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半年で株価半減「太陽誘電」は買いか?株主はどうするべき?長期投資家が持つべき視点=栫井駿介

利益ゼロ!

元村:この1年間、電子部品や半導体業界をよく見てきたのですが、2024年6月頃に、GPUの次は積層セラミックコンデンサだという風潮が高まった時期がありました。GPUに対する過熱感から、コンデンサの需要も間違いなく増えるだろうということで、太陽誘電の株価も大きく上昇しました。

太陽誘電<6976> 日足(SBI証券提供)

太陽誘電<6976> 日足(SBI証券提供)

栫井:6月から7月半ばまでは大きく上がっていますが、そこから転換して一気に下がってきていますね。

元村:一時的な過熱感が落ち着いたこともあったのですが、必ずしもこのまま右肩上がりにはいかないのではないかという懸念材料が出てきました。例えばEV車の販売がピークアウトしそうだという機運が出てきたりして、コンデンサに注目が集まり始めてきていたのが落ち着いてしまったのです。そこから先はさらに下がっているのですが、AIパソコン・AIスマホに期待は高まっているけれどもiPhone自体の買い替え需要がそれほど起きていないということが反映された状況です。

栫井:直近で下方修正もありましたよね。

元村:そうですね。

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元村:11月に下方修正していて、売上ベースで見ると200億円くらいですが、営業利益や最終利益を率で見るとそれ以上のインパクトがあります。

栫井:最終利益がゼロになってしまったんですね。

元村:そうなんです。修正の理由としては、中国の不況がものすごく大きいということです。それからEV需要のピークアウト、そして為替差損で最終利益がゼロになるという下方修正でした。

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元村:これが直近の四半期ごとの用途分野別売上構成ですが、情報インフラのところにはサーバーも含まれるので、データセンター向けが伸びていると思われます。一方で自動車向けは横ばいではありますが決算短信などを見ると少し下がってきているようです。比率が高まっているのは、データセンターが含まれる情報インフラと、ゲームやスマートウォッチなどの民生機器で、これまで市場を引っ張ってきていた部分の状況があまり良くないようです。AI関連の需要が高まってくる期待以上に足元の状況が悪くなっているのではないかと太陽誘電が説明しています。

栫井:将来は期待できるかもしれないけど足元が悪く下方修正もあって株価が下がってしまっているということですね。

井村氏はなぜ買い、なぜ売ったのか

栫井:株価が大きく上がって下がったということですが、その中で井村さんがどのような取引をやってきたか分かりますか?

元村:ネット上で情報収集をしたところ、太陽誘電に投資をしたのはおそらく2024年6月より前の段階で、売却したのが10月中頃と見られます。モメンタム性に賭けたところはあったのではないかと思います。

栫井:モメンタムというのは、今話題になっているからグッとくるのではないかと考えたということですね。

元村:GPUの次はコンデンサだという話題性もありましたし、AIパソコンやスマホの買い替えもあるし、まだEV車のピークアウトも見えていなかった時期だったので、その流れに乗ったのだと思います。

栫井:10月頃には売ったということですが、これはどういったわけでしょうか?

元村:やはりこの辺りでEV車の販売がピークアウトしたという世論が中心になってきて、AIパソコンやスマホの買い替えが思ったより起きなかったというネガティブな材料が一気に現れてきて、このまま放っておいても下がるだけなのではないかということで損切りに踏み切ったのではないかと思います。

栫井:ここで売れるということもさすがだなと思いますね。投資が上手くない人はズルズル引きずっちゃうところです。井村さんの投資で言うと、三井松島ホールディングスや、一時期地銀などに投資していた時もあったかと思いますが、大きく割安になっていてかつ外部環境の変化などでぐんと伸びてきそうな割安銘柄を買うというイメージが強いですが、太陽誘電の時にはそんなことがあったのですか?

元村:PBRは1倍割れではありましたが、そこまで安くはなかったですね。6月頃のPERは35~45倍くらいあって、割安なタイミングで入ったわけではないですね。

栫井:2022年の業績くらいに伸びるとしたら割安とも言えるといった感じだったのでしょうか。

元村:そうだと思います。

栫井:しかし足元の状況を見るとそうではなかったと。

元村:どちらかというとネガティブな面が顕在化してきたということですね。

栫井:井村さんは下方修正が出る前に売っていて、マクロの環境を見てヤバいとなったら早々に売るのは改めてさすがだなと思います。逆に言うと、井村さんでも間違うことがあるということですね。

元村:損切りはさすがですね。やはり太陽誘電の場合、良い時は良いけれども悪い時は悪いという特性があります。大きく上がる期待が持てる反面、読み違えた時のダメージは大きい企業だと思いますね。

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