fbpx

参政党14議席の衝撃…30年停滞が生んだ「日本版トランプ現象」の正体とは?極右政党の躍進で見えた日本人の“情念”=高島康司

強いストレスの源泉、30年間の停滞構造

ここで、バブル崩壊以降、約30年間に及ぶ日本の恒常的な停滞の構造を振り返ってみよう。ストレスの大きさが改めて実感できるはずだ。

周知のように日本は、過去30年間、非常に長い停滞期の中にある。1995年は545万円であった日本人の年収の中央値は、2024年には426万円まで下落した。過去30年間、賃金の上昇はほとんどなく、インフレだけが昂進した。現在もインフレ率は賃金の上昇率を越え、あいかわらず実質賃金は低下するばかりである。慢性的な停滞状態に対するストレスは年々蓄積され、臨界点に達した情念のエネルギーが、参政党という政党を噴火口に爆発したのである。

いまの日本にあるのは、停滞を慢性化させるような負の構造である。88年の「日米構造協議」から始まり、91年の「第2次日米半導体協定」に至るアメリカとの一連の協定により、日本は「日の丸半導体」を中心とする先端的なハイテク産業の輸出には大きな制約がかかり、世界最大の市場であるアメリカに思うように輸出できなくなった。先端的産業分野の利益は落ち込んだため、多くの企業は先端技術への研究開発投資を抑制し、家電向けのローテク製品の半導体や部品に特化していった。その分、設備投資も大きく減退した。

また多くの大企業は、系列や下請けの企業に製品価格の値下げを迫り、自分の利益だけは確保する体制にした。そして確保した利益は、新製品のための新しいテクノロジーの研究開発には再投資せず、内部留保金として得た利益を蓄えた。

内部留保とは、正しくは「利益剰余金」という。最新の厚生労働省「法人企業統計調査」の結果によれば、2022年の「利益剰余金」の額は554兆7,777億円と、2021年度(516兆4,750億円)に続き、過去最高を更新した。高株価の背後で、内部留保金の額が積み上がっているのだ。内部留保金は、再投資されるための資金ではない。企業の資産としてただ蓄えられている資金である。これが大きくなるにしたがって、慢性的な停滞を構造化するような次のような悪循環が形成された。

イノベーションと開発投資の不在

国際競争力の低下

売り上げの減少

賃金を低く抑える
中小企業に値下げを強要

経常利益の確保

内部留保金として蓄積
役員報酬の増額

イノベーションと開発投資の不在

この慢性的な停滞構造で、まっさきに犠牲にされたのは労働者であった。日本の経済成長をバブル期まで支えていた終身雇用と年功序列という日本的な雇用システムは早々に放棄され、広範囲の分野への派遣労働の解禁から労働者の賃金は大幅に下落し、仕事の安定性もなくなった。これは就職氷河期の30代から50代の世界に集中はしているものの、全世代の働く人々に見られる傾向でもある。

一方、こうした慢性的な停滞状態に対して、経団連と近い関係にある自民を中心とする与党は有効は政策を実施することができなかった。停滞状態が恒常化して格差は拡大しつつも、自民党は統一原理協会との関係なども含め、多くのスキャンダルにまみれ続けた。腐敗した構造が改善する可能性は見えなかった。

こうした状況に、堪忍袋の緒が切れたとばかりに爆発した情念が選んだ噴火口こそ、参政党であった。

Next: 日本はどこへ向かう?参政党の憲法構想案から見えた「情念」

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー