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中国、レアアース「武器化」で自滅へ。日本が南鳥島開発で資源覇権を握る日=勝又壽良

南鳥島のレアアース泥は、「重レアアースが豊富」という点で、陸上鉱山よりも優れている。重レアアースとは、高付加価値のレアアースという意味だ。次のような特質を持っている。

1)用途が先端的 電気自動車のモーター、風力発電、医療機器、軍事技術など、精密で高性能な分野に使われる。
2)供給が限られている 産出地域が限られ、分離精製も難しいため、希少性が高い。
3)価格が高い 例えば、ジスプロシウムやテルビウムは、ネオジムなどの軽レアアースよりも市場価格が高い。

以上のように、南鳥島のレアアースは、「低コスト」で「高付加価値」というごとく、願ってもない好条件を備えている。この結果、日本のレアアースが生産量と高品質の絶対的な2要件を備えることで、世界覇権を握ることは自明といえよう。

かつて、世界最大のレアアース生産国であった米国は、環境保護を理由にして他国へ精錬施設を移譲することで、自らそのトップの座を降りた経緯がある。現在、中国のレアアースの輸出制限に慌てており、豪州で米豪共同のレアアース生産を始めることになった。

米豪政府が、今後6か月以内に30億ドル(約4500億円)を共同投資する。プロジェクト規模は、総額85億ドル(約1兆2800億円)の重要鉱物生産で、すでに稼働準備済みである。これによって、26年中に操業を開始し総額約530億ドル(約8兆円)規模の生産を目指すとしている。肝心の技術は、日本が提供する。豪州アルバニージー首相は、「日本が参加するプロジェクトがある」と明言しており、加工技術や精錬工程への貢献が含まれているとみられる。

日本は、南鳥島のレアアース開発と並んで、米豪共同レアアース開発事業の技術提供という役割を担うことになった。

一挙に崩れる中国優位性

日本のレアアースにおける存在が、世界中で認知されたとき、中国はどのような対応を取るのか。実に、興味深いのだ。これまでのレアアース優位性が一挙に崩れるからだ。

中国のレアアース優位は、「精製能力」と「価格競争力」によるものである。日本が南鳥島のレアアースによって、高品位レアアースを大量に安価で供給し始めると、中国の戦略的優位は崩壊する。中国が、自国産レアアースを0.1%未満含む「製品の原材料・製造工程・流通経路を月次で中国政府に報告する」という追跡可能性義務は、空文化される。中国は一転、辞を低くして「購入を働きかける」立場へ追詰められるのだ。

日本がレアアース開発技術とレアアース資源を持つことで、東南アジアや欧米との連携が強化され、中国の資源戦略に対抗する枠組みが形成されることは間違いない。例えば、EU(欧州連合)は、「クリティカルミネラル戦略」を立てている。2030年までに、重要原材料の域内採掘率10%、加工率40%、リサイクル率25%を目指すなど、自立的な供給網の構築を急いでいる。日本の南鳥島レアアース開発が、軌道に乗れば日本からの輸入を重要な柱にするであろう。

このように、米国やEUというレアアース需要国が、揃って日本依存を高める方向に動くことは確実である。そうなると、中国の「高姿勢」は滑稽なものに映るであろう。主要輸出先を失うのである。

中国のレアアース「武器化」は、このように極めて危険なものである。中国は現在、こういうリスクをまったく計算に入れていないで突っ走っているのだ。中国が、レアアース武器化に失敗することは不可避の情勢である。これによって、中国の経済と外交・軍事へどういう形で跳ね返るのか。あらかじめ、考えておくことは必要である。

Next: 迫る中国の国際的な孤立。資源「武器化」は失敗へ…

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