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中国、レアアース「武器化」で自滅へ。日本が南鳥島開発で資源覇権を握る日=勝又壽良

中国は先に、15次5カ年計画(26~30年)の運営方針を決めた。国家の競争力を左右するものとして、人工知能(AI)を支える半導体などハイテク分野の「自立自強」を加速する方針を打ち出している。挙国体制で、米国に依存しないサプライチェーン(供給網)の構築を進めるとしている。

このように、供給体制の充実が依然として先行している。国民生活の安定を図る需要面への配慮は、その片鱗もみせなかった。中国は、米国覇権に対抗するという「幻想」を持ち続けている。その意味では、「冷戦真っ只中」である。

資源「武器化」は失敗へ

米中対立は、時間とともにヒートアップしている。米国は中国へ高関税を掛け、中国がその切り札としてレアアース武器化を進める。中国は、米国へレアアース輸出を規制するだけでなく、西側諸国全体へ同じ規制を課そうとしている。これは、完全な誤りである。西側全体を敵に回すのである。

中国によるレアアースの輸出規制は、単なる経済政策ではなく、西側諸国に対する明確な地政学的メッセージを含んでいる。それは「資源の流れを握る者が、技術と産業の未来をも握る」という構図を明確にしたものだ。レアース供給支配国による影響力の行使である。この戦略は、「中国の供給体制に従うか、それとも自らの供給網を築くか」という選択を迫るものである。 かつての日本軍が、行なった真珠湾攻撃のように、一方的な力の行使が何をもたらすかだ。それは、中国が西側経済圏と断絶することになるであろう。

結論は、西側諸国が団結してレアアースの生産に立ち上がることだ。南鳥島・米豪鉱山・東南アジア資源を連携させ、非中国依存のサプライチェーンを確立するのである。日本主導で、環境負荷の少ない精錬技術の国際標準化を推進することになろう。これにより、資源の「質」だけでなく「つくり方」でも日本が主導権を握ることになる。さらに、AUKUS(米英豪)やQUAD(日米豪印)など既存の枠組みと連携し、資源供給の安定性を保障する条約を提案することも可能になる。

このように中国が、西側諸国に対する地政学的メッセージは、中国の意図と全く異なる方向へ動き出すに違いない。中国は、レアアースによって西側製造業を支配下に置こうとしている。だが、日本という「伏兵」によって、事態は180度も異なる方向へ展開し、中国自らを窮地に追い込むという劇的展開が予想されるのだ。これが、28年以降に始まるであろう。高市首相の言葉を借りれば、「強い日本」の復活だ。

迫る中国の国際的な孤立

西側諸国が、結束して「反中国」でレアアースの生産体制を固めると、中国は世界的に孤立状態へ陥るであろう。中国が、もっとも恐れていた西側諸国とのデカップリング(分断)現象が自然に起こって不思議はない状況に向っている。

中国には、内需を充実させるという「発想法」がゼロである。供給力拡充=輸出強化によって、「メード・イン・チャイナ」の名を高めて国威発揚=中華再興に資するという考えにとらわれている。15次5カ年計画でも、この精神が引き続き全面的に打出されている。

問題は、こうした先端分野(EV・電池・太陽光パネル)とされる「新質生産力」が、中国経済を潤していないことだ。補助金政策による過剰生産が、生産性(全要素生産性)向上を帳消しにしている。残るのは、過剰生産による在庫の山という虚ろな結果だけである。

レアアース輸出規制によるデカップリングが進めば、具体的に中国経済はどういう影響を受けるだろうか。

Next: 習近平の「補助金」政策に限界。中国経済が向かう未来は…

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