アメリカ、中国、東南アジア…地域ごとのトヨタの戦略
では、トヨタの全方位戦略の実態はどうなのでしょうか?地域ごとの市場の状況と、トヨタがやりたいことを確認しましょう。
<アメリカの現状>
トヨタがアメリカで最も意識していることはBEVの生産です。ノースカロライナ州で工場を建設し2025年にBEVのSUVを生産予定です。
一方でアメリカでは、充電箇所が不足しているなどの問題があることから、HVに注目が集まっています。米国の全住民の3分の1以上が集合住宅で暮らしているため、個人が自宅に充電設備を設置することは難しいのです。米エネルギー省によると、国内に設置されているBEV用公共充電スタンドは50,000カ所足りません。
トヨタはアメリカでBEVの現地生産を目指しながらも、ハイブリッドに注目が集まっていることからどちらの方向性に行ってもトヨタにチャンスが回ってくるでしょう。全方位戦略の成功地域であると考えます。
<中国の現状>
トヨタは中国で2024年に、現地のニーズに合わせたBEVを2種投入する予定です。その後、モデル数を増やすことを目指しています。しかし、中国では外資メーカーが値下げ圧力にさらされています。
そもそも中国は世界最大の自動車市場であり圧倒的なBEV普及率を誇ります。背景には、国をあげてBEVを推し進めていることがあります。自動車メーカーに一定割合の新エネ車の販売を義務付けるのです。国内産業優遇を行いながら環境規制を行うことで、外資系に高い障壁を作っています。
実際に、つい先日の23年10月24日、BEVが比較的進んでいる三菱自動車が中国からの撤退を表明しました。それだけ日系企業にとっては難しい市場であることが分かります。
中国は圧倒的な世界一の規模を誇る市場だが、世界一攻略が難しい。トヨタをはじめとした日本の自動車メーカーが、中国で躍動するイメージは持てない。このような現状だと考えます。
<東南アジアの現状>
アジアをはじめとする新興国ではニーズが伸び始めているBEVに加え、収益力が高いHVを販売する予定です。この東南アジア地域は、新車や増車による市場拡大が見込まれる成長領域といえます。
今後、トヨタのHV事業の大きな役割として期待されているのはアジア地域です。新興国向けこれらの国では現在ガソリン車を中心とした自動車市場そのものが拡大基調にあり、今後は一定のCO2削減が実現できる「環境にやさしい」HV車の需要増加が見込まれています。
先進国を席巻してきたトヨタのHVを今後は対新興国に活用することで、全方位戦略の費用確保に向けた大きな収益源として期待されています。
まとめると全方位戦略は
アメリカ○、中国×、東南アジア○、このような勝敗であると考えます。