向かう方向は同じ、争うより協力しあえ
今年7月、岐阜市の中学3年生の男子生徒がいじめを苦に自殺した問題においては、激しい暴力があり、和式便器での土下座、金銭の要求など数々のいじめ行為が発覚している。
こうしたいじめについて、女子生徒が担任教諭に手紙(メモ)を渡し、知らせたが、このメモは加害生徒らに担任教諭が見せており、その後女性生徒への嫌がらせにも発展している。そして、このメモがこの担任教諭により廃棄されていたことも問題になっている。
この問題で、被害者にそれでも学校に行きなさいと言える大人はいるだろうか?学校に行かないことで、将来の可能性が減り、成績が落ちるとか、内申点が悪くなるから行けという大人はいるのだろうか?むしろ、学校に行かない方が良いのではないかと思うだろう。一方で、加害生徒らには、そんなことをするなら、学校に行くなよと思うだろう。
つまり、いじめ加害者には適切に出席停止を行い、「いじめをするなら学校に来るな」というのはメッセージとしては正しいと私は思うのだ。同時に、いじめ被害を受けて、学校に行くのが辛い子には、現実問題として、出席停止などの措置は実現されないことも相まって、学校に行かなくてもいいと声をかけるのも正しいと私は思うのだ。
付け加えるとすれば、いじめはなかなか見えづらいものだから、「いじめに対応するためにも、いじめの事実を話してくれないか」というメッセージだ。
どちらも同じ方向を向いているが、そのプロセスが違ったり、ディテールが違うことで対立しやすくなってしまうということは、歴史を見ても起こりやすいことだろう。
だからこそ、いじめから子どもを解放していこうという気運はメッセージ性の違いだけで対立してはならない。
なぜなら、今まさにいじめで苦しんでいる子は無数にいるからだ。問題解決には理想も必要だが、今そこにある脅威から子どもを守らなければならないのだから。
編集後記
平成29年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」(文部科学省初等中等教育局児童生徒課)によれば、いじめで金品をたかられるは、「4,896件」内、小学校は「3,575件」と最多となっています。嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりするは、「3万1,351件」と、大変な状況になっている事がわかります。
いじめの認知件数は、平成30年度「54万3,933件」と過去最多となっています。
こうしたデータはインターネットでも閲覧する事ができますので、できれば多くの大人に見てもらいたいです。特に子育て世代には必見ではないかと思います。
多くの被害の保護者は、我が子がいじめられて被害者になり、そこではじめて学校や教育委員会の対応を知ります。あまりの酷さに言葉を失う人も少なくありません。
我が子は大丈夫、うちの子が行っている学校は大丈夫、という根拠なき信頼が、保護者のチェック機能を鈍らせていたのかもしません。
これからしばらくすると、学生は冬季休暇(冬休み)に入ります。そして年が明ければ、すぐに新学期がやってきます。
子どもの自死に関するデータによれば、こうした長期休暇後の休み明けやその前日での数は突出して多いと言えます。
我が子のみならず、近所や地域の子も、最悪の事態が起きないようによく観察しよくコミュニケーションをとって頂ければと思います。
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image by: DPeterson / Shutterstock.com