ほら、見たことかTPP。米国離脱宣言で万策尽きたアベノミクスの末路

 

手順前後は敗着に繋がる

野田も安倍も、慌ててTPPに飛びつくべきではなかった。ではどうすればよかったのか。私に言わせれば答えは明白で、鳩山政権が示唆していたような「離米入亜という外交姿勢の明治以来の根本的な転換をベースに、

  1. まずは「日中韓FTAを優先する。この3国は数千年の歴史を持つ東アジア「稲作漁撈文明」の担い手であり、その文明的基盤にしっかりと踏ん張った農業・漁業、さらにまた林業のあり方を世界に誇れるものとして発展させていくことを軸として、国境を超えた共同のあり方を探究する。
  2. 次に、その東北アジアの3国共同を背景に、東南アジアのASEANと連携してRCEP(東アジア地域包括的経済連携)を推進し、アジアの実情に応じた緩やかな自由貿易体制の形成にイニシアティブを発揮する。
  3. そうやって「アジアの論理を確立した上で、米国主導のTPPやEUとの経済連携協定に、落ち着いて、是々非々で、対処する。

──ということである。勝負ごとでは「手順前後」に陥らないことが何よりも大事で、1つ1つの手を取り出せばそれも悪くはないし、その場面ではそうするしかないのかなと思えるような手でも、もっと大局から見れば、「あ、それをするなら、先にこちらを動かしておいてからその手を打てばよかったのに」ということがしばしば生じて、その手順前後が敗北の原因となったりする。

その意味で、トランプ登場でTPPが潰れたのはまことに喜ばしいことで、安倍のようにその遺骸にすがりついて泣き叫ぶなど以ての外、野田に始まる戦略的な錯誤によるドタバタの連鎖を一旦全部清算して、アジアと日本の実情を踏まえた、人々の幸せに繋がる自由貿易体制の追求にじっくりと取り組むべき時である。本当は、民進党がそういう、それこそ提案型の、戦略論を打ち出して論争を展開すべきだが、野田が幹事長ではどうにもならない。

image by: 首相官邸

 

高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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