下方修正の理由その1:国内市場の現状
下方修正を行った理由の1つ目が、国内市場の苦戦です。
まずは、その内容をざっくりと説明します。
- 住宅ローン金利の上昇の懸念や建築資材価格の高止まりなどによって新設住宅着工件数が伸びていない
- 窓リフォーム向けの政府補助金の端境期であることや、季節的要因による一時的な需要の悪化
国内市場の現状はこの2つで説明されています。
①は先ほどの説明と同様に中長期的に新設住宅着工件数が伸びてない状況の延長線と言えるでしょう。
確かに、24年に入ってからの新設住宅着工件数は伸び悩んでいます。24年2月の新設住宅着工件数は前年同期比約20%減少の約59,000戸です。

出典:国土交通省 建築着工統計調査報告より作成
では②は何でしょうか?
窓リフォーム向けの政府補助金とは、先進的窓イノベ事業という政府の補助金です。
ガラス工事(既存窓のガラスのみを取り外し、既存サッシをそのまま利用して、複層ガラス等に交換する工事)や内窓工事(既存窓の内側に新たに内窓を新設する、または既存の内窓を取り除き新たな内窓に交換する工事)を行うと一戸あたり200万円まで政府から補助金が出るのです。
つまり、先進的窓イノベ事業とは断熱効果など省エネにつながるリフォーム工事に対し補助金が出る制度です。
そして、水回り製品(ウォーターテクノロジー)と金属製建材(ハウステクノロジー)におけるリフォーム売上はじわりじわりと成長しています。

出典:決算短信より作成
したがって、先進的窓イノベ事業はLIXILの業績を押し上げる要因になるのです。
しかし
これまで追い風だったこの案件が、季節性の要因によって不調と説明されています。
これは本当に季節性の要因なのでしょうか?
それが事実ならば、昨年も同様の事象が起きているはずです。
その実態を表す記事を引用します。
「注文が増え始めたのは、2023年1月末に補助金対象商品が事務局から公表された後の2月からです。3月に急増し、ピークは3月から4月でした。しかし6月、7月ごろから、この勢いでいくと補助金が早々に底を突くのではないかという噂や雰囲気が出て、受注活動にブレーキがかかりました」
これを見ると、昨年は3月4月ごろにピークをつけて、やや需要が縮小したと推察されます。
一方で、今回の下方修正は1月から3月にかけての内容ですから、昨年よりも需要が縮小するタイミングが少し早いと考えられるかもしれません。
あくまで私個人の意見ですが、先進的窓イノベ事業は2023年から開始した補助金ですから、2023年はスタートダッシュの恩恵があったのかもしれません。
つまり、2024年現在では、昨年よりもやや需要が縮小している可能性も考えられます。
したがって、今回の下方修正から以下のように考えます。
「一時的な要因は少なからずあるのだろうが、そもそも先進的窓イノベ事業全体の需要が増えているのかどうか」ここが今後のポイントになりそうです。
(少し古いですが、参考画像を添付します。件数・金額共に減少傾向です。)

Screenshot
出典:リフォーム産業新聞
下方修正の理由その2:欧州不動産市場
そして、理由の2つ目は欧州不動産市場の低迷です。
これは、住宅設備・建材の需要が低下していることが原因と説明されています。
特に、インフレ抑制に向けた金融引き締め政策の長期化などによって、住宅市場の景気が停滞。当初計画よりも収益性が悪化したことが原因としています。
私たちが、普段生活していると、欧州の住宅市場の動向は正直よくわかりません。
実態はどうなっているのでしょうか?
まず住宅ローンの金利予想ですが、ピークは2023年だと予想されていますが、依然として高止まりしている状況はあまり変わらないように見えます。

出典:Where in Europe will the property market revive in 2024?
そして、住宅の価格も上昇を続けています。
これは建築資材価格の高騰に加え、エネルギー価格の高騰など、様々な要因が絡み合っています。

出典:Housing price statistics – house price index
住宅ローンの金利が高い。住宅自体の価格も高い。
この状況であなたは家を買いたいと思いますか?
このような現状であるため欧州消費者の住宅ニーズは高くありません。
そして日経新聞によると銀行側も融資に慎重になっているようです。
こういった住宅市場の現状が欧州不動産市場の低迷を招き、LIXILの事業にも悪影響を与えているのです。
LIXILの海外における主な利益源は水回りの商品です。

出典:決算説明資料より作成
この海外×水回りの事業は成長促進事業の一つとされていますが、住宅市場の低迷は先が見えません。
したがって欧住宅市場の低迷は、今回の下方修正だけではなく、来期の25年3月期においても悪影響を与え続ける、やや時間軸が長いトピックとなりそうです。
これらを踏まえて投資判断を行います。
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