もはや昭和の頃とは別の国。日本で「桁ちがいの格差」が急拡大している理由

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日本社会にあって、もはや広がる一方の感すらある格差。かつては「一億総中流」などと言われた我が国で、なぜここまで格差が拡大し定着してしまったのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、その理由を徹底的に考察。詳細な分析で明らかになった「悪しき日本型格差」の元凶を解説しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年5月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

隠されてすらいる事実。なぜ日本にここまで悪しき格差が広がったのか

今世紀に入って最初に格差の問題が話題になったのは、2006年から07年の第一次安倍政権の時代でした。当時は「団塊2世=ロスジェネ」が30代半ばに差し掛かる中で、正規雇用に就けないグループと、そうでないグループの「差」が顕著になっていたのでした。そこで、当時の政権は「再チャレンジ」というキャンペーンを行ったりしました。大きな成果はありませんでしたが、貴重な着眼ではあったと思います。その後の政権には継承されなかったのは、残念でなりません。

この時期の格差批判というのは、かなり圧力としては高く、結果的に2007年の参院選で与党が負け、政権が崩壊する要因になったように思います。リベラルの一種の生理的とも言える「安倍嫌い」が、この時はまだ力関係的に有力であったこともありますが、その「格差が問題なのに改憲論議に走っている」という批判が、幅広い有権者にアピールしたのでした。

その後、日本国内の格差は緩和されたのかというと、むしろ反対です。2008年のリーマン・ショックによる世界的な景気後退、2011年の東日本大震災、2020年からの「コロナによる失われた3年間」など、様々な経済的な苦境がありましたが、そのたびに格差は拡大していきました。

気がつくと、格差拡大というのは「当たり前」になり、格差のことを批判する声も比較的小さくなりました。勿論、格差の当事者には潜在的な声があるのですが、メディアは取り上げず、労働権の行使も雇用を人質に取る中で潰されてきたのです。結果的に、こうした要因が格差を更に拡大してきたのでした。

そもそも、格差には良い格差と悪い格差があると思います。いやいや、格差は一般的に悪だという考え方があるのも承知していますが、そうした発想法にこだわり過ぎると、結果平等と計画経済に流れて最終的には経済全体の活力を奪ってしまいます。このことは、20世紀に行われた壮大な社会実験の失敗が明確に示しています。

勿論、良い格差といっても必要悪だという認識は必要ですが、それはともかく、仮に「今は低収入である層が、一種のハングリー精神を持ち、個々の階層上昇へのエネルギーを集約することで全体の成長を牽引する」というような格差であれば、ある種、良い格差であると言えます。

また、「様々な理由で財産を築いた層が様々な方法で社会にその富を還元することで、政府による徴税と再分配よりもコスパの良い還元ができている」というような場合は、さすがに良い格差とは言えないまでも、格差の問題性は軽減されていると言うことができるでしょう。

そのように発想して行くと、現代の日本の格差というのは、相当に悪質なものであると考えられます。3つ指摘したいと思います。

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