「もうゆるして」結愛ちゃん虐待死で探偵が見抜いた一家の真実

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死亡した女児が遺した、ひらがなだけのノートが日本中に衝撃を与えた「目黒虐待死事件」。多くの虐待問題を解決に導いてきた、現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんは、自身のメルマガ『伝説の探偵』で、報道前に阿部さんが把握していた今回の事件の背景と、過去の虐待の事例などを分析しつつ、これ以上同じような被害を増やさないために、行政、児童相談所、民間企業、そして私たちができることについて提言しています。

「もうおねがいゆるしてゆるしてください」探偵が知っていた、目黒虐待死事件の背景

ママ、もうパパとママにいわれなくてもしっかりと じぶんからきょうよりか もっともっとあしたはできるようにするから もうおねがいゆるしてゆるしてください おねがいします ほんとうにもうおなじことしません ゆるして

きのう ぜんぜんできてなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす
これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめるので もうぜったい ぜったいやらないからね わかったね ぜったいのぜったいおやくそく あしたのあさは きょうみたいにやるんじゃなくて もうあしたは ぜったいやるんだぞとおもっていっしょうけんめいやって パパとママにみせるぞというきもちで やるぞ

船戸結愛ちゃん(5歳)は、ひらがなの練習帳に、そう記していた。

これを読んだ関係者はみんな涙し、なぜ救えなかったのか?そう世間に訴えかけている。

事件の概要

東京目黒区のアパートで、船戸結愛ちゃん(5歳)が虐待により3月2日に死亡した。死因は、肺炎による敗血症であり、継父である船戸雄大、実母である優里は警視庁に逮捕されている。

もともと、香川県善通寺市に住んでおり、この時から児童虐待があって一時保護を受けていたが、2018年1月に目黒区へ転居した。各種報道によれば、2016年に県の児童相談所が虐待を通報により認知、簡易の経過観察となったが、同年9月に雄大氏と優里氏の間に子が誕生したことで、より観察すべきということになっている。2016年12月に結愛ちゃんが一人で歩いているところを香川県警が保護し、児童相談所が対応、医師の診断では日常的な身体的虐待があるとされた。

その後、一時帰宅するも再度保護されるが、条件付きで一時保護は解除された。児童相談所では、結愛ちゃんが怪我をしていることや継父である雄大氏から殴られたり蹴られたりするという報告があったものの、保護者はやっていないよく嘘をつくようになったなどと否定していた。

そして、2017年末頃になると、東京へ引っ越すと保護者らは言うようになり、転居先などを児童相談所など関係先には頑なに明かさなかった。重大な事案であるため、転居先を調べ、目黒区を管轄する品川児童相談所に連絡し、すぐに家庭訪問で結愛ちゃんに面会するよう求めたが、当の児童相談所は保護者に拒否されたことを理由に、何の措置も講じなかった

2018年1月頃から雄大氏の暴力は酷くなり、食事なども十分には与えなかった。母親は自分に累が及ぶことを恐れ、見て見ぬ振りをした。

2018年3月2日、病院に搬送された時は、死亡が確認されたのみであった。結愛ちゃんの身体には複数の痣などあり、5歳児の平均体重20キロに対し、12キロしかなかった。また、自ら立ち上がることもできないほどであり、オムツを履いていた。

児童虐待

児童虐待について児童相談所が対応した統計を見てみると、平成28年度でおよそ12万件、最も多いのが心理的虐待のおよそ6万3千件となるが、身体的虐待およそ3万2千件、育児放棄などのネグレクトおよそ2万5千件、性的虐待およそ1600件となっていて、年々増加傾向にある。

また、警察の発表を見てみると、こうした児童虐待で逮捕となるのは年1000件ほど、被害児童はおよそ1100人で、60~70人が死んでいる

結愛ちゃんの継父であり今回逮捕起訴されている雄大氏は、各報道機関によれば、目黒区に引っ越す前にいた香川県当時、結愛ちゃんへの暴力で2度逮捕されているそうだが、2度とも不起訴処分、つまり無罪放免となっている。

つまり、警察に逮捕されたとしても、検察の段階で不起訴となる事例があるということだ。

私は20代前半から児童虐待についての問題で、救助活動を行ってきており、T.I.U.総合探偵社は、子供のいじめ無償調査をいろいろ取り上げてもらい、少しは世間の方々に知ってもらうところになってきたが、発足当初から「児童虐待についての調査及び救助に関する活動」は、私のライフワークでもあることから、無償対応枠を持っている。

だからこそ、児童相談所や地域行政の怠慢対応、司法判断の甘さ、そして再発した時の卑劣さ、虐待事件を起こす保護者の背景についての問題や親権の強さを身に染みるほど感じている。

そして、世間や大人社会がこの問題に熱し易く冷めやすい傾向があることも知っている。

頭でっかちで、お上がやってくれる精神の大人たちが、児童相談所が動いてくれる、そういうシステムになっている、親権の停止や分離も要件を満たせばできると、現場の問題や虐待を行う保護者が激しく抵抗してくることも知らずに立派な顔をして薄っぺらい知識をひけらかすのを何度も見てきた。

あるSNSで救いを求めた子を何とか救おうと動いた時、保護者が激しく抵抗してくることが予測され、児童相談所が機能しないことが見えていた時、私が民間の活動団体の支援を求めたおり、現実を知らない大人たちに大批判と吊し上げをされたこともある。

”十数年もこの問題をやっている人間として知識が無さ過ぎる。”

”探偵ごときが何ができる結局金だろ?”

結果、彼らが児童相談所(以下「児相」という)に通告、児相から保護者に問い合わせ、1ヶ月の軟禁状態となった少女は、私と私が支援を求めた民間の活動団体による呼びかけにより近隣住民が警察に通報してくれたことで、保護された。

私が知る限り、児童虐待についての現場をよく知る活動家は多くはないし児相が積極的に動くなどということは無い

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