投資家が今すべきこと:長期的な視点と「良い株」の買い時
このような複雑な経済状況の中で、投資家はどうすべきでしょうか?FRBの動向や経済の先行きを完全に予測することは非常に困難であり、それに時間を費やすことは賢明ではありません。
長期投資の視点に立つならば、重要なのは「良い株」を選び、それを持ち続けるという大原則です
<「良い株」の探し方:生成AIと半導体関連>
では、「良い株」とは具体的にどのような企業を指すのでしょうか?
- 生成AI関連企業
- 半導体関連企業
今回の雇用統計の下方修正の要因としてAIによる雇用の抑制が挙げられるように、景気が悪くなっても、効率化のためにAIの活用はますます進むと考えられます。したがって、生成AIに関連する企業は、今後も長期的な成長テーマとして非常に強いと言えるでしょう。
AIの進化には高性能な半導体が不可欠です。そのため、AIの普及が進めば進むほど、半導体の需要は拡大します。半導体製造装置メーカーや半導体材料メーカーなど、半導体サプライチェーンの中で「なくてはならない」存在の企業は、景気の波はあっても、長期的なトレンドでは右肩上がりの市場で成長が期待できます。
<賢い買い時:9月のアノマリー>
「いつ買うのか」も重要なポイントです。株式市場には「アノマリー」と呼ばれる、明確な根拠はないものの統計的に確認できる傾向が存在します。
特に有名なのが、「セルインメイ(Sell in May, and go away)」という相場格言です。これは「5月に株を売って、どこかへ行ってしまえ」という意味だと誤解されがちですが、本来の続きは「9月まで帰ってくるな(and don’t come back until September is done)」です。
過去70年間のS&P 500の月別パフォーマンスを見ると、この格言の真意が分かります。
- 8月:平均で-0.1%と下がりやすい傾向
- 9月:平均で-0.4%と、年間で最も下がりやすい月の1つであることが示されています。実際に、リーマンショックも9月に発生しました。
これは、機関投資家が夏休み前にポジションを落とすといった人間的な動きも影響している可能性があります。
このアノマリーは、裏を返せば、9月は「良い株を安く買えるチャンス」が訪れる可能性が高いことを意味します。もし8月や9月に株価が下がる局面があれば、それは長期投資家にとって絶好の買い場となるかもしれません。
まとめ
今回の米国雇用統計の下方修正は、短期的には景気への懸念を強めるものです。トランプ関税の影響や、移民・AIがもたらす長期的な経済構造の変化、そしてFRBが直面するインフレと利下げのジレンマなど、課題は山積しています。
しかし、長期的な視点で見れば、米国経済の成長の可能性は依然として存在します。特に、生成AIや半導体といった今後の成長を牽引する分野で「なくてはならない」存在の企業は、景気の波を乗り越えて成長していくと予想されます。
そして、もし8月や9月といった株価が下がりやすいとされる時期に市場が混乱し、優良株が一時的に安くなるようなことがあれば、それは賢明な長期投資家にとっての絶好の買い場となるでしょう。目先の変動に一喜一憂せず、企業の価値を信じ、長期的な視点を持って投資に臨むことが、混乱の中でも市場を楽しみながら資産を増やす鍵となります。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年8月6日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。
