「アニメに描かれた未来」を16年前に考察。何が実現していたか?

2017.03.31
 

コードレスも難しい側面がある

結果論的ではありますが、意外に正解なのかもしれないなと思ったのが、公衆電話のコードです。かつて月刊アニメージュの表紙(1983年7月号)を飾った早瀬未沙の名画も、コードつき公衆電話でした。

ご存じのように、公衆電話には、今でもコードがついています。現在、無線LANの帯域を使った新しい無線技術「Bluetooth」が登場しており、パソコンとその周辺機器を中心に、近距離でコードで結ばれているものをどんどん無線化しようとしています。これを使えば、カールコードレスが従来よりも簡単に出来るようになります。だが、そうなったとしてもおそらく公衆電話のハンドセットはずっとコード付きでしょう。

それは技術屋的発想で考えれば、カールコードレスにしたハンドセットを公衆の場に置くことを想像したとたん、たちまちいくつもの問題が即座に脳裏に浮かぶからです。ハンドセットへの給電と充電をどんな手段で確保するか、電池切れのときにはどうするのか、電波の帯域の空きが常時確保できるか、通話品質は保証できるか、信頼性や耐久性は無線化で劣化しないか──家庭での使用では問題にならないことが、公的なものになったとたんに急速に課題となり得るわけです。こんなテーマが山積みの上に、最大の問題である「盗難をどう防止するか」が、どうしても解決できないと思います。

携帯電話がこれだけ発達し、公衆電話の数そのものが減りつつある現状、誰も望んでいないのに、わざわざこの困難を乗り越えてカールコードレスにするわけがありません。

唯一考えられ得るのが、ユーザが持つ自前の無線のヘッドセット(ヘッドホンにマイクが付いたような機械)をつなぐ、という接続形態です。現在でもデータ通信用に赤外線(IrDA)がついた公衆電話がありますから、時間の問題でデータ通信ユーザ向けに、ブルートゥース・インタフェース付き公衆電話も登場するでしょう。ブルートゥースの規格の中には、ヘッドセット・プロファイルというものもありますので、そうなれば技術的にヘッドセットを認識させて通話することは、できないことではありません。

とは言うものの、これとて認識、認証をどうするかという制度的な問題から、そもそもカバンの中からゴソゴソとマイ・ヘッドセットを出して公衆電話で通話なんかする気になるか? という心理的文化的問題まで障害は無数にあって実現困難なのには、かわりはなさそうです……。

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