あのイチローも。成功者になるパターンは2通りしかない納得の訳

 

いまやハリウッドスターKEN WATANABE。渡辺謙さんも“こっち”側な気がします。開拓者、元ロサンゼルス・ドジャーズの野茂英雄さんも、こっちの「シナリオ通り成功者」かもしれません。「シナリオ通り成功者」というと、まるで努力をしていなくて、才能だけでやってこれた、と聞こえるかもしれませんが、そうではなくて、「長期間に渡る圧倒的な努力を継続してできる、という才能を持っている人」のことだということは、前述しました。

渡辺謙さんや、NOMOさんは、先にシナリオがありました。自分に才能があるかないか、自分に運があるかないか、は関係なく、人生のシナリオを描く時点で「ハリウッド・スター」に「メジャー・リーガー」になると書き込んでいた。結果論ではない、ということです。ハリウッドスターになるための、メジャーリーガーになるための、とてつもない努力を、とてつもない意志力で可能にした人たち、という意味です。

トム・クルーズさんにインタビューした際、彼はこう言いました。「道なき道を僕は進む」と。つまり、誰かを前例にしたいとは思わない、と。確かに、長いハリウッドの歴史で30年以上トップを取り続けたスターは歴史上、彼しかいない。前例のない道を歩む意志力は常人では測れません。

飛行機に実際に張り付いたアクション映画を撮った直後、ヘリコプターのライセンスを取りに行き、次は戦闘機を実際に操縦する作品を撮る。今度はプロデューサーとして、NASA協力のもと、史上初の宇宙で撮影すると言います。。。果たして、そのエッセンスは参考にできても、その生き方、成功への道を僕たちは、そのまんま真似できるでしょうか。リアルな参考になるでしょうか。

今挙げた人たちは、間違いなく、規格外。天に愛された人たちです。圧倒的な努力を努力と思わない、思えない、選ばれた人たちだと思うのです。

北野武さんにインタビューした時のことです。六本木のテレビ朝日の楽屋で、収録と収録の合間に、45分ほどお時間を取って頂きました。たけしさんは、僕の憧れの人。インタビューしている最中に「これ…夢かな」と思った唯一の人でした。

取材が終わって収録用のレコーダーを切った後に、予定されたスタジオ収録が遅れています、とマネージャーさんが入ってきました。帰り支度をする僕の横に、予定外に時間の空いたたけしさんはトコトコ歩いて来てくださり、その場で、立ち話をしてくださいました。その立ち話の内容が、僕の今までのインタビュー生活の中で、もっとも印象に残る話のオンパレードでした。

でもレコーダーは切った後、さすがに、再び録音していいですか?と聞ける空気じゃありませんでした。それに、あくまで取材が終わった後の、世間話で話してくださっていること。これが仕事となると、また内容が違ってくるかもしれません。なので、ここは、たけしさんが出している「ここだけの話」という空気を共有して、一言一句、聞き逃さないようにグッと集中しました。

内容は、3つの話。
1つは、「品」というものに関して。人間の本当の意味での「品格」について。そして、1つは、ズバリ「人生」。結局、理想の人生像なんて幻想だよな、という話。はっきり言って、この2つの話だけで僕は1冊、本が書けると思っています。今だって、いつだって、この2つの話を思い出します。ただ、この話は、今回のテーマとは違うので、また別の機会に。

話を戻します。今回、触れたいのは、たけしさんが聞かせてくださった、3つ目の話。これは話というより、ごくごく短い、ある一つのセンテンス。確か、映画を撮る際についての内容だったと思います。彼はこう言いました。
「結局さ、キャンスイムじゃダメなんだよね。スイムじゃなきゃ、ね」と。…Can swim? 泳ぐことができる?swimが上?ん?正直、その時はその言葉の真意がよくわかりませんでした。でも、目の前にあのたけしさんがいる。僕はインタビュアーの本質も忘れ、それだけで満足して、結局、その言葉の真意を問い直すことはできませんでした。「ハイ! ハイ!」としか言えず…。

で、それから数年後。ある別の人物にインタビューした際に、翻って、このたけしさんのセリフを思い出し、「ああーーーー!!!そう言うことか!!!!」と気づいたのでした。確信したのでした。この言葉の意味を。その人とのインタビューの帰り道、実際に、6thアベニューの57丁目の、信号待ちの時に、「ああーーーー!!! そう言うことか!!!!」と声に出して言ったことを覚えています。

その人とは、日本音楽史上最大のカリスマ、X JAPANのYOSHIKIさん、でした。僕はYOSHIKIさんに過去4回、単独インタビューをさせて頂いています。冗談で、「北米の専属インタビュー」と言ってくださったこともあります。

その3回目のことでした。ご宿泊しているホテルで取材を終えた帰り道、過去の2回の取材のことも思い出していました。YOSHIKIさんは、毎回、毎回、こちらがシビれるワードを投げかけてくれます。その中でも1回目、2010年の10月にした単独インタビューがいちばん印象深いものでした。

その1回目は、コンサートで数千人のニューヨーカーを熱狂させてその翌日、でした。その際、当初、聞こうか聞くまいか迷っていた質問をあえてぶつけてみました。

甲状腺肥大、ならびに甲状腺機能亢進症。当時、ニュースにもなっていた体調不良の深刻さは、かなり近しい関係者から「今回は、マジでヤバかった」とすら聞かされていました。命がけ…はさすがに大袈裟でも、重症になりうる可能性は十分にあった。今後、ステージに立てなくなる可能性がリアルにあったそうです。その演奏について聞くと、彼はさらっと答えました。

「ステージの上だといつ死んでもいいと思っているので」。…あ、この人、本気で言ってる。。。そう思いました。ミュージシャンにありがちな用意されたキャッチフレーズでなく、心底、本音だということは、その時点で数百人にインタビューした僕には理解できました。

彼にとって、ステージは人生そのもの。音楽となら殉死できる。それって、根性とか努力の次元ではない気がします。音楽に選ばれた人なんだな、と思いました。職業はロックミュージシャンってことになるのだと思いますが、時代が時代なら、音楽室の後ろに飾られる、歴史的音楽家の域ではないのか。ただのロックスターではないと確信します。そう、選ばれた音楽家。

こんなこと言うと、熱い熱いX(エックス)ファンは激怒すると思います。「よっちゃんは、すごくすごく努力してるの!! なめないで!」と。でも、1日14時間ぶっ通しでピアノを弾くことが日常なYOSHIKIさんは、はやり、天才だと思うのです。1日14時間ぶっ通しで練習する…ってもう、ひとつの才能です。彼にとって音楽を奏でるのは、魚が海の中を泳ぐのと一緒…と思った時に思い出しました。

あ! そうか!、と。そこで思い出しました。たけしさんの言葉を。数年前、たけしさんが、立ち話で教えてくださった「結局さ、Can Swim じゃダメなんだよね。swimじゃなきゃ、ね」というセリフを。
魚が泳いでいるのは努力ではない。「頑張って、頑張って!」と言ってる限りは、努力になってしまう。いつか休憩することになる。魚はただのSwim(泳ぐ)です。Can swim(泳ぐことができている)わけではない。

たけしさんは、この世の中には、凡人がどう戦っても勝てない天才がいる、ということを教えてくださったのではないか。そう気づいたのでした。

ということは、僕たちが参考にすべき成功者は、二つ目の「シナリオ書き換え力のあった人たち」なはずです。今週は、圧倒的な人もいる、ということ。そして、エッセンスは参考になっても生き方そのものをモデルにするなら、天才でもなく、成功した人たちにした方がいい、ということを覚えておいてください。

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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