「プーチンとは戦わず」NATO加盟国から透けた“ウクライナを見捨てる”裏の思惑

 

確実に長期化・泥沼化するウクライナ戦争

ただ、NATO首脳会議の場で“中国の話題(アジアにおける安全保障上の脅威の拡大)”が出て、共同宣言に含まれたことにはほくそ笑んでいると言われており、NATOのフォーカスがぼけていることに何らかのメッセージを捉えているようです(中国の脅威についての内容がNATOの首脳宣言に含まれたのは、日本の外交の成果ですが、アメリカが支持しても、欧州各国は中国への配慮から積極的な賛成というわけではなかったようです)。

実際の戦争がウクライナ各地で行われ、欧米とロシアの武器が飛び交い、多くの生命が奪われ、街が破壊され、市民の生活を悲惨なものにしていますが、その背後で国際情勢上のパワーゲームと外交ゲームが全く別次元で戦われています。

調停グループのメンバーとして、その一端をつぶさに見ていますが、そこから見えてくるのは「この戦争は長期化し、泥沼化する」ということです。

ロシアもウクライナも疲弊し、早急に戦いを止めたいはずなのですが、双方とも一度振り上げた拳を下すきっかけを見いだせず、だらだらと戦いが継続することになります。

ロシアとプーチン大統領は旧ソ連時代の状態に戻し、再度“ロシア帝国”を築き上げたい。

ウクライナはロシアのくびきから解き放たれ、やっとつかんだ“国家”としての地位を何としても死守したい。

そしてNATOは、冷戦後、その存在意義を失いつつあった中、今回のロシアによるウクライナ侵攻で息を吹き返し、その結束を強めつつ、Postウクライナの国際情勢における“新たな存在意義”を探るため、日韓や豪州、ニュージーランドなどを迎え入れ、軍事同盟としての立ち位置に加え、経済社会的なパートナシップの母体としての立ち位置も得ることで、自らの延命と存在意義の確立を目論んでいます。

そのためにはNATOにとってもあまり早期に戦争が終わってほしいとは思わず、じっくりと準備をして、ロシア・ウクライナ戦争が終わった後の【復興】という長期的コミットメントにおいて主導権を取りたいと目論んでいるようです。

中国はそれを良しとせず、インドもそれを看過することもありません。そして今後、どのような立ち位置を取るのかを注目される外交巧者でありカメレオンでもあるトルコもNATOの一員としての立場に甘んじるのか、それとも国際情勢の中心に躍り出るのかを今、決めようとしているように見えます。

そうなると気になるのは、日本の立ち位置なのですが、今後どうするのでしょうか。

中国とロシア、北朝鮮という核戦力を隣国に持ち、韓国とは、デリケートな関係が続く中、唯一の同盟国は、基地を日本国内に置いていても、主力は数千キロメートル離れた場所にあるという非常に稀有な安全保障環境に置かれているのが日本なのですが、NATOの加盟国でもなく、核保有国でもなく、一応攻撃のための戦力を持たない独特の立ち位置から、どのように振舞うことが最良なのか。

早急に見極めておく必要があるように私は思います。

以上、国際情勢の裏側でした。

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