CO2回収技術やカーボンニュートラル技術は、国際標準化の取り組みが進行中である。
例えば、分離回収技術の性能評価手法や、回収されたCO2の利用方法に関する基準が議論されている。国際エネルギー機関(IEA)やISO(国際標準化機構)が、これら技術の標準化に向けた枠組みを構築している。これによって、各国が日本技術を共有し、効率的な導入を促進可能にする。日本は、特許収入と機械輸出で大きなメリットを受ける。
独自のマイクロ波化学技術は、ゴミ処理に応用可能だ。従来の廃棄物処理手法に比べ、次の点で大きな優位性が指摘されている。
廃棄物が発生した地点で、処理可能な小型システムによって処理可能になるのだ。わざわざ、1カ所に集めない分散処理となる。それだけ、ゴミ輸送コストとそのCO2排出量を削減する。加熱プロセスが効率化される結果、エネルギー消費を大幅にカット可能だ。この技術が広く普及すれば、廃棄物処理の世界で革命的な変化をもたらすとされている。
医療技術では、例のノーベル賞に輝いたiPS細胞を活用した再生医療の普及である。iPS細胞の量産化は、2025年にも実用化の見通しだ。京都大学とキヤノンが共同で開発したプロジェクトにより、血液検体からiPS細胞を全自動で作製するシステムが最終段階にある。この技術は、全工程の95%が自動化され、品質の均一化とコスト削減を目指す。製造コストは、従来の数千万円から100万円以下に抑えられるという画期的技術である。
再生医療は、現在の他人の臓器を移植する方法から、iPS細胞を活用した医療へ転換する。患者自身の細胞を用いて、臓器や組織を再生することが現実のものとなった。これにより、臓器移植に伴う拒絶反応の回避、臓器不足という難問が解決され、治療の個別化という通常の疾病治療と同じ形になる。人類の難病が、iPS細胞によって解決される時代が来たのだ。大きな福音である。世界中の難病対策に有効であり、メガトン級の技術となることは間違いない。
NTTの最先端技術
通信技術では、2030年以降に実用化されるNTTが開発する「IOWN」(アイオン)がある。この技術は、光技術を活用した通信基盤で、従来の電子技術を超える性能を実現する。超低消費電力、超大容量通信、超低遅延という「超」3大メリットによって、次世代通信基盤「6G」の世界標準が有力視されている。
IOWNは、トヨタ自動車の全自動運転車の技術開発支援に役立っている。超低遅延通信により、車両間やインフラとのリアルタイムなデータ共有が可能となり、安全性と効率性が向上する。また、自動運転車の制御や交通管理システムの最適化にも不可欠である。
これ以外に、ラピダスの「AI半導体」(CPUとアクセラレータを接続)の高速なデータ処理能力と、IOWNの超低遅延通信技術と組み合わせることで、ロボットがリアルタイムで複雑な仕事を実行できるようになる。これが、工場や建設現場での自動化を進め、生産性の向上とコスト削減に寄与するので大きな期待がかかっている。ラピダスの「2ナノ」半導体試作品は、今年7月に登場する。日本の精密機械業界は、さらに大きく前進する。
以上で、目玉になっている環境技術、医療技術、通信技術の片鱗を取り上げたが、「空飛ぶクルマ」も出品されている。日本の誇る環境技術や通信技術を満載した、「世界一」の空飛ぶクルマへの期待が膨らんでいる。大阪万博で、会期中3社が試験飛行を行うほど気合いがかかっている。
日本の空飛ぶクルマ開発における優位性では、以下の点が指摘されている。
1)技術力と信頼性 日本は精密機械や電動技術において世界的に高い評価を受けている。特に、トヨタやスカイドライブなどの企業が開発をリードしており、信頼性の高い製品を提供する能力がある。
2)環境への配慮 日本の空飛ぶクルマは、電動垂直離着陸機(eVTOL)技術を採用しており、環境負荷を低減する設計が特徴だ。これにより、騒音や排出ガスの問題を最小限に抑えられる。
3)災害対応能力 日本は災害が多い国であり、空飛ぶクルマは被災地への物資輸送や救急搬送など、災害対応においても重要性が増している。2030年以降の実用化が見込まれる。
これらの要素が組み合わさることで、日本の空飛ぶクルマは国際競争の中でも独自の強みを発揮できるとみられる。特に、都市部の渋滞解消や離島・山間部での移動手段、災害時の迅速な対応など、多岐にわたるニーズが見込める。中国も空飛ぶクルマに力を入れているが、主要部品を海外供給に依存している状況だ。「自立化」には、先ずこの点の解決が必要である。