大人スイーツ「バスク風チーズケーキ」が日本で大ヒットした理由

 

バスク風チーズケーキは、これまでのチーズケーキとは異なる特徴を持っている。表面はこんがりと焼かれていて、中が濃厚なプリンのような独特な食感を持つ。つまり、表面はベイクドチーズケーキよりもっと焦げるくらいにまでよく焼かれ、中はレアチーズケーキよりもっととろけるのだ。プリンみたいにカラメルやメープルシロップをかける食べ方、岩塩を付けて旨みを引き立てることもよく行われている。

バスクとは、スペイン北部とフランス南西部にまたがるビスケー湾に面した地域を指し、独特の文化、言語を持っている。そのバスク地方のスペイン領にある、美食の街で知られるサン・セバスチャンという都市で誕生した、ユニークなチーズケーキが、いわゆるバスク風チーズケーキだ。バスク風チーズケーキは日本での名称で、現地では「タルタ・デ・ケソ(チーズケーキ)」、欧米では一般に「サン・セバスチャン チーズケーキ」と呼ばれているようだ。

サン・セバスチャンは人口20万人ほどの中都市であるが、スペイン有数の観光地であり、ミシュランの星付きレストランが3つ星を含めて十数店、集まっている。1平方メートルあたりの星の数では、京都に次ぐ世界2位の都市という。また、旧市街には庶民的なバル(酒場と食堂と喫茶が一体になったような店)が軒を連ねる。立食パーティーでよく提供される、爪楊枝や串が刺さったパンに少量の料理を乗せた一口おつまみの「ピンチョス」は、サン・セバスチャンが本場とされており、はしご酒文化の産物である。

このチーズケーキは、元々はそのバルの名物料理で、ワインなどのお酒にも合う大人のデザートであった。串こそ刺さっていないが、今では小皿料理全般が広義にピンチョスと呼ばれているので、その一種と考えても良いだろう。

さて、日本でバスク風チーズケーキを初めて販売した店は、東京都小金井市の洋菓子店、シュークリームが名物の「オーブン・ミトン」と言われている(「日経スタイル」2020年1月19日付『大ヒット「バスチー」 本場バスクではバルの名物』参照)。2013年クリスマスシーズンの新作であった。

オーブン・ミトン外観

オーブン・ミトン外観

パティシエの小嶋ルミ氏は、同年夏にサン・セバスチャンを訪問。現地のバル、レストラン、菓子店を視察する中で、バスク風チーズケーキ発祥の店、バル「ラ・ヴィーニャ」の提供する商品に目を見張り、日本でも当たると直感した。焦げ目のある表面と、中のレアっぽさのコントラストが新鮮だったからだ。

現地在住で地域の食事情に精通する女性から教わったレシピをベースに、焼いたが、小麦粉はつなぎ程度にしか使わず、大半がクリームチーズと砂糖だけという、チーズケーキの常識を覆すレシピだったので困惑した。

味も、日本人には甘過ぎると感じたので、全卵と卵黄をプラスしてコクを出し、砂糖の量を減らした。

試行錯誤の末に、オーブンで高温にて短時間焼く製法で、表面にカラメルができて、中はとろける、日本のバスク風チーズケーキが完成した。それを当初、「バル風チーズケーキ」と命名して販売したのだ。そのネーミングには斬新なチーズケーキを生み出した「ラ・ヴィーニャ」へのリスペクトが表わされている。

同店では、湯煎焼きのニューヨークタイプ「オリジナルチーズケーキ」も販売しており、2種類のチーズケーキを味わい比べることができる。

オーブン・ミトンのバスク風チーズケーキ(左 496円、税込)、オリジナルチーズケーキ(右 432円、税込)

オーブン・ミトンのバスク風チーズケーキ(左 496円、税込)、オリジナルチーズケーキ(右 432円、税込)

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