相場操縦の効き目は短い
円は12日に146円台後半を付けて、9月22日の為替介入時よりも安値を付けた…14日には147円台に入った。
24年前の9月22日に米国との協調介入で、ドル売り円買いの相場操縦を行った。それから24年ぶりの9月22日に、今度はドル売り円買いの相場操縦を行った。日米金利差が拡大するという見方が市場に伝わっていて、ファンダメンタルは円安方向にあるにもかかわらず、ファンダメンタルに逆行して力づく相場操縦を行っても、効き目は短いと筆者は2週間前の本稿で述べ続けてきた。
やはり腕力だけでの相場操縦ではファンダメンタルにはかなわず、当日よりも円安になってしまった。日銀は再び介入(相場操縦)に動くかどうかが、焦点になってくるだろう。
日米金利差下でのドル円は120円を割ることはない
日米金利差という為替相場のファンダメンタル要素の落ち着きは、明確には判らない。過去の流れからおよその見当を付けるしかない。「失われた13年」の期間は、金融危機に直面した日本の利下げによって日米金利差が3~5%に拡大して、その後は3%前後で安定し、次に米国の金融危機が始まって、また次にリーマンショックが始まると、米国の利下げで金利差は1~2%まで縮小した。それが10年近く続いた。
このように、局面によって金利差は激動する。ところが、金利差も事件性のことで起こった反動局面が終われば、平時の水準に収斂して均衡する可能性があり、それは概ね3%前後ではなかろうか。2000年代の中盤に3%で一旦均衡したように思われたが、この均衡レンジが拡大すると、円ドル相場も激動する。ドル円の最終的な均衡水準もそれに左右される。今のところ3%とすれば、1ドル120円を割るような水準は中期的にないのかもしれない。
進む円安で減った外国人労働者
介護とか建設などのように機械化ができない部分が多く、人手が必要な業種では、円安が外国人労働者の獲得に悪影響を及ぼしている。ドル換算の賃金は過去10年で4割減り、アジア新興国との差は急速に縮まっている。その意味で、賃金格差の縮小で、日本のステイタスはアジア新興国の中で相対的に落ちた。ベトナム・フィリピン・オーストラリアなどに人材が流出しているという。
円安は日本にとって有利である面がかなり多いが、この面はあまり言及されない。円安で儲かった者は黙っている。損した者だけが騒ぐ。したがって、円安は悪いものだというムードが広がっているが、確かに日本国に悪い面も多い──
<山崎和邦の投機の流儀vol.541 10/16号>
第1部:当面の市況
(1)市況コメント
(2)日本市場に織り込まれていない短期的な材料は、NY大幅高or大幅安。
(4)年末までの大まかな見方
(5)日本国内の中長期債、海外勢は8年半ぶりの最大の売り越し。
(6)日銀の景況感
(7)鉱工業生産の9月・10月の見通しは上方修正
(8)「QUICK投資家心理指数は4ヶ月連続で弱気」
(14)米中間選挙、有権者の関心度においてコロナ問題は15位で最下位
(15)個人資金が海外投信へ2.4兆円弱の流入
■ 第2部:中長期の見方
(1)岸田政権の支持率急落は無理もない。
(2)「アベノミクス離れ」ができない岸田政権の衰退
(3)委縮しつつある日本
(4)衰退中の日本を救うのは、新機軸しかない。
(5)プーチンの狡猾さ
(6)ウラジミール・プーチンの奇々怪々─そして誰も居なくなる。
(7)追いつめられたプーチン
(8)日米の金利政策
(9)「次の株価暴落を乗り切る投資法」
(10)「米国株の逆金融相場は年末まで」「激変した株式サイクル」
(11)「資産形成支援と所得格差拡大の二律背反は、避けて通れない。
(12)東電株の行方
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『山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2022年10月16日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。