経営統合した場合、経営はうまくいくのか?
では経営統合が実現した場合、それは成功するのでしょうか?
実は、ホンダは様々な企業との業務提携を行っていますが、失敗したケースもあります。
- 米国ゼネラル・モーターズ(GM)との提携は失敗:量産型EVを共同開発を進めるも儲からないと判断。開発中止
- ソニーとの提携は継続中:折半出資で自動車メーカーを設立。ソニーのITとホンダの生産技術でテスラなどに対抗する。つい先日販売するEVが発表された。
ソニーとの提携はここまでは順調に見えますが、EV需要が縮小する中でどれほど販売を伸ばせるかは不透明です。
さらに、自動車業界全体の歴史を見ると、自動車メーカーの統合は難しいと言えます。
- 1998年、ドイツのダイムラー・ベンツがアメリカのクライスラーを買収し、「世紀の合併」とも言われたが、のちに解消。
- 2009年、スズキとフォルクスワーゲンの資本提携ものちに解消
その背景には、企業の歴史や社内文化、エンジニア思想の違いがあると考えられます。
このホンダと日産の企業文化の違いについて、30年以上自動車業界を分析しているナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹さんの言葉を引用します。
昔の日産の人から見ると、ホンダは非常に小さい会社で日産のプライドは大きく邪魔をすると思う。また、両社のカルチャーは違っていて、ホンダは1回の成功のために99回失敗を繰り返すような、とりあえずやってみようという会社。一方で、日産は理詰め、ロジカルで、どちらかというとスローな会社。
それをどううまく統合していくかは非常に難しい。
引用元:NHK ホンダ・日産 経営統合 歴史的再編の行方は
上記のコメントを見ると、企業文化としては全く違う会社であると言えます。
仮に経営統合が行われても1+1=2という経営統合に止まり、1+1+αというメリットというシナジーが生まれづらい可能性も考えられます。
ただでさえEV化や自動化という流れに遅れている両社が統合したところで、果たして追いついていけるかどうかという点については、大きな疑問の余地が残っていると言えます。
今後の注目点
ここまでをまとめます。
- 経営統合は買収ではなく、持株会社を設立し3社が傘下に入る形になる公算。
- 実現には、3社の議論とルノーの動向がポイント。
- 経営統合による日産の救済期待とホンダのリソース共有が狙いと言えそうだが、その成功に向けては企業文化の違いが大きな課題。
今回の経営統合について、三部社長は「日産の救済目的ではない」と述べています。
一方で、「日産とホンダが自立した社として成り立たなければこの経営統合の検討は成就することはない」「前提条件としては、日産のターンアラウンド(経営の立て直し)の実行が絶対的条件になる」と述べています。
したがって、経営統合の実現性とその成功においては、日産が経営立て直しができるか否かを考える必要があるでしょう。
当面の状況としては、日産のリストラの進捗及び統合比率交渉が大きな鍵を握ると言えます。それにより日産の株価が上昇すれば、ルノーの賛成により統合成立の可能性は高まるといえるでしょう。
一方で、もし経営統合が成立しなかった場合、ルノーは鴻海を含む新たな売却先を模索することになり、それも短期的には日産の株価の押し上げ要因になるかもしれません。
仮に経営統合が成立したら、その後の焦点は2社が自動車業界の大変革期を乗り越えていけるかが大きなポイントとなりますが、そのためには乗り越えるハードルは非常に大きいと言えそうです。
今後も様々な動きが出てくると考えられます。引き続き動向を見ていきましょう。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年1月9日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。