フェミニズムが「過激化」する本当の理由
では、サイバーフェミニズムは旧式のフェミニズムに比べ、もっとソフトなのか?というと決してそうではない。
女性が連携するためのチャットグループ設定、ジェンダーに捉われない女性像を発信するためのサイボーグ作りなど、目指しているのは旧式フェミニズムと同様に「性差別の解消」である。
そもそも、旧式フェミニズムがなぜ過激でなければならなかったのかを考えてみよう。
日本の女性には戦後になるまで参政権が与えられなかった。1970年代はまだ男女雇用機会均等法も成立しておらず、女性はどうせすぐ結婚するから大学なんて行かなくてもよい、などと思われていた時代であった。
社会を支配するそのような固定観念を突き崩すには、女性はことさら大きな声を上げなければならなかったのである。
他方、男性解放運動はほとんど盛り上がらなかったのはなぜだろう。男性はすでに「解放」されていたから、というより、男性はもともと、拘束や解放を「される」対象ではなかったからである。常に「する」側であり続けてきた。
権利獲得のために団結して声を上げる、なんて必要は男性にはないのだ。とはいえ、大黒柱でいなければならない、泣いてはいけないなど、「男らしさ」へのプレッシャーを窮屈に思う男性によるメンズリブの運動も発生はしたが、女性のそれに比べれば明らかに小規模だ。
女性をないがしろにする日本社会の現状
そして時を経て、21世紀現在。若い女性たちには、もうフェミニズムなんて必要ないと思う人もいる。女性と男性はすっかり平等になったのだから、と。
だが、本当にそうだろうか。
世界経済フォーラムが、経済、教育、健康、政治の各分野における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数というのがある。
女性が政治や経済活動にどの程度参加し、意思決定に加われているかを測る基準だ。この指数、2019年の日本は153ヵ国中121位。あれまあ、下から数えた方が早いじゃありませんか。
人口の半分は女性にも関わらず、意思決定の場に女性が少ない。政策や社会全体の価値観において、女性の立場に立った考え方が反映されにくいということだ。
もはや旧式フェミニズムを拒絶したり、ちゃかしたり、怖がったりしている場合ではない。その意志は、サイバーフェミニズムに形を変えても、脈々と受け継がれる必要があるのである。
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