いま安くなっていると考えられる中小型株の中から、次の「スター銘柄を探そう!」というシリーズの第2弾です(第1弾はこちら)。何から手を付けるか考えた時に、まずは上場して間もない企業から探してみようと思いました。そんな企業によく起こることが、「IPOセカンダリー」といって、上場直後は人気が出て大きく株価が上がるのですが、その後だんだん飽きられて株価も下がり、企業としても成長力が無くなってしまうことがあります(通称・上場ゴール)。
この「上場ゴール」を乗り越えてさらに進化していける企業というものはある意味で“本物”である可能性があります。IPO後に株価が下落したところから復活できれば、その時の株価の上昇力は非常に大きくなります。今回はコロナ後(2020年以降)に上場した企業の中から、面白い企業を探してみたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
スクリーニング方法
上場して間もない企業を、マネックス証券の銘柄スカウターを使ってスクリーニングします。
スクリーニングをかける際にはマネックス証券の10年スクリーニングが便利です。
他のスクリーニングは株価の指標に絞ったものが多いですが、マネックス証券の銘柄スカウターでは業績等でもスクリーニングができ、なおかつこの10年間での増益回数・増収回数、あるいは1年あたりの増収率・増益率といった指標でもスクリーニングできるので、目先だけでなく長期の動きも見られて大変重宝しています。この銘柄スカウターはマネックス証券に口座を開けば無料で使用することができます。
スクリーニングの条件は以下のようにしました。
- 時価総額100億円以上(1000億円未満はさすがに小さすぎるため)
- 上場年数4年以下
- 連続増収年数3期以上(IPOしたてで売上が減っているのは論外)
- チャートの形状に成長を感じられる(これは感覚の問題です)
こうやってスクリーニングをかけたところから、3銘柄をピックアップしました。
「サンウェルズ<9229>」、「ライフドリンクカンパニー<2585>」、「グローバルセキュリティエキスパート<4417>」の3社です。
なぜこの3社になったかというと、業績を中心に考えたからです。
私の場合は、まず赤字企業は除外しています。
もちろん現時点で赤字だからといって伸びないわけではありませんが、やはり黒字が出ていないと財務的な余裕がないと将来に向けて適切な投資や布石を打つことが難しくなってきます。
業績は、売上と利益の両方が伸びていることが大事です。
上場後に売上は伸びているが利益が減っているという場合もあって、これは上場する時に業績を良く見せようとして費用を後ろ倒しにしている(上場時の業績のお化粧)可能性があり、投資先として適切ではないと言えます。
また、IPOに向けて多くの人を採用して規模を大きくして業績を上げている企業もありますが、そういった企業の成長はどこかで止まってしまうので、力技ではなくビジネスモデルで稼いでいる企業を選ぶようにしています。
総じて、“上場がピークではない”ということが条件となります。
介護施設運営会社「サンウェルズ」
サンウェルズは介護施設運営会社です。
ただし、普通の老人ホーム運営ではなく、パーキンソン病専門の有料老人ホームを運営しているということです。
パーキンソン病の患者さんは全国で15万人以上いて、やはり高齢者に多いということで、今後高齢社会が進行する日本においてニーズは溢れていると考えられます。
普通の有料老人ホームだと競合も多く、価格競争に陥ってしまいますが、パーキンソン病専門ということで大々的に行っている企業は他にはあまりありません。
特殊な病気に対してはやはり特殊なノウハウが必要となります。
そのノウハウをいち早く獲得して展開していくということは、現在の15万人に対してかなり強いニーズを生むと考えられます。
有料老人ホームは施設や介護士さんに投資する必要があり、利益率はそれほど高いというわけではないと思います。
収益の大部分は介護保険から払われるところもありますが、営業利益率で16%くらいとかなり高くさらに向上しています。
これからさらに多くのホームを建てて、全国の入居を待っている方に届けようとしています。
少なくとも、ホームの数や入居者の数が増えるという状況はしばらく続くと思われます。
キャッシュフローを見ると、投資キャッシュフローが大きくマイナスになっていて、まさにホームをどんどん建てているということになります。
ある意味でそれに対する勝算があるのだろうと思われます。
もちろんリスクとして、ホームを建てても人が入らないとどうしようもない部分や、競合が出てくることも考えられますが、少なくとも現時点では競合はほとんどなく、ホームは足りていない状況なので空室リスクもかなり低いと思われます。
将来的な成長を考えると、パーキンソン病だけだとアップサイドがあるかもしれませんが、できるなら他の難しい病気でもノウハウを蓄えてそれに関する老人ホームを展開するという動きも考えられ、拡大余地もあります。
改めて業績を見ると、非常に大きく伸びています。
これがしばらく続くのであれば少なくともその間は株式市場で注目が高まるのではないかと思われます。
いまPERが30.3倍と高いように見えますが、成長性を考えるとそこまで高くないと感じられます。
リスクとしては介護保険制度がどうなるか分からない点です。
介護保険が抑えられてしまうということになると収入が減ることになってしまいます。
しかし、ニッチなところに特化していて、簡単には真似されない強みを持っているので、力技でなくても伸ばせる可能性を十分に持っていると感じられますし、利益を蓄えられればその利益を次の成長に使う流れを作ることができると思います。
ただ、PERは30倍あり、今売られている中小型株から探すという意味ではそこまで安くもないということも事実ではあります。
株価を見ると、上場してから下がっているわけではないです。
良い企業だと思いますが、上がりすぎていることもなさそうなので、仕込み時としては悪くないのではないかと思います。