2025年大阪・関西万博がついに開幕。工期遅延や批判の声を跳ね返し、日本の未来を示す「技術の祭典」として大きな注目を集めている。CO2資源化や再生医療、次世代通信IOWNなど、世界標準を狙う最先端技術が一堂に会した今、万博は「無用」どころか、日本再成長の起爆剤になる可能性を秘めている。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)
プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
大阪・関西万博に見た「日本の明るい未来」
2025年大阪・関西万博が、4月13日にオープンした。これまで、建設費の値上がりや人手不足に伴う工事遅延など多くの難題を抱えたが、予定通りに開場日を迎えることができた。
一部では、「万博無用論」も聞かれる。これは、余りにも技術発展の可能性を軽視した、もったいない話である。批判する前に、日本の近未来を示唆する明るい材料が、「ゴロゴロ」していることに気づくべきだろう。百聞は一見にしかず、である。日本経済の発展の種が「発芽」を待っているのだ。
前回の大阪万博は1970年であった。戦後復興の日本を世界にみて貰う「お祭り気分」が横溢していた。日本からの主な出品技術は、動く歩道、リニアモーターカー、電気自動車・自転車、テレビ電話、電波時計、ウォシュレット、缶コーヒーなど。現在の日常生活に、不可欠な技術となっている。
今ら言えば、リニアを除いて「小粒」な技術であることは否めない。当時は、世界の技術開発テンポがゆっくりしていたことや、深刻な経済状況になかった反映でもあろう。「必要は発明の母」と言われるように、世界が現状変革の技術を求めていなかった。技術の「エアポケット」が、生まれていた。これが、1990年バブル崩壊後の日本経済を支えるべき基幹技術の空白を予告していた。事実はその通りで、イノベーションが何も起こらず、コスト切下げ競争に明け暮れ、日本中が無益な「総貧乏競争」に陥った背景だ。
今回の大阪万博の日本による出品技術は、55年前と趣が完全に一変している。環境技術、医療技術、通信技術という大型技術群が登場している。いずれも、世界をリードする標準技術候補ばかりが並んでいる。5年後の日本経済は、これら技術が花開き成長率を押し上げる有力支柱になるはずだ。
日本が誇る三大技術
2025年大阪万博では、前記の通り環境技術、医療技術、通信技術が勢揃いした。いずれも、世界最先端の技術であり、その実態をみておきたい。
環境技術では、大きく分けて次の3つが注目されている。
1)CO2回収技術 空気中の二酸化炭素を回収し、それを活用して光合成を促進する植物工場「Farmarium」が展示されている。この技術は、都市型農業の新たなモデルケースとなる。
2)カーボンニュートラル技術 地球環境産業技術研究機構(RITE)が展示する技術は、大気中のCO2を直接回収し、都市ガスに変換するなどの利用が可能となる。
3)再生可能エネルギー 独自のマイクロ波化学技術を活用し、製造プロセスの効率化とカーボンニュートラルを目指す。詳細な説明は後述する。
地球上に充満するCO2は、異常気象の「元凶」とされて、その処理方法に世界中が頭を悩ませている。その厄介ものを資源化するのは、「逆転の発想」である。光合成促進に利用するとか、直接回収して都市ガスに変換するというビックリ仰天の技術である。2030年までに大規模な商業化が進むと予測されている。