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またも封殺される日本企業。ゲーム業界をも「囲い込む」マイクロソフトのデファクト・スタンダード戦略=鈴木傾城

Microsoftが米ゲーム大手Activision Blizzardを買収するという報道でゲーム業界が激震している。Microsoftが狙っているのは、この企業の歴史を見れば分かる。業界標準(デファクト・スタンダード)である。デファクト・スタンダードでユーザーを囲い込み、さまざまな製品やサービスを提供し、エコシステムが生まれると、囲い込みはますます強固なものになっていく。その状態を確立した後は、製品価格を少しずつ引き上げても、サービスを改悪しても、ユーザーは逃げることはできない。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)

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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。

デファクト・スタンダードによる支配が強烈だった製品

Microsoftが米ゲーム大手Activision Blizzardを買収するという報道でゲーム業界が激震している。買収金額は8兆円近くで、これはMicrosoftにとっても過去最大のM&Aである。

今、メタバース(仮想空間)の分野が急激に勃興しようとしており、フェイスブックも企業名すら「メタ」と変えてしまったが、Microsoftもこの分野に本気で勝ち残ろうとしているのが分かる。

Microsoftが狙っているのは、この企業の歴史を見れば分かる。業界標準(デファクト・スタンダード)である。

Microsoftのデファクト・スタンダードを取りに行く戦略は、もちろん創業者であるビル・ゲイツが得意としていた戦略で、これが今でもMicrosoftの企業文化として受け継がれているのが分かる。

現在でも世界トップの資産家であるビル・ゲイツは、今でこそ慈善家として知られるようになっているのだが、かつてはMicrosoftの創始者としてIBMやAppleと凄まじい競争を繰り広げて勝ち抜いてきた経営者だった。

このMicrosoftの決定的な市場独占は、まさにWindowsの成功によって成し遂げられたと言える。

ところで、全世界を掌握したWindowsというOSは、決して「最高のOS」でもなかったし「独創的なOS」でもなかった。堅牢性で言えばUNIXに劣っていたし、グラフィカル・ユーザー・インターフェイスはAppleのOSの真似だった。

しかし、Windowsはマーケティングに成功して優位性をつかんだところで、もはや他が追いつけないほどの圧倒的な独占を手に入れて、それがビル・ゲイツを世界最強かつ裕福な経営者に押し上げた。

Microsoftは最初に確固とした事実上の標準(デファクト・スタンダード)のポジションを手に入れたことによって、その後は独占が独占を生む効果をもたらした。デファクト・スタンダードによる支配を世界で最も効率的に行ったのがMicrosoftだったのである。

Windowsは当初から「出来の悪さ」が批判されていた。さらに、OSを改変すればするほど重くなり、バグが増え続けていった。それでも人々はWindowsを使い続けた。事実上の標準だったので、そこから逃れられなかったのだ。

アメリカ企業が今でも最強なのは、まさに「デファクト・スタンダード」こそが国家繁栄の基礎であることを政治家も企業家も知っているからだ。だから、アメリカのすべての多国籍企業はデファクト・スタンダードを取りにいく。

Next: 飲み込まれる日本企業。最初に優位なポジションを取って囲い込みを行う

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