一般的に、学校内の「いじめ」のキッカケは子どもたち同士によるものというイメージですが、中には保護者が主導して発生するという、信じがたいケースもあるようです。現役探偵として多くの「いじめ」問題を解決に導いてきた阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんは、自身のメルマガ『伝説の探偵』最新号で、ある小学校で起きた「保護者主導」によるいじめ事件を解決した際の顛末を明かしています。その解決方法は、阿部探偵ならではの独特な手法によるものでした。
保護者主導型のいじめ被害について
概要
小学6年生のA君は母子家庭の長男である。
A君には小4の妹と小2の弟がおり、両親の帰りが遅い時は、食事の面倒やお風呂へ入るように言うなど妹と弟の世話をよく見ていた。
この地域に、区などが助成して「子ども食堂」ができたのは2017年のことである。
そこそこ有名なNPO法人が管理し、学生らがボランティアスタッフなどで入って学習支援も行うというシステムで、場所は一般には非公開とされていた。
それは、所得など一定水準以下の家庭に対してのものであるからで、区政は、この「子ども食堂」に通う子供らが差別の対象となったり、いじめの対象となることを避けるという考えがあった。
私はこの「子ども食堂」の場所はできる前から知っていたが、ちょっとでも関わる者なら容易に知ることができる箝口令は無意味だし、恵んでやっている感を区政が内実持っていることはミエミエだと苦言を呈したことを覚えている。それからは、何を意見しても露骨に無視されたので、耳障りな意見は受け付けない体質なのだと思い、早々に引き上げさせてもらった。
A君は「子ども食堂」に行くくらいなら、家でカップ麺でもススっていた方がいいという考えの持ち主であったが、学習の支援を受けられることや下の子の面倒も見てもらえるなどから、この「子ども食堂」に時折顔を出していた。
この様子を、弟のクラスメイトの母親らが見かけ、何を思ったか、使いかけや買ったけど使わなかった鉛筆を弟にくれたそうだ。この際、「あのご家庭は母子家庭で低収入なのに、子供をぽこぽこ産んでしまっているから大変なのよ」などなどクラスメイトの母親らが有ること無いこと話したせいで、弟はみんなの目がストレスになるという趣旨のことを言い、塞ぎ込んでしまった。
これに腹を立てたA君が、この母親らに鉛筆を返したことで、「せっかく恵んでやったのに、なんなの!!」となった。学校では、「ナマポ」と呼ばれるようになり、小4の妹は、水を何度も掛けられるといういじめ被害にあった。
「ナマポ」とは、「生活保護受給」の差別的略語で、「生」を「なま」、「保」を「ぽ」で繋げている。到底小学生が知る用語ではないだろう。