「アニメに描かれた未来」を16年前に考察。何が実現していたか?

2017.03.31
 

腕時計型通信機は逆に現実に近いが…

このように、電話のコード1本とっても、ついているかいないか、その描き方が未来予測的に合っているのかいないのか、論じることは非常に難しいわけです。ことにこれだけ技術が発達して、ふとした組み合わせがブレイクスルーをもたらして生活を変革する可能性が大きくなったこの時代、未来を舞台にしたSFアニメをつくるのは、本当に大変ですよね。と、他人事みたいに言ってはいけませんが……。

そういう考えをめぐらせていると、面白いことにも気づきました。

昨年の暮れに、NTT docomoがアニメや特撮を題材にした広告を打ちました。そこでは、『スーパージェッター』のタイムストッパーや、『ウルトラセブン』のビデオシーバーなど、腕時計型の通信機の映像が引用されていました。現実世界の携帯電話の世界が、その夢に迫っているというイメージ広告だったのです。

ここで引用された作品の大半は60年代中盤から後半、高度成長社会の夢を託して生まれたものです。そのはるかな未来の産物と思われたものは、現実に近づいています。ところが、マクロスのような作品では、ジェッターやセブンよりもあとの時代に作られた作品なのに、腕時計型通信機のようなものは登場していません。当時の視聴者により親近感とリアルな感じをもたらすために、排除されたのでしょうか。

それで未来像としては、結果的にかえって現実とのギャップが出来てしまい、35年前の未来像の方が20年前のものより近いという現象が発生した──これはいったいどういうことなんだろう、と思ったのです。

しばし「アニメの描いた未来」についていろいろ考えてみるのも、面白そうですね。

《付記》技術的にはいろいろズレが生じましたが、当時の雰囲気ということで。Bluetoothは予想どおり、普及にかなり時間を要しました。

image by: Shutterstock

 

氷川竜介

氷川竜介

この著者の記事一覧はこちら

1958年兵庫県生まれ。アニメ・特撮研究家、明治大学大学院客員教授。東京工業大学卒。文化庁メディア芸術祭審査委員、毎日映画コンクール審査委員などを歴任。日本SF作家クラブ会員。海外での展示会・映画祭での講演経験多数。文化庁向けに「日本特撮に関する調査報告書」「日本アニメーションガイド ロボットアニメ編」を執筆。主な編著、参加書籍:「20年目のザンボット3」(太田出版)、「世紀末アニメ熱論」(キネマ旬報社)、「アキラ・アーカイヴ」(講談社)、『細田守の世界――希望と奇跡を生むアニメーション』(祥伝社、2015年)、「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989」(国書刊行会)など。

まぐまぐの新サービス「mine」の記事一覧ページはこちら

print
いま読まれてます

  • 「アニメに描かれた未来」を16年前に考察。何が実現していたか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け