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半年で株価半減「太陽誘電」は買いか?株主はどうするべき?長期投資家が持つべき視点=栫井駿介

長期投資なら業界最王手

栫井:今まだ持っている人に向けた話になると思いますが、太陽誘電の業績や業界におけるポジショニングについて詳しく説明をお願いします。

元村:繰り返しになりますが、良い時は良いけれども悪い時は悪いということですね。

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元村:これは業界一番手の村田製作所と太陽誘電の営業利益を並べたものになります。(金額は違うものの)二社とも同じような動きをしていますが、対前年比の数字で見ると、太陽誘電は一時期は600~700億円という利益があったものが足元ではもうほとんど利益が無い状況の一方、村田製作所は落ち込んだとしてもせいぜい50%くらいという形で、振れ幅が全然違います。これが業界の中のリーダー企業とチャレンジャー企業の大きな違いなのかなと思います。

栫井:リーダーとチャレンジャーでそんなに違うものなんですか?

元村:かなり違うと思います。

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元村:これは村田製作所と太陽誘電の、コンデンサ事業単体での売上の対前年比のグラフです。どちらもガタガタしていますが、太陽誘電の方がより上下動が激しいです。村田製作所の方が業界一番手で金額のシェアも高いので、顧客企業との安定した関係性があり、市況感が悪い時は当然取引量に影響するけれども二番手三番手ほどではありません。市況が悪い時の二番手以降のチャレンジャー企業は、最王手との取引を確保した顧客企業の調整という扱われ方をされるので、良い時はグッと上がるけど悪い時はガクッと下がってしまうという特徴があります。

栫井:顧客企業からすると、まずは村田製作所から買って、たくさん要らない時は太陽誘電はゼロになって、たくさん必要な時は村田製作所で足りない分を太陽誘電から買って、その時に太陽誘電には急な受注が入って売上が一気に伸びる、ということが今のポジショニングである限り延々と繰り返されるわけですね。

元村:そうですね。顧客企業からすると一社だけに依存することはリスクが大きいので二番手三番手も大切な存在なんだけれども、どうしても調整役みたいになってしまうということです。

栫井:長期投資の観点だと、そこで赤字になったりするとなかなか次の一手が打てなくなったりしてどうしても競争力をつけにくいですよね。

元村:その通りですね。

栫井:そういう意味では長期投資で投資するべきなのはやはり二番手ではなく一番手であって、何十年後にはその差が大きく開いている可能性が高いということですね。

元村:長い目で見た時に、一番手企業の方が資本力もあるので、市況が悪い時にちゃんと設備投資をして生産能力を高めて市況が良い時にたくさん売るということができます。チャレンジャー的なポジションにいる企業はやはり短期での業績の上げ下げが激しいので難しく、長期投資でほったらかしにすることはできないと思います。

栫井:逆に言うと、二番手だからこそ良い時には倍率で言うとものすごく大きく上がるので、井村さんが狙うのは村田製作所ではなくて太陽誘電だったというところはあるかもしれないですね。

元村:そこが私たち長期投資家とは違う着眼点だと感じましたね。

栫井:セラミックコンデンサ市場はまだ拡大していくということですが、太陽誘電もガタガタしながらも成長はしていくというイメージは描けますか?

元村:おそらく中長期で成長はしていくと思います。ただ一方でシェアを落としたくないということで、よりがんばって巨額の設備投資を行わなければならなくて、村田製作所よりも重しになってくる局面もあるのではないかと思います。

栫井:市場が拡大していくことは良いことなので、安定して投資をしたいなら、太陽誘電ではなくて村田製作所を買った方が良いということになってきますね。

元村:長期投資の観点だったらやはり業界一番手を選ぶのが定石となりますね。


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image by:Qurren at Wikimedia Commons [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年1月10日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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