まずはコストコにいくには郊外まで車でいく必要がある。つまり、コストコの購買層は必然的に車を持っている層になってくる。
街のドラッグストア・ディスカウントストア・スーパーで万引きをする人々は、車も保有していない層が多い。あるいは、車はあってもガソリン代を払えない人もいる。そうした人々は、まずコストコは利用しない。
ここで、コストコで万引きをするリスクの高い人々が弾かれる。
さらに、コストコは「大容量」で商品を販売する。こうした大容量の商品を買うのはファミリー層である。家庭を持っている人たちは、恒常的な万引きや大規模な万引きをやったりするリスクは低い。
年会費を払えなければ店の中に入ることもできない
そしてさらに、この「大容量」がまた貧しい人たちを遠ざける。
なぜなら、大容量の商品を買ったら、収納する場所も必要だし、それが食品であった場合は大型の冷蔵庫が必要になるからだ。つまり、必然的に中流以上の層がコストコに集まることになる。
中流層以上はきちんとした仕事があるので、通常は、逮捕されたり、起訴されたり、刑務所にいくようなリスクは避ける。そもそも、ある程度の金があるので、万引きを考えるような発想にならない。
極めつけは「会員制システム」である。コストコでは、モノを買う前にまずは年会費を払わなければならないのだ。年会費がどれくらいなのかというと、個人向けでは、ゴールドスター会員で60ドル。エグゼクティブ会員で120ドルとなっている。
ここで60ドルや120ドルの年会費を払えるということは、利用者は計画的に消費できる経済的余力があることを示している。そして、恒常的にコストコを利用して大容量の商品を買い込む能力があるということも示している。
通常、貧しい人たちはモノを買う前からそういう年会費を払うことはない。そういう経済的な余裕もないし、会員になったとしても、毎回そこにいって支払いができるのかどうかも危ういので、なおさらコストコの会員にならない。
そして、年会費を払えなければ店の中に入ることもできないのだから、「年会費」自体が貧しい人たちを遠ざける。
つまり、コストコは「郊外」「会員制システム」「大容量」という3つのきわめて独特のシステムによって、街の小売店に吹き荒れる「大量万引き」という危険な事態から完全に防御する仕組みを備えたのだった。
「店も客も商品も安全なスタイルはどういうものなのかというと、コストコが最適解になるのではないか」と考える人が多いのは、そういう理由があった。