守られぬ法律。第三者委員会という「いじめ擁護委員会」が乱立する絶望的状況

 

相次ぐ違反行為

全国的にいじめ防止対策推進法を違反する行為があることは、ニュースを見れば明らかだ。

起きていない地域はないと言えるほど、当然のように法律違反が起き、法律に基づいて作られたガイドラインを破る事例は枚挙に暇がない。

例えば、神戸市教育委員会は、18年間いじめを隠ぺいするという記録更新と言える隠ぺい事件が起き、第三者委員会が市教育委員会が行った不正を糾弾する報告書を書いても、市の教育長は被害者との面談で、この報告書は杜撰だと開き直る始末だ。

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先日取り上げた、静岡県湖西市のいじめ隠ぺい事件でも、市の教育長は被害側に謝罪こそすれ、第三者委員会に指摘された常設委員会の設置が解消案だとした。

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しかし、この常設委員会が問題を起こすケースや隠ぺいエンジンに使われるケースが頻発しており、これについての考えはないのだ。

つまりは、もういじめ問題はコリゴリだから、常設隠ぺい委員会をそれっぽい先生方に来てもらって抑え込んじゃおう!とでも思っているのかと言われかねない状況なのである。

そうでないことを祈るが…。

他にもある。

被害者にヒアリングをすれば、私も!うちもだ!という声は無数にあるだろう。

乱立する第三者委員会と称するいじめ擁護委員会

伝説の探偵では、全国に先駆けて「高知県南国市」で起きた当時小学2年生であった岡林優空君が下田川で亡くなってしまった事件を取り上げた。

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いじめの疑いがあり、第三者委員会を南国市教育委員会が設置するというが、ご遺族の反対を押しきって作った第三者委員会の第1回会合後、ご遺族側が解散要求を出すに至り、その後、再構成するといって、およそ3年半、第2回なり再構成の委員会が動いたということはない。

現実に、調査委員の選任や推薦の要請をしていたとしても、これほどの期間が経てば、放置であると言われても言い訳がつかない状態であろう。さらに、これが議会で問題視されるようなこともないほど閉そく感と隠蔽体質濃厚な場なのだ。

全国の中で最悪教育委員会と言われるところがいくつかあるが、まだ公表はしないが千葉県のある市では中途半端な常設調査委員会(第三者委員会)がまともな調査をせずに、いじめはないという報告書を出し、被害側と弁護士にその根拠を聞かれると、差し戻しをしたというのもある。

やることなすこと杜撰、一般社会人がみたら、それは仕事ではありませんねということばかりが起きる。

ニュースになれば、酷過ぎて頭がついていかないということもあろうほど、根本的に杜撰なのだ。

そもそも、いじめ問題が一定のルールに基づいて重大事態となり、第三者委員会が発足するような事案では、学校の対応や教育委員会の対応が問題になるケースがほとんどで、学校や教育委員会は調査対象になるわけだ。

ところが、第三者委員会の設置権限は学校の設置になるから、公立校ならば教育委員会、私立校であれば、学校法人ということになる。つまり、調査対象者が第三者委員会を設置するといういびつな仕組みになるのだ。

構造的な問題と言えば確かにそうだ。

しかし、予算の関係上、こうしたことは仕方ないという見方もあるから、百億万歩譲って、第三者委員会が独立して公平に判断できるようにする「設置要綱」が重要になったり、委員になる人の中立性や専門性が重要に今のところはなるわけだ。

最後の砦にも成り得る「第三者委員会」について法律構成が歪だと言われるのは、重く為政者は受け止めなければならないだろうが、法改正が10年間もできないというのも歪だと言わざるを得ない。

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