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株価ピークから70%下落「TOWA」今が買い?半導体銘柄の将来性とリスクを解説=栫井駿介

本記事で取り上げる銘柄はTOWAです。1年ほど前に株価が大きく上がるタイミングがありましたが、最近ではそこから大きく下がっています。半導体関連の銘柄ではありますが、果たして買って良いものでしょうか。半導体に詳しいアナリストの元村氏に事業内容と強みについて解説していただき、今からでも買うべきなのかを考えてみたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

TOWAは何の会社?

栫井:まず、TOWAがどんなビジネスを行っているのか説明をお願いします。

元村:TOWAは半導体のチップを保護するためのカバー(画像の黒い部分)をつける装置を作っています。

TOWA1.jpg

栫井:言ってしまえばかなり地味なものですね。

元村:そうですね。工程で言うとこのような部分になります。

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栫井:TOWAが半導体製造に必要なことは分かりますが、なぜ株価が大きく上がるタイミングがあったのでしょうか?

元村:改めて業績を見てみましょう。

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2022年くらいから急激に売上が伸び始め、利益率も高まってきました。

栫井:売上は倍くらいになっていますね。

元村:2022年頃に伸びたのは、コロナ禍でパソコンやスマホの需要が爆増して半導体ブームとなり、TOWAの樹脂を被せる仕事はありとあらゆる半導体に行うので、半導体の需要増とともにTOWAの業績も伸びたという背景がありました。足元で伸びているのは生成AIの需要によるものです。AI半導体の需要が爆増したので、GPUやHBM(メモリ)の樹脂カバーはTOWAのモールディング装置でしかできないということで業績が上積みされたということです。

栫井:業績の推移を見ると、2009年はリーマンショックで赤字ということは分かるのですが、利益が出ている時もありますが正直良い業績とは言えないですよね。営業利益率も良い時で10%を少し超えるくらいで基本的には1桁です。生成AIの半導体に使われるようになったことで変化があったのでしょうか?

元村:AI半導体は高性能なチップになるので、そのチップにモールディングするのはこれまでよりも高度な技術を要するということで、単価の高い製品が売れるようになったということですね。

栫井:「高度」というと具体的にはどういうことですか?

元村:今までの半導体は平面構造で、一つ一つのチップにカバーをつける形だったのですが、最近ではいわゆる「チップレット」という形で、いろいろな種類の半導体を1つの基板に詰めて高性能な半導体にする技術が発展してきました。しかもそれが2階建て3階建てという立体構造になっていて、それにカバーをつけることはこれまでの平面構造と比べると技術的にかなり難しくなりました。

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これに対応するモールディング装置をを作っていたのがTOWAだったということです。

栫井:なるほど。今までは平屋だったからそこに屋根をつけるのも脚立を立てれば割と簡単にできたからそこで利益を取るのは難しかったけど、3階建て4階建てになってきて大きなクレーンでなければ屋根をつけることができなくなって、そのクレーンを持っていたのがTOWAだけだったということですね。

元村:そうですね。もう少し分かりやすくイメージ化してみます。

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これまでは、チップがあってそこにたい焼きのあんこを詰めるような形で樹脂を注入していたのですが、これだと立体構造で複雑になった時になかなか均一に樹脂が詰まらないという問題がありました。それを「コンプレッション成形」という形でパッケージ基盤を樹脂につけるというやり方をすると、AI半導体のようにチップレット技術が活用されていたり2層3層構造になっているチップでも均質にモールディングできます。これができたのがTOWAだったということです。

栫井:今までとはかなりやり方が変わったということですね。

元村:この方法がこれまでは難しかったところを、TOWAが可能にしたことで注目が集まりました。AI半導体に限らずこういったチップレットのようなものは先端品の半導体で増えてきているので、TOWAのモールディング装置はここに強みを持っているということで年々シェアを上げ続けているということです。

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出典:EE TIMES

栫井:2022年頃に業績が上がったのは、投資家から見ると単に半導体不足だからここも盛り上がっているんだろうくらいにしか見られていなかった可能性があると思いますが、そこからAIが出てきて、TOWAがシェアを高めているということで、生成AI関連銘柄だと認識されてきたという感じですね。

元村:その通りで、統合報告書にも“最先端半導体の樹脂封止に最適”などと書かれていたり、AI半導体によく使われる特殊メモリ「HBM」はこの装置でやっているということがはっきり分かるような形になっていたり、プレスリリースにも「AI半導体向け」や「HBM向け」と示されていて、こうやって注目を集めていったという印象です。

Next: 利益は減少…今後は?長期投資家はどう判断すべきか

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