取るわけにもいかない部分もあります。
しかし、製品価格の改定が進んでいるので、そこまで不当に利益が高いということもないというところです。
株価の推移を見てみると、業績が一気に伸びた分、株価も上がっています。
価格の改定はあったものの、これ以上の業績の向上は見込みにくいということで、足元では株価が停滞しています。
今期の業績予想を見ると、経常利益よりも当期純利益の方が大きくなっています。
経常利益から税金等を引いたものが当期純利益なので、普通は経常利益よりも当期純利益は小さくなります。
これが逆転しているということは、この数字をそのまま受け取ることはできないということです。
利益水準が昨年と同じくらいなので、純利益も昨年程度となると考えられ、それを元にPERを割り出すと、7.4倍くらいになります。
割安ではありますが、大きく割安というわけでもないという数字です。
過去のPERは8~10倍で推移していて、それと比べてもそこまで割安ではなさそうです。
自動車用のワイヤーハーネスがメインということで、今後電気自動車化でどうなるかということはありますが、自動車用製品は今PERは低い水準に抑えられていて、オーナンバが特に割安というわけではなく、悪い銘柄ではないものの今投資する理由も見いだせないというところです。